見出し画像

夫の夢見た家は、家族みんなで完成させた【#14 家にまつわるストーリー】

放り出す選択肢はないとわかってからは、もう前に進むしかない!!夫が残りの人生を最高!!にするために設計した家ですが、わたしがひとりで住むには大きすぎます。

なにしろ東京ドームの半分より大きい敷地に、日本流にいうと建坪で150坪ほどの家です。ここにひとりでポツンと住むなら、メンテはたいへんだし、孤独感倍増まちがいありませんから想像しただけで泣けてきます。グルグルグルグルと考えに考えて頭が割れそうな毎日でした。

夫の癌の発覚でわたしたちの闘病を助けようと、夏にテキサス州から戻っていたいちばん上の息子夫婦が、家を完成させていっしょに住むと決断してくれました。

もともと、わたしだけでは闘病を支えきれないだろうからと、しばらくいっしょに暮らすつもりで戻ってきました。息子たちはテキサス州ダラスでの暮らしを気に入っていたようですから、わたしとしては、夫がいなくなったあとは「もう自分たちの暮らしに戻ってね」という気持ちでした。

わたしのために犠牲を強いることになっては母として心苦しいです。

「仕事は完全リモートで良くなった。ネット環境さえあればもうどこでも仕事はできるんだ。それにコロナでいろんな価値観が変わったよ。都会に居てももう以前のような暮らしができるとは限らない。せっかくお父さんがここまで頑張った家なんだから、オレたちで引き継いで行こうよ。少なくともしばらく、お試しで住んでみればいいんじゃない?なんとかなるさ。それにオレこの家、変わっているけど気に入ってるし」

その言葉を聞いて、わたしの気持ちはずっと軽くなりました。

そうだ、深く考えなくてもいい。そしてポジティブにいこう!!

まずは息子夫婦のその言葉と行動力に感謝してその方向で進んでみよう!!と思えてきました。喪失感を抱えながらも難題を切り抜けることができたのは、息子夫婦がこの荷物をいっしょに背負ってくれると言ってくれたからでした。

そうと決まれば、夫の拘りを貫くことはやめて、わたしたちがより楽しめる家にシフトすればいいと考えました。とはいっても、設計は終わっているし、契約は契約です。ほとんどの資材も購入済みでしたから、劇的に変更がきくわけではありません。それでもまだ未完成の部分は、わたしたちが好きなようにすればいいからと、残りの決めごとは息子たちといっしょに頭を捻りながら進み始めました。

ただ、まったく心配がないわけではありません。夫が亡くなったことで、わずかな生命保険はおりますが、この先払っていかなければいけない住宅ローンや税金を思うと不安です。

亡くなったとたん、毎月2回振り込まれていた夫のサラリーはなくなりました。夫の扶養家族として生きていたわたしは、それまでの健康保険も失いました。「保険料を払えば同じ条件で向こう3年間は健康保険の継続はできます」というのは朗報でしたが、保険料は毎月574ドルときました。(恐るべし米国の医療システム&健康保険!!)

とまぁ、次から次へと金銭面の不安に襲われるたびに、おいていかれた宿題の大きさに自分の無力感と、「よくもわたしを遺して逝っちまったな」というやりばのない悲憤で胃がおかしくなりそうな状況が続きました。

それでも、なんとか心身炸裂せずにいられたのは、10月7日に夫が亡くなったあとも孤独にならず、娘夫婦の家で過ごしていたからです。週末のたび娘夫婦と片道150kmの自宅に戻っては夫の遺品整理を兼ねて家の片付けをはじめました。

2016年から4年間住んでいた借家の大家さんには、秋に家が完成したら引っ越すことを伝えてありましたが、夫の他界で全ての予定が狂ってしまいました。家が完成しないことには引っ越せませんが、家賃もバカになりません。そこで、12月には借家を引き払うことにしました。

コロナ禍での引っ越作業はたいへんでしたが、娘や息子たちみーんなが手伝ってくれました。顛末は以前に記しています⬇。

画像1

【最初の1杯ではたりず、二杯目のダンプコンテナも満杯になりました】

夫の所持品の量は半端なくすごい量でした。たくさんの不要なモノを処分し、わたしが必要なモノだけを新築工事中の巨大ガレージに置かせてもらうことにしました。バカみたいにデカイガレージがここでちょっぴり役に立ちました。

画像2

これまで夫がやりとりしてきたような、工事に関する家のことは、現場の近くでアパートを借りて住んでいる息子夫婦にバトンタッチです。

息子が現場監督のトムと話し合い、夫が自分でDIYするはずだったデッキも床もカウンタートップもトムにお任せすることになりました。

とてつもなく大きなデッキにするために、すでに柱だけ埋め込んでありましたが柱は無視してサイズを三分の一ぐらいに縮小してもらいました。

画像3

息子夫婦と暮らすと、白ぽいワンコ二匹がいっしょなので、床の色は毛が抜けても目立ちにくいように、少し薄めのグレーの床材にしてもらいました。

画像4

カウンタートップは予算上、ラミネートに変更しようかと悩みましたが、「あまりケチって家全体が安っぽくなっても、家の価値が下がってしまうんじゃないの?使うべきところには使うべし」と息子がいうので、夫の希望どおり御影石のカウンタートップに決定。

画像5

頓挫していた工事もそんな感じでゆっくり進み出し、その都度行われる、銀行の鑑定もクリア。井戸水の水質検査も問題なし、浄化槽の設置も完了。冷蔵庫や洗濯・乾燥機なども息子たちと選んだ商品をどんどん現場に配送し息子立ち会いのもとでインストールできました。

夫の他界から約半年かかりましたが、一歩一歩前進しました。

画像6

【夫の夢見たマスターベッドルームは息子夫婦が使うことに】

こうして、4月下旬にめでたく最終引き渡し日を迎え、最初に契約した完工日から1年近く遅れるも、5月の1日からわたしと息子夫婦との新しい暮らしが始まりました。

【#15 家にまつわるストーリー】に続く




🌺 共感、応援いただけるならとびあがって喜びます。 そして、その喜びと感謝を胸に次のどなたかに恩送りします。