【緑よ永遠に……】～心に秘めた永遠のラブレター～

2024年1月23日 20:51

来 (こ) し方の冬の厳しさと比べれば
春はなぜに優しく微笑むのだろう。

一面の銀世界から、解き放されし春。　
春がようやく、見渡す野山を覆 (おお) い尽くしていた。

太陽のやわらかな陽射しも、そよ風の心地よい感触も
確かに春のもの。

花々が嬉々 (きき) と咲き競い、小鳥らが楽しげにさえずり
蝶までが、ダンスに繰り出して…。　
なんと言う麗 (うるわ) しい季節。

今しがた僕は、春の庭に、至福の夢を見る。
胸を押し当て、両膝を寄せ付け
身を恋人のように火照 (ほて) らせて
僕は春を抱きしめている。

高鳴る胸の鼓動よ。　
喜びに打ち震えるばかりの、ああ純朴な幼な子よ。

なにびとの存在も、一輪の野草に等しい。
春の慈愛 (じあい) の前に
いかなる形骸 (けいがい) の区別があるだろう。

僕は小さな天使らと共に、春を讃美する。　
におい優しき春。　
ものみな豊かなる春よ。

なかでも、ひときわ僕を虜 (とりこ) にするものがある。
それは緑——、君だ。

ゆらゆらと、きらきらと
雪解けの大河に清楚 (せいそ) な影を落とす新録の樹々よ。

小鳥のさえずりと、そよ風の接吻 (せっぷん) にたゆたう
万緑なる若草のきらめきよ。

太陽と雲々の一途 (いちず) な求愛に
可愛らしく微笑む緑深き山脈よ。
緑なす心の原風景にみなぎり渡る、あたたかなる郷愁よ。

おお緑。　
青い空に、広い大地に、君はなんと映えて美しいことか。

『緑』という名の、美しき女神よ。
初恋の女性が君であったことは、逃れようのない宿命だったのか？

告白の勇気など微塵 (みじん) も持てず
恋の病いは幾十年も続いた。

それでも君が、僕の心の世界を照らす
永遠の女神であることに変わりはない。

君に決して気付かれぬよう、決して失礼の無きよう
人知れず慕 (した) い続けてきた。

けれどいつの日か、張り裂けそうなこの思いを告白しよう。
いつの日か、大声で叫びもしよう。　

君を、骨の髄 (ずい) まで抱きしめながら。
君こそは、君こそは、最愛の花嫁と。

樹々を飛び交う鳥たちも、野山に遊ぶ動物たちも
緑を讃え、緑に親しんでいる。

大空や、太陽や、大自然のあらゆる物までが
追随 (ついずい) せずにはおれないように。

弱き者にも、貧しき者にも、分けへだてなく緑は
真実の愛の姿を見せてくれた。

ならば、母なる僕らの地球よ。　
薫り高い豊饒 (ほうじょう) の楽園にして
緑したたる平和の星よ…。

はるかな宇宙の荒野に向けて、誇らしげに
そして声高らかに讃美するが良い。

優しさも誠実さも可憐 (かれん) さも
そうとも君が一番だと。　
熱い涙が溢 (あふ) れ出るのは君がため。

この広い宇宙に、ただひとりの女性。　
君の名は緑――。
夢やぶれても、君への愛あればこそ
僕は強く生きてこられた。

この命の燃え尽きる日まで
僕は生涯、君を見守り続けていたい。

　　※ この文書は
　　　　　いつの日か彼女に手渡したかった ≪永遠のラブレター≫。
　　　　　最後の最後まで告白できませんでした。
　　　　　彼女が本当に幸せなら、お荷物な僕の存在は
　　　　　必要がないと考えていました。

次回投稿予定➡
　　　　　『笑顔の君』～忘れ得ぬ君への思い～…へと続く　

　　真正面から向き合うのでなければ
　　　　　決して越えられない巨大な悲しみ……。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
♬BGM１曲目『野ばら』／ヴェルナー作曲
♬BGM２曲目『忘れたいのに』／パリス・シスターズ
♬BGM３曲目『18歳の彼』／ダリダ
♬BGM４曲目『慕　情』／マット・モンロー
♬BGM５曲目『アンドアイラブユーソー』／エルビス・プレスリー
♬BGM６曲目『あなたがいるから』／森山良子
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊