見出し画像

【詩】うすはりのせかい


うすはりの せかいのなかに
ぼくは住んでいる

そこには ずるさや みにくさや
にんげんのいやしさはみじんもなく
背の高いたてものも みあたらない

うえに うえにのぼっていくことが
いみがないことだと
みんな教えられるまでもなく
知っているからだ

木のかおりがする家のちかくに
みずうみがあり
露をせおった みずみずしいかえるが
葉のうらで 休んでいる

朝は 霧がせかいをつつみ
森が ひそひそと会話する
ぼくはその声で 目をさます

しめったきりかぶのうえを
ありたちが通り 巣をめざす
ここを通ったほうが近道だからだ

このせかいでは
だれかに頼ることも 寄り添うことも
はじめから組み込まれている

ゆるやかに こわれていく
うすはりのせかい

もろくて やさしい
あかりがとどかないばしょ





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?