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🔴小説人形論『春秋山荘遺文』 中川多理の創作十年 第二章『小鳥たち』①
夜をこめて飛び続けた伝令たちは、冷え冷えとした朝に、空音をたて、それぞれの目的地に降りたった。
なんだってこんな時間に——。誰もがそう思ったが、それだけ緊急の用件なのだろう…と、自分に言い聞かせて鳥たちを迎え入れた。老大公妃の…我侭、単なる気まぐれではないのかという懸念が頭をちらついたが、口に出すものはいない。すべてを飲み込んだふりをして、忙しそうに廊下を走る者たちの足音が姦しい。そうして小鳥たち
山尾悠子と中川多理を巡るいくつかのメモランダム②「徒然の問わず語りの独り言。」時には、自分でも文章をしたためたくなって…山本直海
勅使川原三郎がシュルツの『マネキン人形論』を踊ったとき、確かに『大鰐通り』の骨董街の角を曲がって向こうに行った。小説に描かれていない角の向こうにも勅使川原の/シュルツの街は伸びていて、そこで勅使川原三郎は踊っていた。創作をもって作品をテーマにするというのはそういうことだ。
シュルツの言葉…文章、小説には身体がある。父親の欲望、欲望のエロスもある。勅使川原三郎はそこも踊った。でもシュルツの…とだけは
🔴小説人形論『春秋山荘遺文』 中川多理の創作十年 第一章『化鳥拾遺』②
風も吹いていないのに、カサカサと薄葉紙が揺らいだ。人形が荷を解かれたがっている。作業を再開…と、みなが手を動かしはじめた。ところで、タイトルは作家が決めた。少し異論を唱えてみたが揺るがなかった。『化鳥』は澁澤龍彦のエッセイにある、泉鏡花の小説もある…「どちらかといえば、澁澤龍彦。でも中身は…そうでもない」澁澤龍彦で育った澁澤第一世代でもあるが、Kはいまは澁澤、第一とは思っていない。文字に書かれた少
もっとみる山尾悠子と中川多理を巡るいくつかのメモランダム。「新編 夢の棲む街」山尾悠子/時には、自分でも文章をしたためたくなって…山本直海
描いたたくさんの絵とともに大学を退官する…これから…いや大学という枠が外れて…それは日本画の枠をも外れて…さらに絵画の枠も外れて…いや外して…描く原点に戻れるということだ。生きるためのようにして、そのような言い訳をして、大学で絵を描いてきた。誇れるのは、日本画というジャンルで横行する__。大学の先生と呼ばれる日本画家もする、売絵を描かなかったことだ。
『夜想』やパラボリカ・ビスで活動してみて、そこ
小説人形論『春秋山荘遺文』 中川多理の創作十年 第一章『化鳥拾遺』①
◉第一章『化鳥拾遺』
京都・JR山科駅から山にむかって、たらたら坂をのぼっていくと、路の先には、こんもりと繁った半円の入り口がはっきり見えている。にもかかわらず、毘沙門はなかなか近寄ってこない…。こうした坂ではいつものことだと言い聞かせてはみたものの、それでも化かされているのか思うほどに距離は縮まらない。ここらはちょうど半分くらいかな…と言いかけて、連れがいないのに気がついた。左右から山が迫ってく
⭕日々の泡沫[うつろう日乗]9
紫紺の空に月が揚がっていた。
その月の夜に、いつものように自己紹介をしながら、感想を述べる座談になった。突然、笠井叡がドイツへ行くと言い出した。高橋巌はじめ、そこに居合わせた人たちが、一様に驚く顔をした。みなはじめて聞いたのだ。
笠井叡からドイツ行きの話を細かく聞いたのは、帰りの横須賀線であったか、記憶にないが、オイリュトミーを習いにオイリュトメウムへ行くと。シュタイナーの神智学は謂わば白の神秘
⭕日々の泡沫[うつろう日乗]8
この師走の最中、まだ彷徨っている。書かれた文字の中を。彷徨は、まだなのかずっとなのか…。
年が明けてもおそらく…続く…そうしているうちに年が明ける。2022年。
この迷走のはじまりは、弟 今野真二が母親と実家と財産を占有することで、まったくそれらに触れることができなくなってしまい、それを裁判所が合法、むしろ推奨するような動きをして…その結果、鬱になり、仕事を辞め、モチベーションがマイナスになって