日露戦争に人生を狂わされた男たちの物語。映画『ゴールデンカムイ』2024年
オープニングのすさまじい二〇三高地のシーンから、主人公の杉元とアシㇼパが出会い、困難を乗り越えて相棒(バディ)を組むまで。この映画は、壮大な物語の「序章」です。内容は原作のテイストそのままですが、なんといっても生身の俳優さんたちがくりひろげるアクションシーンがすばらしい。そして、合間、合間に広がる試される大地、北海道の雄大な景色。映画ならではの表現で、原作の世界を存分に表現しています。
タイトル『ゴールデンカムイ』のロゴがラスト近くに大きく映し出され、今後の続編に出てくる、存在感ある脇役たちが顔みせをします。さらにおまけで、北海道&アイヌのグルメシーン。監督や俳優さん、スタッフさんたちの仕事ぶりから伝わる原作への最大限のリスペクト。チケット代、2倍出してもいいと思うくらい、十二分に楽しませてもらいました。
普通のマンガの実写化だと、「俳優の◯◯さんが人気漫画の△△の役をやる」わけですが、この映画には漫画の登場人物たちがそのまま三次元で動いているとしか思えませんでした。2.5次元なんてもんじゃなく、原作の登場人物たちそのもの。舘ひろしさんや玉木宏さんですら、土方歳三や鶴見中尉以外にみえなかったです。役者さんたちの演技をひきたてる、メイクや衣装担当さんたちの仕事のすばらしさ。最高です。
そんなわけで、映画の1つ1つのシーンに情報量がありすぎて、原作を何度も読んでいるファンなのに、とても1度では消化しきれませんでした。もう一度、いろんなシーンを確認しに行きたいです。復習用としては、こちらの雑誌の特集がおすすめ。
監督、主演俳優、脚本家に加えて、アクション監督や衣装、メイク、フードコーディネータ、アイヌ語監修の先生のインタビューまで、映画のパンフレット以上の濃い情報が満載です。なにより、写真がきれいで、かっこいいです。
久保監督がこだわった冒頭の二〇三高地のシーン。久保監督は雪山の映画を見まくって研究し、二〇三高地のシーンには映る役の人も映らない役の人も含めて参加して、彼らの行動の根底にある日露戦争を「経験」してもらった話はすごいなと思いました。
あと、植生が違うので、可能な限り北海道ロケにこだわったという話はうれしかったです。雪山歴が長い人間には、木とか山の地形とか、北海道じゃない場合、すぐわかってテンションだだ下がりですので。本物の雪かどうかとか、スキーのシーンは特にすぐわかります。そして、雪の中で人の動きがどれだけ制限されるかも知っているから、アクションシーンの迫力には本当に感動しました。
アイヌのコタン(集落)もチセ(家)も、小樽の街の風景も、すごく作り込まれていて見応えあったので、また見たいです。コメディ担当の白石は、本当に白石で、迫力あるヒグマは本当にヒグマみたいで、エゾオオカミのレタラですら、CGとは思えなかったです。なんか、いろいろ語彙力なくて困るのですが、とにかくまた見たい!
『スラムダンク』同様、この映画は可能な限り大きなスクリーンでみないといけない映画です。そして、何度も見たくなる映画です。個人的には最低3回見て、やっとそれなりに満足。
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