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新卒から早期活躍するために大事なこと:「量をこなす」

一貫して伝えてきた「活躍する上で重要なこと」

社員80人のベンチャーに入ってから10年弱で1000名規模になるまでに、3桁を超える数の学生の方々と面接したり、結果として入社いただいた新卒の方々とお話したりしてきましたが、その中でよく「早期に活躍するために必要なことは?」という質問を受けていました。いくつかあったのですが、その中で必ず挙げていたものの1つは、「量をこなす」です。

「量をこなす」そのこころは?

よく「量か質か?」みたいな二元論もありますが、あえてここで言ってしまうと、結論「質よりも量」、というのが今回の趣旨になります。厳密にいうと、「初めは量」と言った方が正確だとは思います。
新卒1年目から「生産性」とか「効率性」といった言葉を知ったような顔で使う方も一定いましたが、そんなことを言って初めから仕事の選別を行っていたら、多くの成長機会を逃すばかりかいつまで経ってもその重要な「生産性」や「効率性」は上がっていきません。

「いつか見た景色」をいかに増やせるかが重要

「生産性」や「効率性」とは端的に言えば「やるべき仕事を取捨選択できる能力」と言い換えることができますが、そもそも新卒の初めからどの仕事をやるべきなのかを判断できる能力があるわけがありません。一通りやってみて、何がうまくいき何がいかないのかを学習して、徐々にそれができるようになっていくのです。どんな業務においても最初は全てが「新しい景色」ですが、色々なことを濃度高く経験していくことで、徐々にそれらが「いつか見た景色」になり、2回目、3回目と回数を重ねるごとに思考の節約ができるようになり、ゴール到達までのスピードが上がっていくのです。「プロ経営者」として名高い三枝さん(「V字回復の経営」の著者)も、「経営者はいかにいつか見た景色を増やせるか」ということの重要性を説いています。これは紛れもなく「量をこなす」ことからしか絶対に開けない境地です。

量は「スピード」にも転化されていく

また、量をこなすとある程度仕事の進め方や問題解決における正解にたどり着きやすくなってくるといった効用に加えて、純粋に色々な仕事のスピードが飛躍的に上がります。パワポの資料を作るのだって、スプレッドシートで関数を組んで数値を分析したりモニタリングしたりするためのシートを作るのだって、手を動かす系の業務はやればやるほどスピードが上がっていきます。経営人材のような企画職は、頭の中で検討しているだけでなくそれをいかにわかりやすく、かつ迅速に各関係者へアウトプットしていけるかが非常に重要な要素なので、各アウトプットを作成するためのスピードというのは強力な武器になりますし、逆にいくら検討能力が高くてもそれをアウトプットするのに時間を費やしていたらいつの間にか事業は重要な機会を失っていきます。量は質だけでなくスピードにも転化されるということです。

質やスピードが上がった後は、量をこなさなくてもいいのか?

では量をこなしていった結果それらが質に転化し、「生産性」や「効率性」が上がったら、その後は量をこなさなくていいのか?というひねくれた発想を持たれる方もいるかもしれません。凡庸な方ならそれで良いと思いますが、早期活躍人材、経営人材を目指すレベルなら答えはNoです。
組織の中心になっていく人はその分注目が集まり、その一挙手一投足が組織全体に影響を与えます。その際にやはり中心人物やトップキーマンが量をこなすからこそ、それが周囲から「あの人は本気だ」というコミットの表れになり組織に熱量を与えます。また、日本でも世界でも活躍する経営トップは確実に「質×量」で戦っています。テスラ社のイーロンマスクは、車の生産が遅れそうになると、工場に泊まり込みで進捗を確認するというのも聞いたことがありますが、あれだけそもそもスーパー優秀な人が、スーパーハードに働き続けるからとんでもないスピードで時価総額が伸びたわけです。また、複雑で誰も解いたことのない市場の難題を解く際には、前例がないからこそ最初から質を高めるにも限界があるので、顧客の声を聞いたり色々な検証を重ねたりといったプロセスを経て徐々に質を上げていくというアプローチが一般的な新規事業開発の考え方です。これはもはや量をこなすからこそ徐々に質や解像度が上がっていくということであり、挑戦を続ける経営人材には必須の考え方なわけです。

限界まで働け

なにもこれは、「長い年月をかけろ」という意味ではありません。むしろ「毎日くたくたになるまで働いて、短期で一気に成長しろ」ということを言っています。この「量をこなす」話をしていると、時折「どれくらいの量が適正なのか?」といったことを聞かれたこともありました。ただ、答えはシンプルで「限界まで」としか言えません。本当に早期活躍したいのであれば、限界まで働かない理由だったり、余力を残す理由があまり思いつかないからです。
ただ、「限界」は人によって全然違うのも事実です。なので、その限界を知るためにも初めに量をこなして、自身の限界を知れば良いとなおさら思います。お酒も、最初に潰れたときに自身の限界を知り、それ以降は「あ、やばいな」と思ったらセーブする、みたいな経験はお酒を飲まれる方ならあると思います。結局ビジネスにおける人それぞれの適正な業務量も同じような原理で、極端に言えばまずはつぶれるくらいまでいってみないと分からないとすら思います。逆に言えば、一切睡眠せずに働く人をマネする必要も、定時退社など一般的な枠組みにこだわる必要もなく、やはり「自身の限界」までやってみれば良いと思います。この「限界までやる、やり切る」といった感覚は、副次的に「自分はやり切れているな、頑張れているな」という自己肯定感にもつながる作用も持つので、良い努力の循環につながるとも思います。

念のため強調しておきたいこと

もちろん、これは全員に言っていることでは一切ありません。改めてですが、早期活躍したい、経営人材になりたいというごくわずかな(本音を言えばもっと増えてほしいのですが)少数の志高き人たち向けの、自身の経験則や尊敬する経営者、著書から学んだ教訓です。「自分はワークライフバランスが重要」とか「自分はそこまで頑張れない」とか「それはブラックだ」という方向けでは一切ありません。日本は全員が死ぬほど働かなくてもちゃんとある程度豊かに暮らせるとても良い国です。それを否定する気は毛頭ありません。ただ、世界を変えるようなイノベーションを起こす起業家だったり、自分の志を掲げて前に突き進む経営者も、明日には倒産する可能性のある会社を何とか立て直そうとしている経営者も、「ブラック」とか「ワークライフバランス」なんてことを言っている人はいません。皆必死でことを成そうとしている人たちであり、上で書いてきたことはそういう人たちを目指す人に向けた内容です。
ただ、不安があったりこわかったりする方でも、少しでもものすごい人材になりたい、大きな活躍をしたい、偉大な経営者のような高みを目指してみたいと思う方は、少しだまされた気分になって、目の前の業務を人の何倍もの量をこなしてみてみれば良いんじゃないかなと思います。その後に見える景色が、上記で僕がつらつら書いていることを読むよりもずっと大切なことを教えてくれるはずです。「百聞は一見に如かず」ということです。

「1万時間の法則」

マルコム・グラッドウェルという人が「1万時間の法則」というものを著書で説きました。これは端的に言うと「何かをマスターするためには1万時間もの時間が必要」という内容です。生涯で仕事をする時間は全部で8万時間弱と言われますが、20~30前半くらいまでだと2万時間弱となり、普通に考えると僕らは2つのことしか若いうちにマスターできないことになってしまいます。ただ、これは1日8時間しか働かないと仮定した場合であり、もっと量をこなし、絶え間なくインプットをしたり、濃度高く思考を続けていけばどんどんと増やしていけるはずです。時間がないことだけは確かなので、迷っているくらいなら全力で目の前のことに取り組んでみれば、きっと後悔はしないと思います。かなりスパルタな精神論的な内容をつらつらと書きましたが、大きく活躍したい、経営人材になりたい人は絶対に心がけるべきことだと強く信じているので、そういった方々の誰か一人でも、吹っ切れる機会になれば幸いです。

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