見出し画像

【向日葵は枯れていない!】23.ギラヴァンツ北九州 マッチレビュー ~第23節 vs FC琉球 ~

筆者の想い出からの(ファジサポ的な)書き出しで非常に恐縮ですが、2019シーズン岡山のアウェイ琉球戦観戦のため、沖縄に遠征したことがあります。
ちょうど7月のナイターでした。

開始2分、現在岐阜に所属しているイ・ヨンジェの鮮やかなループシュートで先制し、開始からバクスタが盛り上がった記憶が鮮明に残っています。

そんな熱い夏の記憶が蘇るようなCF(10)永井龍の先制ゴールでした。

振り返ります。

1.試合結果&メンバー

その(10)永井の先制ゴールを北九州が危なげなく守り切り勝利、クラブ新記録の11戦無敗を達成しました。連勝が前節で途切れた流れでの勝利、中断期間に入る前の勝利、共に意義深いものであると思います。
一方で、琉球のデキを踏まえますと、欲を言えば、追加点も獲っておきたいところでした。やはり、この点は今後の課題となるようです。
しかし、この勝利により、順位は6位相模原と同勝点36の7位、自動昇格圏の今治とは勝点差6となりました。まだまだ1試合の結果で順位は変動しそうですが、現実的に上位が見えてきた状況といえます。

J3第23節 琉球-北九州 メンバー

続いてメンバーです。

北九州はここまでフルタイム出場を続けていた不動のLCB(13)工藤孝汰が今シーズン初めて欠場しました。代わりに(4)長谷川光基が入りました。(4)長谷川といえば、前回ホームの琉球戦で決勝ゴールを決め、クリーンシートに貢献した記憶も新しく、実力的には(50)杉山耕二や(13)工藤と遜色ないCBといえます。琉球のCFが185cmの(9)野田隆之介であったことを考えますと、寧ろ高さ対策の面では好都合であったと思います。
なお、(4)長谷川の試合後コメントでは緊急的な出場であったことが窺えます。おそらく(13)工藤の体調面に何らかの異変があったのかもしれません。

一方、琉球は4月のホーム対戦時の3-1-4-2とは全く異なる4-4-2を敷いてきました。前節、奈良戦(●1-4)から4-4-2に代えていますが、ボランチの(6)岡澤昂星がその奈良戦で負傷し、今節は(41)鍵山慶司が先発しました。

2.レビュー

(1)試合の入りを制する

早速(10)永井の先制ゴールから振り返りましょう。
切り取り映像の最初に野性味溢れる(4)長谷川が登場し、それも非常に印象的ですね。
スローインへの対応が緩慢になった琉球CBの油断を突いたものですが、北九州にとって意義のあるゴールであったと思います。

チームの舞台裏に迫る「GO INSIDE」でも、いつも増本浩平監督は前後半の入りを間違えるなと強調しているのですが、そのチームとしての姿勢をエース自らが体現してくれました。
今節の前、10戦負けなしの間も、実は相手に先制を許した試合が6試合もあり、特に前半の試合運びが課題であったことを考えますと、残りの86分の試合進展にも大きな期待を持たせる得点であったといえます。

迷いなく(10)永井が琉球CB(14)鈴木順也に迫っていることからも、相手を引きつけて前に蹴りたい琉球CBの傾向を北九州がスカウティングしていた可能性もあり、GKの位置を間接視野に入れていた点も含めて、非常に良い準備が出来ていたゴールといえます。
(10)永井はこれが今シーズン9得点目、J2長崎に所属していた2016シーズン以来のリーグ戦2桁ゴールもみえてきました。

(2)追加点を奪えなかった理由

この立ち上がりのシーンも含めて、この試合での琉球のデキは決して良いものとはいえませんでした。暑さがそうさせているのか不明な点はあるのですが、戦術面云々の前にポジションに関わらずオフザボールの動きが不足している印象が強く残りました。よって、パスを出すタイミングが遅れ、北九州に引っ掛けられる、またはパスを出した先で北九州の選手に難なく奪われる。特に前半はそんなシーンの連続であったかのように思います。

戦術的にはエース白井陽斗の札幌移籍の影響はやはり大きかったと感じました。単にトップスコアラーが抜けるだけではなく、前線から下りて中間ポジションでパスを受ける担い手、そしてファーストディフェンスの担い手の喪失という点は否定できなかったと思います。
琉球の2トップ(9)野田と(10)富所悠のプレスはその強度も白井と比べると不足していたと思いますし、誘導の意図も薄かったようにみえました。2人とも守備が持ち味の選手ではないだけに無理もないことなのですが、北九州最終ラインは比較的に楽にボールを保持出来ていたと思います。

琉球の攻撃はその前線の(9)野田の高さを活かそうとしたもので、自陣保持時にはRSB(22)上原牧人を比較的高めの位置に上げ、左からのサイドチェンジにより(22)上原にフリーで受けさせ、良い体勢で(9)野田を目がけたクロスを上げさせようとしていたと思います。

実力者LSB(4)藤春廣輝と合わせて、試合全体でも何本かチャンスに繋がりそうなクロスが上げられましたが、北九州両CBを外したスペースへのボールに対しても北九州両SBを中心によく対処出来ていたと思いました。
試合全体を通じても琉球には決定機らしい決定機はなかったと思います。

つまり北九州としては有利に試合を運べる状況が続いていた訳ですが、得点は開始早々の(10)永井のゴールに止まってしまったことについては、今後の改善点になると考えるのです。

では、その原因は何なのでしょうか。
1本のシュート、クロスの精度、そこは練習で頑張ってもらうしかない部分ですが、筆者はポイントはやはり(6)藤原健介にあるとみました。

徐々にアシストも増やし始め、決定機もつくり始めている(6)藤原のパスですが、まだまだ周囲の選手と意図が合わない面はあるように見えます。

その一つが出し手と受け手の意図の不一致です。
これまで北九州の選手は比較的足元でボールを受けたいタイプが多いように見えるのですが、(6)藤原はどちらかというとスペースに出したいタイプのように見えます。6分、(6)藤原がピッチ中央下がり目のポジションから、ゴール前へスルーパスを出しますが、北九州の前線は全員、相手DFを背にしており、誰も反応出来ず流れてしまいました。

おそらく(6)藤原のやりたい崩しは、相手DFが感じていないスペースを探り当て、そのスペースを感じた味方を走り込ませるパスを出す、そんな形ではないかと思うのです。Xで少し書いたのですが、若い頃の中田英寿のパスに似ている気がします。

増本監督のこれまでのコメントからは、おそらくそんな(6)藤原のやりたいプレーに周囲が合わせることでチーム全体のレベルアップに繋げようとする意図も読み取ることができます。

(6)藤原の意図を感じる、彼のパスをスペースで受ける、これは中断期間における北九州のレベルアップテーマの一つと考えます。

そしてもう一点気になったのが、今度は(6)藤原の課題、またはチーム全体の課題といえるかもしれませんが、(6)藤原がミドルゾーンでボールを持った際にパスの選択が(10)永井の裏一辺倒になっている時があることです。先にも述べてきましたが、琉球の不調の影響もあり、北九州は普段よりもボールを握れる状況でした。チームとしてのねらいもあるのかもしれませんが、相手陣内でサイドチェンジも織り交ぜながらボールをじっくり持つ、持ちながら琉球を走らせるボール運びにももっとチャンレンジしてほしかったと思います。特にRSB(22)山脇華織は対面の相手を独力で剥がせる程、好調でした。もっと使っても良いと思いました。
ボール保持した時の選択肢をいかに増やしていくか、この点も今後の課題になりそうです。

3.夏のマーケットについて

さて、ここで北九州の夏の補強について少し考えてみたいと思います。
本村、坪郷の2選手が移籍したのに対して、加入は(6)藤原1人のみの状況が続いています。まだマーケット期間は続いていますが、他クラブの動きをみていましても、補強があるならそろそろ発表があってもよい頃です。

補強があるとするなら、どのような選手が良いのか、想像される予算面も踏まえますと、筆者は(6)藤原の縦パスを受けられそうな、つまりスペースでボールを受けることを得意とする若手ストライカー(レンタル)が良いような気がします。
このような補強により(10)永井の負担も減らせますし、(6)藤原によるチーム全体のレベルアップをより効果的に行うことも可能になります。
このような考え、いかがでしょうか。

4.まとめ

さて、簡単でしたが琉球戦をまとめてみました。
ゲームとしては琉球の状態がかなり影響したものと考えていますが、そんなゲームをしっかり勝ち切れたことは大きく評価しながら、更なるレベルアップにも着手してほしいとも感じました。
中断明けは、前回苦杯を喫した富山、そして9月に入ると好調今治との戦いも控え、いよいよJ3も勝負所へと突入していきます。
チームの着実な成長と、昇格戦線の結果が求められる戦いをぜひ両立するギラヴァンツの姿を観たいものです。

今回もお読みいただきありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
岡山のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。

2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

北九州大学(現:北九州市立大学)法学部出身
北九州は第二の故郷ということもあり、今シーズンからギラヴァンツ北九州もミニレビュー作成という形で追いかける。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?