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海を渡った恋

◇◇ショートショートストーリー

フランソワは大学卒業を間近にして、母国に帰る前に絶対に行きたい場所がありました。来日して初めて訪ねた瀬戸内海の小さな島です。

彼は懐かしい写真を眺めていました。そこに映っていたのは大学のクラスメートの次郎と、次郎のおじさん夫婦そして次郎の従妹の麗子さん、フランソワは麦わら帽子を被って、日焼けした顔で、真っ白な歯を見せて笑っています。

彼は楽しかった、みかん農家での体験を思い出しました。日本の農業を学びたいと、日本の大学に留学していた彼は、同じ大学の次郎に誘われて、彼の故郷のおじさんのみかん山で、柑橘栽培を体験しようと、1ヵ月、愛媛県松山市沖の興居島(ごごしま)に、来ていました。

興居島は周囲24キロ余りの島ですが、みかん栽培や漁業が盛んで、県外からのIターン移住者も多く、外部からのアプローチも受け入れているので、フランソワにとっては、居心地がいい島でした。

島内は海岸線が美しく、周辺の小さな島々がゆっくり眺められるので、自転車で巡るのが最高です。

フランソワが忘れられないのは、次郎の従妹の麗子さんです。高校生の麗子さんは、毎日フェリーで松山の高校に通っていました。

彼は、控えめでいて、芯の強い麗子さんに好感を持っていました。

「麗子ちゃん、今日は自転車で島巡りをしようよ、僕は、あの峠に行きたいんだ、眺めが良いでしょう」

「フランソワ、行ってみる、今日は、お天気がいいから、かなり遠くまで見えると思うよ」


「麗子ちゃん、次郎も誘ってくるよ」

「フランソワ、あそこは二人で行くのがいいかなー」

フランソワは麗子さんがどうして次郎を誘わないのか不思議でした。

自転車で急峻な坂道を上って、峠に到着します。峠には何本かの廃材でモニュメントが作られ、かわいい花が植えられていました。

二人はその峠から穏やかな青い海を眺めて、将来の夢を語ります。

「私は、この風景が大好き、地元の大学に通って、将来はこの島で暮らしたい、この穏やかな海が大好きなの・・・」

「僕は日本の農業を勉強したら、フランスに帰って、大学院で勉強するつもり、麗子ちゃんが遊びに来たかったら、いつでも来てね」

「はーい、フランスには、一度行ってみたいから」

そんな会話を交わして、楽しい時間を過ごしました。


フランソワは、麗子さんが気になって仕方がありませんでしたが、農業の研修なのに浮かれていてはいけないと、思いを伝えず島を離れました。

麗子さんとは、時々連絡をとっていましたが、いつもフランソワの隣にいる次郎が電話を変わって、近況報告になっていました。

それから2年、フランソワは母国に帰る事になって、どうしても麗子さんに会いたいと思ったのです。

興居島に渡って、どうしても行きたかったのは、あの峠です。

フランソワは、麗子さんを誘って、自転車で峠まで出かけました。

「フランソワ、この峠の名前知ってたの・・・」

「僕は知らないなー」

「恋人峠って言うんだよ」

「えー、なんて素敵な名前」

「初めてフランソワと来たとき、知ってたのかと思ってた」


「僕は知らなかったけど、僕の君への思いがこの場所の名前だったなんて、奇跡だね」


「私は、初めて来たときから奇跡だと思ってた」

二人は、波静かな、瀬戸内の海を眺めながら、寄り添って、自分たちの未来を語り合っていました。

恋人岬は、二人の思い出深い場所になりそうです。


【毎日がバトル:山田家の女たち】

《あんた1ヵ月でちいとはようなっとるよ》


夕食を終えて、イラストを描き始めたばあばとの会話です。


「興居島のみかん美味しいよね、私も興居島には何回か行ったことがあるけど恋人峠はしらんかったわい私はこのストーリーは好きよ

「恋人峠は地元の方が整備しよんよね、そこからの眺めがええんよ」


「ハッピーエンドになるんじゃろかねー、それは想像あるのみじゃね、あんたショートショートストーリー、始めてどのくらい」


「一か月ちょっとかな・・・」


「あんた、ちいとようなっとらい


母からほんの少し、お褒めの言葉をいただきました。流石、母は褒めて育てるタイプです。



【ばあばの俳句】


巣ごもりの梅雨も楽しやストレッチ


巣ごもりの日々に梅雨も加わってうんざりの日々を送っていらっしゃる方もいらっしゃるでしょう。我が家の90歳の母は、それでも毎日健康作りに体操やストレッチを欠かしません

室内でいなければいけない事を上手く楽しんでいるようです。



どんなことでも楽しもうとする精神は見習うところがたくさんなります。少しもかっこよくこなしているわけではありませんが、楽しんでいることは間違いありません。


▽「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。

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私のアルバムの中の写真から

また明日お会いしましょう。💗

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