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卵子凍結をした女ふたりと、妙齢の私たちの話


先日、広尾のカフェで、5年ぶりにとある友人と再会した。

彼女の名前は「Yちゃん」とする。
Yちゃんとは、海外で暮らしていた頃に出会った。
当時一番仲良しだった日本人の女の子だ。

「きゃー!久しぶり〜!!どうしてた〜?」

というキャッチアップから始まった私たちの会話は、食事をとる間もなく3時間ぶっ通しで続いた。

数年間の時空の壁ははじめの30分ですっかり溶けてしまい、私たちはそれぞれ5年分年をとったことも忘れてはしゃいだ。

(カフェでおしゃべりだなんて、ここ数年男性のお客さんとしかしていなかったので、女子同士の利害のない「おしゃべり」がこんなに楽しいなんて、ほとんど忘れかけていた)

豆乳入りのヘルシーなスムージーのグラスは滝のような汗をかき、
店員さんが「ラストオーダーですが…」と遠慮がちに声をかけるまで、会話は途切れることがなかった。

***

私は彼女と最後に会ってから、離婚と再婚を経験していたし、彼女は私と最後に会ってから、帰国と転職を経験していた。

私が「子どもは欲しくない」と言った彼との将来について心底悩んでいた2年後に、彼女も「子どもは欲しくない」と言った彼との将来について心底悩んでいた。

私が銀座で働き出した2年後に彼女も銀座で働き出していたし、私が卵子凍結した2年後に彼女も卵子凍結していた。
(↓私は当時超詳細なレポートを書いている)

つまり、蓋を開けてみたら、私と彼女は似たようなライフステージを、数年ずらして経験していたのだ。

そして今は2人とも、東京の同じ区の、電車で15分の距離に住んでいる。

「全然連絡とってなかったのに、似たようなことしてて笑っちゃうね!」
「しかもこんな近くに住んでね」


と、私たちは笑い合った。

「でもさ、そういう年齢ってことだよね。私のまわりも多いもん。結婚と妊娠と仕事でめっちゃ悩んで卵子凍結する人!」

***

そうなのである。

20後半~30前半にかけての時期って、
彼は「まだ結婚したくない」だし、そんなら「別れて次の人か?」とか、「この人でいいのか?」で恋愛は迷走し、
「一人でも生きていけるようにキャリアを」と必死に働くも「まだ結婚しないの?」的な圧はひどいし、男女差別は無くならない。
しかも身体には「リミットがある」から焦るし、でもいま実際生まれても経済的に困る面もあるし、でもいつかは欲しいし…。。。

要するに、めちゃくちゃ難しい人生の選択肢が、一度にいくつも目の前に立ちはだかってるのである。

無理。

***

私たちのケースに話を戻すと、

彼女も私も、わりと崖っぷちで好きになった男に「子どもは欲しくない」と言われ、彼女は彼との別れを選び、私は彼と入籍することを選んだ。
そして私たちは2人とも、本業はきっちり努めつつ、「一人で生きていくかもしれない」覚悟をもって銀座での副業を始め、そして卵子を凍結したというわけである。

「たまご、何個とれた?」
「自分で注射した?」
「全身麻酔した?」
「めっちゃお金かかったよね!」
「本当は受精卵のほうがいいんだよね」
「痛かったよね〜」

などなど情報共有したあと、

「これが活かせる日が来るのかねえ」という話になった。

Yちゃんは結婚を考えていた大好きな彼とお別れしてから恋人はおらず、
私は子どもいらない派の大好きな彼と結婚してしまった。

お互い、30歳を超えている。

つまり、この卵を使えるタイムリミットはあと10年前後なのだ。


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