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親魏倭王の小話集

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#歴史

歴史小話集①

歴史小話集①

【『日本書紀』考】
『日本書紀』の「紀」について、三浦佑之先生は中国の紀伝体歴史書における「本紀」を指すのではないかと考察しておられる。つまり、『日本書紀』とは『日本書』の「紀」、本紀であり、当初は中国の紀伝体歴史書に倣った『日本書』が構想されていたのではないかと。しかし、列伝は編纂されず、結果的に「紀」だけが完成して『日本書紀』と呼ばれるに至ったことになる。
三浦佑之先生は合わせて、『風土記』は

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歴史小話集②

歴史小話集②

【史料批判の話】
歴史学の基礎は「史料批判」にある。眼の前にある史料が信頼に値する史料かどうか確かめる大事なプロセスである。
日本古代史の基礎資料は『古事記』『日本書紀』だが、いずれも官撰の史書なので、政権に都合の悪いことは記述していない可能性がある。日本国内に同時代資料はなく、史料批判のためには時代が下がる平安時代の史書(『古語拾遺』など)や木簡、金石文、中国の史書が必要になる。無論、それらも史

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歴史小話集③

歴史小話集③

【弘法大師空海の入定を巡って】
弘法大師空海は讃岐(香川県)の出身で、父は佐伯直善通(よしみち)と言った。その善通の邸宅を寺にしたのが善通寺である。当初、空海は叔父の阿刀大足を頼って大学に進んだが、仏教に傾倒して出奔、各地を巡って修行した。途中、室戸岬で修行中に明星を飲み込む神秘体験をする。
その後、経緯はわからないが、留学僧として遣唐使に参加し、長安の青龍寺で恵果和尚に入門、わずか2年で伝法灌頂

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中国史小話集①

中国史小話集①

【陳勝・呉広の乱と秦の滅亡】
始皇帝没後に起きた陳勝・呉広の乱は中国史上初の農民反乱で、秦のガチガチすぎる法治による締め付けが原因と考えられる(あまりにも法が厳しく、役人たちは自分が法を犯さないかどうかに気を取られ、民のことまで気が回らなかったらしい)。
この乱は官軍の将軍・章邯の活躍もあり、すぐに鎮圧されるが、戦国時代の各国の王族らが呼応し、群雄割拠の状態となる。そんな中、楚の項羽が中心となって

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考古学小話集③

考古学小話集③

【粟鹿神社境内の古墳状隆起】
以前、兵庫県朝来市の粟鹿(あわが)神社を訪ねた際にびっくりしたのだが、本殿の背後にかなり大型の円墳らしきマウンドがある。裏に回ると、当時は藪になっていてよくわからなかったが、周溝らしきものも確認できた。
ここは遺跡地図では経塚となっている(不時発見らしい)が、周辺で行われた発掘調査の報告書を読んでいると、兵庫県の文化財担当者もこのマウンドが古墳である可能性が高いと考え

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即身仏についてわかったこと

即身仏についてわかったこと

即身仏について調べていたらわかったことをいくつか書いてみる(堀一郎、戸川安章、松本昭、松田壽男の各先生の研究に基づく)。

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即身仏を志した行者は一世行人という下級の行者で、火の管理をするため生涯妻帯禁止(ケガレ忌避のため)、ほぼ寺院の雑用係で、出世しても本山末寺の行人寺の住職にしかなれなかったとなかなか厳しい生活。しかし、即身仏を志すと上人号が授与されるなど、格段に待遇が上がったらしい(命と

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