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【つの版】本棚にある本

ドーモ、三宅つのです。Twitter海にはしばしば、見た者に自己紹介を促し、他人にも感染させる呪いめいたハッシュタグが出現します。普段つのはこういうのをスルーしていますが、今回つのが目にしたのは、これでした。

今度は本棚にある本の紹介です。前回はハマったゲームでした。

物理書籍…それは古代から存在する偉大なアーティファクトであり、文字の存在する文明社会には必ず存在してきました。なんと電気を必要とせず、書かれている文字さえ読めればいつでもどこでも誰でも読むことができ、それなりの腕と知識をもつ著者によって記され、編集者らによるチェックを通ってきています。中にはとんでもない本もありますが、概ね読むに足りるものであり、断片的にこの世の知識を封じ込めています。魔術師たちはこうした書物を遺跡から発掘し、知識や精神力の足しにしています。

ネットを利用するようになってからめっきり読書量は減りましたが、それでも物理書籍はつのの日常生活に欠かせません。つのは昔から本に埋もれており、その中を這い回って暮らし、食事やトイレの時はほぼ常に文庫や新書や漫画本を読みながら(あるいはweb端末を持って)しています。外出する時も一冊は携えていないと調子が狂います。図書館や中古書店もよく利用し、暇な時は入り浸っています。それでも世にいう読書家の方々よりは遥かに少ないでしょう。普通の大学生より少ないでしょう。同じ本を繰り返し飽きもせず読むからでもありますが。つのはそうした足りない部分を、空想やネット知識で適当に補っている程度の存在です。この世は巨大な図書館です。

さて困りました。いま本棚にある本は、文庫や新書ばかりでさほど多くないとは言え、少なくともつのがやってきたゲームよりは遥かに多いはずです。漫画本を除外してもです。しかもそれを紹介することは、パルプスリンガーとしてのつのの手の内を、またつのの知識や教養、人間性などを晒すことにほかなりません。しばしばつのは記事の中に本をさり気なく紹介しては来ましたが、全部やるわけにはいかないのです。でも紹介したい本もたくさんありますので、なんとも悩ましいのです。

というわけで、思いつくまま掻い摘んでやります。棚卸しです。つのだけやるのもあれですので、これを読んだ人は全員やって下さい。聖書やクルアーン、ヴェーダや仏典、古事記や日本書紀、史記や三国志、四書五経に諸子百家、山海経、西遊記や封神演義、ヘロドトスやアナバシス、ガリア戦記、失楽園やファウスト、ローマ人の物語ほか塩野七生作品、ジョジョや銃夢、蒼天航路、ニンジャスレイヤーなどは、まあ皆さんご存知でしょう。やりたくなればやります。一応リンクはつけますが、つのはアフィリエイターや書店員、出版社やAmazon社の回し者ではありません。物理的利益は得ていません。やや古い本ばかりです。漫画はきりがないので今回除外します。聖杯戦争候補作では二次創作の形で紹介していますのでどうぞ。

これらを読んだからといってつのになれるわけもなく、またこれらを読んでいる人を見つけたからといって、それがつのである保証はありません。もしあなたがこれらの書物を持つ人物を見つけ、「あなたは三宅つの=サンですか?」と聞いてみたとします。大概は眉をひそめて否定するでしょうが、もしそれが本物のつのであれば、それは蛍光緑色の光とともに隠された真の姿をあらわし(それを目撃したあなたは1D6/1D20の正気度を喪失します)、あなたをスリケンで殺害するか、チョップで首をはねるか、あるいは異次元の彼方へ連れ去ってしまうでしょう。あなたは気をつけるべきです。

◆Each is given a bag of tools a shapeless mass and the book of rules◆

◆ちくま文庫◆

・『世界でいちばん美しい物語』

"これこそ世界でいちばん美しい物語だ。なぜなら私たち自身の物語だから。私たちはみな自らの奥深くにこの物語を秘めて生きている。"

つのは物事を深く探究するあまり、時々宇宙の始まりまで遡ります。この本は宇宙、生命、人類の歴史に関する、概説的で美しい科学読み物です。フランスでベストセラーだったそうですが、20世紀末の本ですので、この中の幾つかの事物は過去の謬説として斥けられているかも知れません。でもその時点の現代科学が語る、この世の成り立ちの神話として読むことはできます。詳しくは自分で調べて下さい。つのは全くの文系野郎で、数式とか化学式を見ると頭痛がしますが、これはそんなこともなく、中学生ぐらいの読書力があれば簡単に読めます。分厚くもありません。250Pかそこらです。

・『世界史の誕生』岡田英弘

"歴史とは、人間の住む世界を、時間と空間の両方の軸に沿って、それも一個人が直接体験できる範囲を超えた尺度で、把握し、解釈し、理解し、説明し、叙述する営みのことである。"

つのは歴史をこのみます。並の小説より遥かにREALで面白く、登場人物も逸話も無数にあり、現代にまで影響を及ぼしています。著者は学会では異端扱いされており、多くの批判に晒されましたが、つのは興味深くその著作を読んでいます。中公新書の『倭国』などです。歴史とは文化であり、正確な事実を検証していくだけでなく、一連の出来事をどう捉えるかという思想・哲学でもあります。聖書や記紀も歴史書です。歴史は国をまとめ、他国に対抗する強力なプロパガンダ兵器となります。良くも悪くも。ヘロドトスと司馬遷は地中海文明と中華文明における歴史文化の創造者的存在ですが、実際の歴史は中央ユーラシアの遊牧民が長い間動かして来ました。モンゴル帝国はその巨大な帰結であり、世界史の始まりです。オスマン帝国やイラン、インド、ロシア、中国はモンゴル帝国の遺産です。つのはヒストリエからスキタイにもハマり、遊牧民に憧れを抱いてはいますが、なりたくはありません。杉山正明氏の『遊牧民から見た世界史』(日経ビジネス文庫)は、やや癖が強いですがハマる人はハマるでしょう。

◆中公新書◆

・『儒教とは何か』加地伸行

"生命論としての孝を基礎として、後の儒教はその上に家族倫理(家族理論)を作り、さらにその上に、社会倫理(政治理論)を作ったのである。"

つのは時々、について考えます。身内や親戚、友人知人有名人。誰でも死は平等に訪れます。つのは死にたくありませんが。宗教は死についての解説者であり、死に対する恐怖や悲嘆にある程度の納得を与え、共同体を存続させる文化的要素です。儒教は特に死と深く結びついた宗教であり、その理論は死に対する喪の儀礼の上に成り立っています。中国史を知る上で、儒教を知らずにはいられません。日本など周辺諸国にも深々と根付き、仏教などと結びついて独特の死生観を育てました。仏壇の位牌は儒教の産物であり、仏教とは本来関係がありません。それは先祖の頭蓋骨の象徴です。メキシコでは実際に頭蓋骨を祀っています。儒教の根本のひとつ「」とは、単に子が親に従えというだけでなく、先祖から親・自分・子・孫へと繋がっていく生命の流れ…ジーン、ミームの総体を言うのです。この本はそのように儒教を解き明かしていきます。著者は保守派の論客ですが、つのはノンポリです。

・『コーヒーが廻り世界史が廻る』臼井隆一郎

"身分のいかんを問わず人々が集まって素面で語り合う「コーヒーの家」。"

つのはアルコールよりコーヒーや紅茶をこのみますが、コーヒーには長い歴史があり、また歴史を動かして来ました。イエメン、アフリカ、トルコ、欧州、ブラジル…スーフィーたちが眠気覚ましに飲んでいた黒い飲み物は、欧州の市民社会に入り込み、オリエンタルな香りと共に活発な議論を促しました。商人、投資家、文人、詩人、僧侶、軍人、政治家…かつての酒場、現代のネットやSNSでのように、コーヒーハウスで情報が飛び交い、カネと革命が生まれます。それは植民地で黒人奴隷が流した、黒い汗でもありました。軽妙洒脱な文章で、数百年に及ぶコーヒーの世界史が寓話的に語られます。あなたもコーヒーを飲むときに思い出して下さい。コーヒーパルプ

◆岩波書店◆

・『ロシア異界幻想』栗原成郎

"「真に幻想的なるもの」を笑うことは愚かである。それは人生の現実の中に現れるからだ。"

ロシア。世界一広大な、謎めいた国です。歴史は古いのですが、暗く困難な歴史でした。そこでは民衆の幻想が息づき、啓示と霊感が現れます。この世とあの世の狭間に死神や妖怪が踊り、正教的世界観は独特の終末論となり、天国と地獄が幻視されます。今のロシア人がこのような世界観を持つかどうかはわかりませんが、奥底には眠っていることでしょう。

・『孫悟空の誕生』中野美代子

"孫悟空とは、かれ自身の法力が広大であったように、かれを産み出す伝承のエネルギーもまた広大無辺であった、そのような存在だったのである。"

孫悟空、西遊記。知らない人はいないでしょう。つのも岩波文庫版西遊記悟空道を持っていますし、藤原カムイ版西遊記とか西遊妖猿伝西遊将門伝なども読んで来ました。壮大な物語と魅力的な登場人物は、何度もリブートされ、リファインされ、無数の物語要素を組み合わせて生まれたものです。遥か天竺、大食(アラブ)や大秦(ローマ)にすら筆は及び、筋斗雲はインド洋をぐるりと巡って泉州に戻ってきます。サルの種類からラーマーヤナ、チベット仏教、ワークワークに壺中天…物語のパワーの広がりを感じます。

◆講談社現代新書◆

・『古代東北と王権』中路正恒

"国家の<外>は、つねに森のような身体をもち、そして言ってよければ、<東北>という名をもつのである。"

東北。先の大震災で傷ついた大地は、蝦夷と呼ばれる人々の住む地でした。古代ヤマト王権は東方へ、北方へ勢力を伸ばし、彼らを追い払い、殺し、服属させて来ました。そこには広大な森があり、山々が連なり、ベトコンのトンネルの如くネットワークが繋がっていて、侵入者を迎撃しました。ヤマトの側は彼らを蛮夷、鬼、土蜘蛛と侮蔑しましたが、狩猟生活者である蝦夷の戦闘力は侮れず、武士や日本刀の成立にも影響を及ぼしたといいます。彼らは何者であり、ヤマトとどのような関係にあったのか。ヤマト側の文献からそれを辿り、考察しています。つのは辺境や蛮人がわりとすきです。

・『神道の逆襲』菅野覚明

"見慣れた景色の反転としてあらわれているもの、あるいはその反転をもたらしたと思われるところのものこそが、神なのである。"

つのは生まれつき日本人であり、日本人的な文化感覚の中に生きています。街なかには神社仏閣がありますし、教会もあるでしょう。つのはありとあらゆる神々に敬意を払い、畏れます。必要以上に宗教やオカルトへのめり込むのも危険なのでしませんが、人間の手の及ばぬ領域というものはあると思いますし、そう思った方が個人的には安心できます。八百万の神々や妖怪、ニンジャといった怪しき存在は、その領域に棲み、こちらを見ています。見えんけれどもおるんです。この書はそうした存在を、日本人がどのように捉えて来たかを記述・考察しています。神道は長い年月の間に幾度も変化しており、国家神道や古神道はその一面に過ぎません。知られざる神道の世界へ。

◆◆◆

ほんの一部ですが、とりあえず今回はここまでです。一冊だけでも多数の記事が書けそうです。つのはこうした書物をかじって生きており、時々何かの形でアウトプットする、電子的深海生物の一種です。また気が向けばやるかもしれません。気長にお待ち下さい。

【ひとまずおわり】

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