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現代社会に突き付けられた課題≪後編≫


(前回からの続き)

奴隷貿易だけでは飽き足らない西欧諸国は
さらなるボロ儲けの禁じ手に、手を染めていきました。
大航海時代以後の15世紀から19世紀迄には
弱小国に対する一方的侵略と『略奪型植民地支配』。
加えて、19世紀後半から20世紀初頭にかけての『帝国主義的支配』。
及び、その後の『新植民地主義支配』。


いずれも他国の土地や資源を武力によって取り上げ、被支配国に
自立の機会すら与えなかった。 自国利益のみの追求に
まさしく列強たる西欧諸国などが鎬(しのぎ)を削ってきたのです。
我が国もまた、太平洋戦争(大東亜戦争)に行きつく軍国主義の
世界に恥ずべき道へ…。

 
植民地や勢力範囲の再分割を巡り、先進各国は、至る所で
数多くの戦争を引き起こしました。 第一次世界大戦で3000万人
第二次世界大戦では5000万人にのぼる尊い命の犠牲を払いながら。
二度の世界大戦以降も、先進各国は引き続き弱小国に対し
圧倒的武力を背景に、狡猾で不公平な貿易と諸政策を強要し
現在の深刻重大な世界的規模の、貧困格差を生じさせるまでに至りました。


挙げ句の果てに、それらを土壌とした各種紛争やテロを
全世界に拡散させてしまったのです。 自国第一主義、異教徒排斥
難民受け入れ拒否等、歪んだポピュリズムの風潮さえ台頭する昨今。
混迷する世界情勢の、そもそもの根本原因を作ったのは
いったい誰なのでしょうか?

 
世界は依然として危機的状況に直面しています。国際連合成立以後も
平和はほど遠く、世界中で繰り返される戦争によって
累計1億人を超える尊い命が、新たに奪われてしまいました。
罪の無い人々を泣かす痛ましい戦争が
この地上から永久に無くなる日は来るのでしょうか?


世界の難民は現在1億1000万人を数え、ユニセフによる発表では
世界の子供達5人に1人が、紛争下の国々での劣悪な生活を…。
未来ある子供達の夢や希望を、大人達が踏みにじっているのです。
軍拡競争はいまだ衰えず、全世界の年間軍事費は300兆円。
これは無駄遣い以外の何物でもありません。


あまりにも驚異的な破壊力のゆえ、この地球上に一瞬でも
存在してはならない核兵器。 2017年7月の国連で『核兵器禁止条約』が
加盟122カ国の賛成で採択されたのは画期的です。 2020年10月24日に
ようやく必要批准国が50を超え、翌年1月22日にて条約発効に至りました。しかし核保有国と、その同盟国は条約不参加のまま
人類の重大な危機的未来を、憂慮しないかの如き有様です。

 
一方で、化石燃料消費に伴う二酸化炭素の過剰排出をはじめ
温室効果ガス等の急増は、『地球温暖化』や、オゾン層破壊を促進し
風水害・干ばつ・大気汚染・海面上昇等の環境異変を呼び起こしています。
シベリアの広大な永久凍土の融解は、封印された未知なる細菌や
ウイルスを、やがて大放出させる事でしょう。


水質汚濁、土壌汚染、乱獲乱開発等による無計画な地球的環境破壊も
悪化の一途をたどるばかり。 毎秒テニスコート14面分、1週間で東京都の
面積に相当する森林が、地球各地で消滅しています。
森林に生息する野生生物のうち、すでに1万4000種が、絶滅の危機へ
追いやられているのです。環境悪化の過程で、世界的に頻発する
大規模森林火災の深刻さも、尋常ではありません。

 
世界中の海に1億5000万トンも存在し、年間800万トンが絶えず排出され2050年には魚類の総重量を上回ることが予想される海洋プラスチックごみ。そのうち、現在の推計5兆個ものマイクロ・プラスチックごみは
濃厚に分布する東アジア水域で,、172万個/km2 という深刻さ。
それは分解不可能にして、多くの有害化学物質を吸着し
海洋生物を死に至らしめるだけでなく、生態系を壊し、食物や水道水にも
混入され、人体への悪影響が大いに懸念されるところです。
 
 
世界では、栄養失調や飢餓が原因で、6秒ごとに一人ずつの子供たちが
尊い命を亡くしています。 恐ろしい感染症に対しても、貧困のために
十分な予防対策と治療が受けられません。 世界人口のほぼ半分にあたる
人々が、1日につき 2、5ドル未満の生活を強いられている残酷な現実。


それはつまり、世界の至るところで所得の社会的再配分が機能せず
全人類が着々と積み上げた、全ての金融資産の82%を
わずか1%の富裕層が、独占所有しているからに相違ありません。
 

世界経済の残念さは、世界の経済的下位 36億人分に匹敵する資産を
ひと握りの大富豪たちが牛耳っている実態。世界のトップ 1%が
2020年以降に生まれた42兆ドルの富のうちの、3分の2を手にしていたとの
報告書を、昨年(2023年)もまた、オックスファムが発表しました。

 
株・債券・通貨・金融派生商品(デリバティブ)等による桁外れの
“ギャンブル経済” が “実体経済” を凌駕する極めて不適切&不健全な
世界経済の仕組みを、現代社会は構築しています。技術開発や生産活動に
関与せずとも、カネを回すだけで巨額の富を得てしまうことの不条理。

 
ごく一部の大企業及び大富豪は、天井知らずの暴利を上げてなお
賃金搾取や、法人税の引き下げ要求に知恵を絞り、タックスヘイブン等に
利益を隠遁させながら、課税逃れ競争に狂奔している有様。


餓死に追いやられる子供たちを尻目に、または極貧にあえぐ数億もの人々を他人事のように見過ごし、尚且つ世界平和を希求せず、国家安寧を顧みず
何食わぬ顔で豪遊生活を誇示さえしている。
我が身だけが裕福なら、それで良いのでしょうか?
同じ人間として、心が痛まないわけがありません。

 
欲に目がくらめば、人々の理性と正義とは、いとも容易に沈黙してしまう
それが歴史の真実。 そして、奴隷制度・人種差別・兵器の製造・侵略戦争・植民地支配・貧困格差など、人類史上の許容し難い “負の遺産” の数々。
あらゆる人々が、この地球で共存共栄していくために
克服しなければならない課題であり、試練であり、責務であると言えます。

 
かつて1939年に、女性ジャズ歌手のビリー・ホリディが
『奇妙な果実』を発表しました。 当時の黒人に対する
“リンチ” の残虐非道さを歌ったもので、口が歪み、眼球が飛び出すほどの
リンチで殺され、南部のポプラの木々にぶら下げられた、黒く臭くカラスの餌となる死体を奇妙な果実と呼んで、この歌は切実に訴えているのす。


リンチは人々に予告され、女性や子供までが見て楽しむために集まり
木々に吊るされた奇妙な果実から、心臓や肝臓の薄切りを
土産(みやげ)に持ち帰ったとさえ、記録されています。

 
1921年5/31から6/1にかけて、オクラホマ州タルサのグリーンウッド地区で
重火器や爆発物を使った、白人系アメリカ人暴徒による黒人住民への
狂気の沙汰とも言うべき大虐殺事件が発生しました。
不確定数ながら、150人から300人の死者と、800人以上の負傷者。
破壊・襲撃された民家や商店、そして殺害された黒人住民に
いったい、何の罪があったのでしょうか?

 
2020年5月25日、ミネソタ州ミネアポリスでは
黒人男性ジョージ・フロイドさんの暴行死。 20ドルのニセ札使用容疑で
白人警官によって手錠をかけられ、8分46秒のあいだ、膝で頸部を
強く圧迫され、窒息死に至る暴行事件が発生。この時の動画がオンラインで全世界に発信され、世界各国で『ブラック・ライブズ・マター』を
スローガンに、抗議デモが繰り広げられました。 これまで白人警官による
黒人への、不当で行き過ぎた取締りが、あとを絶たなかったからです。
  
 
一連の抗議デモは、世界の多くの市中から、人種差別を象徴する歴史上の
人物像が相次いで倒され、撤去される事態にまで発展しました。
世界中の良心的な人々の心に、何かが、うごめき始めたかのように。


もしも奴隷貿易の歴史を清算するのなら、イギリスで2640億ポンド
アメリカの場合で12兆ドルとも言われています。 勿論そのような
金銭だけでは全く足りません。命の重さ尊さを鑑みるならば……。
その昔、『一人の生命は、全地球よりも重い』と、訴えたのは
明治の啓蒙思想家、中村正直でした。

 
奴隷制度廃止時のイギリス政府の対応は、奴隷約 80万人の損失補償のために永久債を発行して、財源(2015年にて償還終了)に充てるなど
当時の国家予算の4割に相当する金額を捻出。 現在の価値に換算すると
170億ポンドを 47000人の奴隷所有者たちに配分する事でした。


しかし折角の配分も、本末転倒であった点が、至極残念でなりません。
手厚く補償されるべきは、背徳行為に手を染めた奴隷所有者ではなく
死ぬほどの酷い扱いを受けた奴隷自身の側なのに…。


あろう事か、当時の市場価格との差額が 2700万ポンドであるとして
一度は解放された元奴隷に『実習』と称し
タダ働きで弁済を強要させたとも言われています。
一人あたり 60フランの、フランス政府による賠償も同じく
元奴隷を対象とするものではありませんでした。

 
2020年に吹き荒れた人種差別反対の抗議デモの際は、かつての奴隷貿易や
奴隷制度に関与した、個人・企業・団体等の利害関係者が急遽
これ見よがしに、謝罪や遺憾の意を表明したものです。
レイシスト(差別主義者)呼ばわりの非難や、暴徒による破壊行為から
逃れるための、窮余の一策にすぎなかったのでありましょうが…。


抗議デモが世界的な広がりを見せる以前から
真摯に向き合ってくれていたのなら
人々は受け入れ、後悔と懺悔の念を共有できたのかも知れません。

 
2020年度以降、新型コロナウイルスが全地球的に猛威を振るいました。
ワクチンが充分に行き届かない発展途上国においても感染が爆発的に拡大し多数の死者が続出しました。コロナ禍は、世界の人々の生活様式を一変させ以前の日常には戻れないのではないかと、誰もが覚悟したほどの
深刻な事態にまで陥ったものです。


この先も再び、未知なる強力な感染症が蔓延し、人類が生存の危機に
晒されないとも限りません。
然し、そんな時ほど忘れてはならない何かを、思い起こしてほしいのです。
それこそは『助け合い』の心。


 
人類はこれまで数多くの間違いを繰り返してきました。
それでも決して、間違いばかりでは ありません。
現在の目覚ましい物質文明の豊かさを見れば
人類のたゆまぬ努力は、称賛に値(あたい)します。


それならば、人類自身が次に目指すべきものが何なのか
やがて気付かずにはおれない事でしょう。
危急存亡の今こそ、あらゆる人々が心をひとつに寄せ合う時。


戦争も暴力も貧困も差別も無い、誰もが幸せに暮らしていける
そんな世界を、なんとしても築いていかなければならないのです。

 


 
※建礼門葵による『現代社会に突き付けられ課題』でした。
一市民の立場から、現代の国際社会に対する ≪提言書≫ のつもりで
メッセージを綴らせていただきました。

=【現代社会につきつけられた課題//文中で引用した数字一覧表】=
 
大西洋奴隷貿易が横行していた時期
 1550年頃から1860年頃までの間
奴隷貿易により運ばれた奴隷の数
 1000万とも2000万とも、5000万人とも云われる
奴隷船の実態(拉致され過密に押し込まれての輸送)
 5週間の航海のみで、平均2割の奴隷が死亡した
アメリカ独立宣言
 1776年/これによる奴隷の人権は認められていない
合衆国憲法の制定
 1787年/憲法修正第13条追記は、1865年
ワシントン大行進(人種差別撤廃を求めるデモ)
 1963年/キング牧師の呼びかけで、20万人が集結
合衆国公民権法制定
 1964年/人種、宗教、性、出身国、皮膚の色を理由とする差別禁止
第一次世界大戦に起因する死者の数
 およそ3000万人
第二次世界大戦に起因よる死者の数
 およそ5000万人
世界の難民の数(2023年5月現在)
 1億1000万人/紛争や迫害によるもの
紛争下での劣悪な生活を強いられる子供の割合
 世界の子供たちの5人に1人
地球上の森林が消滅していく速度
 毎秒テニスコート14面分/又は1週間につき、東京都全体に相当する面積
絶滅の危機にある森林の野生動物
 1万4000種
現在の海洋プラスチックごみの総重量
 1億5000万トン
現在のマイクロプラスチックごみの総数
 5兆個/プラスチックごみの直径5ミリ以下のもの
東アジア水域のマイクロプラスチックごみ濃度
 1平方㎞あたり172万個
海洋プラスチックごみが、魚類の総重量を上回る年
 2050年(推定)
栄養失調や飢餓が原因で死亡する子供の割合
  6秒ごとに1人ずつ
世界人口のわずか1%の富裕層が占めるものは?
 世界の全金融資産の82%
62人の大富豪達が牛耳る資産総額の実態とは?
 世界の経済的下位36億人分の合計資産に匹敵
1日あたり2,5ドル未満の生活をしている人々の数
 世界人口のほぼ半分
世界の年間軍事費の総額
 約300兆円(非公表の金額を含めず…)

※女性ジャズ歌手ビリー・ホリディの、1939年発表の
歌のタイトルである『奇妙な果実』とは、口が歪み、眼球が飛び出すほどの
リンチで殺されアメリカ南部のポプラの木々にぶら下げられた
黒く臭く、カラスの餌となった死体のこと。
つまり…、この描写こそが、黒人差別の残酷すぎる本質。
現在でもなお、一部のアメリカ人の心の中に、差別感情は消えていない。

 





≪建礼門葵の戦争反対に関する文書一覧≫

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【戦争のない世界へ向けての宣言】|建礼門 葵 (note.com)

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🔶2/17投稿 【何十万回も思い描いた夢】
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🔶2/22投稿 【現代社会に突き付けられた課題≪前編≫】
現代社会に突き付けられた課題≪前編≫|建礼門 葵 (note.com)

🔶2/23投稿 【現代社会に突き付けられた課題≪後編≫】
現代社会に突き付けられた課題≪後編≫|建礼門 葵 (note.com)

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       改革への訴え】
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🔶3/01投稿 【戦争による民間人の被害状況】
戦争よる民間人の被害状況|建礼門 葵 (note.com)

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♬反戦歌&命の尊さを訴えた歌♬|建礼門 葵 (note.com)

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建礼門 葵
幼い頃からの夢は貧困や差別のない ≪あたたかい社会≫ の実現。どんな時でも 生きづらさを抱えるすべての人々を擁護し、不屈の代弁者であり続けたい…。地域社会の発展と世界の恒久平和に少しでも貢献できれば本望です。葵と共に未来を切り開いていきましょう。