おいしい酒器。利き酒Vol.4 『七田/純米 無濾過生原酒/愛山』

自分の魅力と持ち味を最高の形で表現してくれる器。日本酒は、そんな酒器を求めている。

同じ日本酒で、酒器を変えると味わいがどれほど変化するのか。酒器を代えて利き酒する、「おいしい酒器」シリーズの第4弾。

酒器が変わると味わいも相当変化する。

日本酒の美味しさの本質は「味わいの重なり模様」にあると思っているぼくは、普段日本酒をワイングラスで飲む（『リーデル』というグラスメーカの脚なしタイプ）。ワイングラスで飲む理由について詳しくは以下記事の通り。

そんなぼくの個人的嗜好は一旦置いておいて、他の酒器で飲むと味わいや香りが具体的にどう違うのか試してみた、その記録。

1．銘柄選定の基準

今回酒器別のテイスティングに選んだ銘柄は、『七田/純米 無濾過生原酒/愛山』。

選定理由は、過去vol.1で選定した甘みたっぷりジューシーな無濾過生原酒『たかちよ』に似つつも、さらに旨みが前面に出ているであろうこの銘柄で試したかった。（注釈：ほんとは最近どハマリしている銘柄で、酒屋さんで手に取ってそのままレジに向かってしまったさかい。。正直。。）

【基本spec】　
原料：米、米麹
製造時期：2020年3月
造り：純米、無濾過、生酒、原酒
使用米：愛山100% 
精米歩合: 75％
アルコール分：17度

2．用いた酒器と選定の基準

今回用いた酒器はこれまでと同じく以下一覧表の5種類。

1）普段は①のワイングラスで飲んでいるので、これがぼくの標準。

2）②利き猪口だけ磁器になるが、これは利き酒の一般「標準」酒器。ぼくの「標準」である①ワイングラスとの差異を知る目的。利き猪口のサイズは①ワイングラスの口先口径と同じぐらいの8勺（1合の8/10)を使用。

3)②以外の素材は全てグラスで揃えた。素材は同じ条件で、形状が違うだけで味わいがどれだけ変化するのかを見るのが目的。

3．酒器別 利き酒の結果

①ワイングラス　結果：◎
入口はほのかに乳製品を思わせる酸味の香りと、梨やリンゴを思わせる優しく爽やかな香りがある。

口に含むと、ほんのわずかな炭酸の微弱ピチピチ感に乗って、甘めの綺麗なお米の旨みが大きく広がる。
キレは柔らかい酸味にほのかな苦味でのキレ感。

旨みと甘みと酸味が原酒のボリューム感で大きく広がる。酸味のおかげで重さやくどさを一切感じないのがすごい。

味の重なり模様といい、バランス感といい申し分ない。

②利き猪口　結果：○
口に含む前の香りは、乳製品の酸味の香りを少し感じるのみで梨やリンゴの香りは感じない。これはもったいない。
口に含むとお米の旨みと同時にいる酸味がやや表に出る感じ。バランスいい。苦味が後からやってくる分、甘みが引き立つ感じがある。

入口の香りが少し弱まる以外は相当いいと思う。

③天開グラス　結果：○
入口の香りはかなり弱まる。
ワイングラスに比べて、各種味わいのうち、甘みと旨みに絞った感じになる。酸味がしっかりとそこにいるのを感じるが、それが表に出ずに甘みと旨みの分厚い下支えとしてそこにいる感じ。キレも柔らかい。

バランスも良く、何より飲みやすい。

④カクテルグラス　結果：◎または○
香りはほぼない。
代わりに、他の酒器に比べて苦味が少し表に出てくる分、お米の甘みや旨みとの融合感を一番感じるのはこれかもしれない。その融合感が、結果的に甘みと旨みの力強さとなって、やってくる。

キレは奥の方から苦味がやってくる感じ。

美味しい。この酒質に合っていると思う。

⑤シャンパングラス　結果：×
香りが飛ぶ。ない。
口に含むと、お米の旨みに酸味が勝ってしまい、酸味のみを感じてしまう。酸味の強調感も悪くはないが、このお酒の味わいの半分くらいしか伝えてくれない。これは合わないと思う。

4．総評

今回のお酒では、④カクテルグラスが意外にも酒質に合っていた。酒器の形状（口先が開いていく）から、入り口の香りは感じられないが、それ以外の味わいのバランス、特に苦みが全面に出てくるあたりは、お米の旨みと甘みというこのお酒の特徴を最大限引き立てているように感じた。

ただ、入口のフルーティな香りがこのお酒の大きな楽しみの一つであることを考えると、総合点ではやはりワイングラスが一番良いと思う。

③天開グラス（飲み屋さんグラス）の特徴は、これまでの利き酒結果からして、「すっきり爽やかに飲み切っちゃう」という点にあると思っているが、そんなグラスでもしっかりと旨みと甘みを伝えられるところに、このお酒の実力を感じる。

ここまで4本、単体で飲んでも十分楽しめるお酒ばかりを試してきたので、次は「食中酒」といえる日本酒で試してみたいと思います。

いやー、日本酒美味しいですね。

昔から酒類全般が好きで、少し前までウイスキーやら焼酎なんかもよく飲んでましたが、最近は日本酒だけでかなり満足度高いです。