見出し画像

中国版ET&ハリー・ポッター。映画『宇宙から来たモーツァルト』中国、2022年。

大阪中国映画週間最終日。前日の『母への挨拶』があまりにもおもしろかったので、翌日もがんばって見に来てしまいました。期待通り、おもしろかった。後から気づいたのですが、『唐人街探偵』の監督さんの作品なのですね。なるほどです。

舞台は北京。圧倒的な標準語の世界で、裕福な家庭の子どもたちが通うような学校は、中国が経済発展したんだなあということを実感できます。ただ、ちょっと街や空気がきれいすぎなので、CGがうまく使われているんだと思います。中華風ディズニーの世界の大都会といった感じです。

天文学者になりたい主人公は中学生の男の子。学校では天文部をつくりたいし、家でも宇宙のことばかり考えています。でも、父親は息子をピアニストにしたくて、毎日、毎日、練習を強要するので、その度にケンカばかりです。

父親は若い頃、ロックをやっていて、ジェイ・チョウ(周杰倫)の事務所にスカウトされたという設定。でも、息子がいるから北京を離れられないと音楽をあきらめたのに、保険販売の仕事でうだつがあがらず、奥さんは弟を連れて出ていき、お金持ちと再婚しました。自分の果たせなかった音楽の夢を息子に託しすぎる父親。離婚した前妻への対抗心もありありです。

ある日、弟が兄のためにつくってくれたぬいぐるみが、勝手に喋りだしました。そして、自分は宇宙人で、ぬいぐるみの身体を借りて、地球の言葉も習得しているから、「君を助ける」というのです。最初は信じなかった主人公ですが、自分の住む星では芸術が物事のエネルギーになるといい、音楽を聴くと不思議なチカラを発揮して主人公を助けてくれる宇宙人。主人公は、宇宙人に「モーツァルト」と名前をつけました。

ぬいぐるみのふりをして、主人公と一緒に学校にいくモーツァルト。主人公の親友や、主人公が好きな女の子たちとも仲良くなり、不思議なチカラを存分に発揮して、彼らの信頼を勝ち取っていきます。

モーツァルトの目的は、主人公が天文学者になって、未来に果たす役割を実現させるためサポートすること。そのために、邪魔をする父親を始末しようとします。ギリギリでモーツァルトの父親殺害を引き止めた主人公。モーツァルトに「なぜ?」と聞かれて、主人公は「うざいけど、いなくなると悲しいから」と答えます。

宇宙人の星には家族というものがないようで、主人公に「僕と君は家族?」と聞きます。「血がつながっていないから家族じゃない」という主人公。でも、モーツァルトとの心の距離はどんどん近くなっていきます。そして、父親と決定的なケンカをした主人公は、モーツァルトと友だちたちを誘って、万里の長城まで家出してしまいます。

一方で、北京には自分は宇宙人だと騙って、お金をまきあげる詐欺集団がいました。彼らはモーツァルトの不思議なチカラを知って、モーツァルトをつかまえようとします。万里の長城で誘拐されてしまったモーツァルト。スマホの充電ができなくて、なにもできない迷子の子どもたち。さあ、どうする!?! おとぎの国定番のハラハラどきどきです。

この映画は、中国版ETと中国版ハリーポッターをミックスさせたような感じ。Netflixあたりが買ってもおかしくない感じの子供向け映画ですが、上質だし、完全におとぎ話に振り切っているのが楽しいです。中華的な要素は、
親への絶対服従(親孝行があたりまえ)とか、親が子供の教育に熱心すぎる過干渉の部分でしょうか。以前、アメリカでも、中華系家庭の厳しすぎる子供教育の本がベストセラーになりましたっけ。

でも親の子供への過干渉なら、どの国にも大なり小なりあるので、抵抗なく受け入れられそう。昨日の中国南部の田舎のリアリティにあふれた映画とは真逆ですが、こういう映画もまたいいですね。

邦題: 宇宙から来たモーツァルト(原題:外太空的莫扎特:Mozart From Space)
監督: 陳思誠
主演:黄渤 、栄梓杉、姚晨、範偉、黄楊鐄甜ほか
制作:中国(2022年)136分

この記事が参加している募集

#映画感想文

66,918件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?