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久々に昔の血が騒いだぜ…ドラッグハンターによる新薬のよもやま話

こう見えて、私〇〇系なんです。

私の自己紹介・プロフィールにもアッサリ触れていますが、1回目の学生時代は理系大学に在籍し、修士をいただきました。もう、はるか昔の話になりますね。

専門で言えば、有機合成化学というやつです。有機化学を少しばかりやっていたこともあり、新薬開発には興味がありました。最も、私が就活をしていた時期は製薬会社の競争率は高く、私のように「学力」がなかった者が採用されるはずはありません。

仕方なく、新薬研究者=ドラッグハンターの道は諦めざるを得ず、違う道を歩むことになり、そのおかげが、現在に至っております。

化学から離れてから◯十年、ふと立ち寄った本屋で面白そうな薬の本があったので、手に取ってみた、そんな記事です。

とりあえず中身は?

全部で12章ありますが、ざっくりいうと

◯イントロ
◯アヘン、モルヒネ、ヘロインの話
◯キニーネの話
◯エーテルの話
◯アスピリンとドイツの製薬会社の話
◯魔法の弾丸・サルバルタンの話
◯医薬品の規制の歴史に関する悲しい話
◯グッドマンとギルマンが薬理学の教科書を作った話
◯ペニシリンをはじめとする抗菌薬の今昔話
◯バイオ医薬品の先駆者・インスリン製剤の話
◯疫学と疫学から派生したβブロッカーの話
◯三流役者陣から生まれた経口避妊薬の話
◯まぐれ当たりだった壊血病、統合失調症、気分障害の薬の話

で構成されています。

この題目を見た時に、ビクッと反応した方、そんな方にお勧めな本です。

本書の面白さは…

この本の面白さはもちろん薬の知識があった方がいいですが、そこではないと思います。

作者のドナルド・R・キルシュ(Donald R. Kirsch)が、スクイブ社(現在のブリストル・マイヤー社)で実際に新薬研究者=ドラッグハンターして研究開発に携わった人物です。薬の開発について、表も裏も知り尽くした人物だというところです。

そんな人物が、

自分がいたスクイブ社の歴史を書いたり、
普通に自分がいた製薬会社が買収されたことをディスったり、
スクイブ社からFDA(アメリカ食品医薬品局)に移籍した元同僚のせいで新薬開発が遅れた嫌味をチラッと書いたり…

かと思うと、

科学的に価値がある発見や功績に関してはキチンと論評しており、
新薬開発に至る人間的・歴史的背景は押さえており、

とある種の一貫したポリシーを感じました。

そこにはどんなに優れた研究者であっても、成功率が0.1%しかない医薬品開発の現実について、人間臭すぎるドラマと言いますか、社会背景と言いますか、あらゆるファクターが滲み出ていました。

ドラッグハンターであり続けた者だからわかる、薬の光と影の側面を科学&物語として綴られたのが本書だと思います。

本書を「処方された」方へ

もし、医学、薬学、化学、生物学をはじめとする科学に関心をお持ちの方、薬にはあまりいいイメージはないけど人間背景を見るのが好きな方はハマるかもしれません。

しかし、私のように、読み終わって、久々に爽快な気持ちになるかもしれませんので、用法・容量を守って、正しく服用してください。(了)

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