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読書家ノート

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2023年12月の記事一覧

『戦争と交渉の経済学: 人はなぜ戦うのか』  クリストファー・ブラットマン (著), 神月 謙一 (翻訳)。明解な理論や分かりやすい答えが書かれてはいません。だからこそ、価値のある本でした。おすすめ。

『戦争と交渉の経済学: 人はなぜ戦うのか』 クリストファー・ブラットマン (著), 神月 謙一 (翻訳)。明解な理論や分かりやすい答えが書かれてはいません。だからこそ、価値のある本でした。おすすめ。

『戦争と交渉の経済学: 人はなぜ戦うのか』 2023/7/7
クリストファー・ブラットマン (著), 神月 謙一 (翻訳)

 2023年に感想文を書く最後の本になる。ウクライナの戦争が長引き、ついさきほどの夕方のニューズでも、ロシアがウクライナ全土に攻撃を仕掛けウクライナの死者30人といっていた。10月からはパレスチナ、ハマスによるイスラエル攻撃、イスラエル軍によるガザ地区への攻撃で、イスラエル

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『永遠の0』⇒(「アルキメデスの大戦」)⇒『ゴジラ-1.0』における「反戦・生命重視・国防・兵器開発」思想を考える。(小説家・百田尚樹氏&監督・脚本山崎貴氏の「百田=山崎文脈」としてまとめてみる)※盛大ネタバレあり

『永遠の0』⇒(「アルキメデスの大戦」)⇒『ゴジラ-1.0』における「反戦・生命重視・国防・兵器開発」思想を考える。(小説家・百田尚樹氏&監督・脚本山崎貴氏の「百田=山崎文脈」としてまとめてみる)※盛大ネタバレあり

 『ゴジラ-1.0』を観たのをきっかけに、映画『永遠の0』と『アルキメデスの大戦』も見直して、あれこれ考えた。

ネタバレ注意報※どの映画についてもネタバレと言うか結末ビックリ部分まで詳しく明かして論じちゃっているので、ネタバレ嫌な人は読むの絶対止めておいてね。論旨明確にするためにはそこまで明らかにしないといけなかったので。 

序論 前提いろいろ

 『ゴジラ-1.0』を見始めてすぐ、冒頭シーン

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『ゴジラ-1.0』、山崎監督は1964年生まれ、僕は1963年生まれ、戦争も戦後の混乱も知らず、物心ついたのは高度成長真っただ中世代である。そういう世代が戦争を描くことの困難と問題について。

『ゴジラ-1.0』、山崎監督は1964年生まれ、僕は1963年生まれ、戦争も戦後の混乱も知らず、物心ついたのは高度成長真っただ中世代である。そういう世代が戦争を描くことの困難と問題について。

『ゴジラ-1.0』について、おそらく長くなる感想を書きます。

 友人たちの評価はおおむね好意的だったし、米国でもヒットしているということだし、しかし、なんだか腰が上がらずにいました。そろそろ観ないとなあと思っているところに、Facebook友人、中島先生が、四方田犬彦氏の辛口批評をシェアしていて、なるほど、といろいろ腑に落ちたのだが、観もしないでわかったつもりになるのはいかんなあと、今、行ってき

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『悪い時』(新潮・現代世界の文学) 1982/9/1 G・ガルシア=マルケス (著) 高見 英一 (訳) 閉鎖的な町で、政治的対立と性的なスキャンダルが鬱々と重なることで起きる惨劇を、群像劇として描く。と分析すると今年ヒットした日本映画『福田村事件』になんとなく共通するものがある。 

『悪い時』(新潮・現代世界の文学) 1982/9/1 G・ガルシア=マルケス (著) 高見 英一 (訳) 閉鎖的な町で、政治的対立と性的なスキャンダルが鬱々と重なることで起きる惨劇を、群像劇として描く。と分析すると今年ヒットした日本映画『福田村事件』になんとなく共通するものがある。 

 僕が持っているのは、まさにこの装丁の。1982年に買った本。第2刷1982.11.5のもの。買ったのは大学二年生の秋である。そのまま読まずに41年。やっと読んだ。Amazonでは古本1円からある。

 今、出版されているのは、新潮社の「ガルシアマルケス善小説」シリーズの、他の初期小説と一緒になった本『悪い時 他9篇』。

内容紹介はそっちしかないので、そちらを引用、

Amazon内容紹介

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『街場の米中論』内田樹 (著) 教養人の雑談を聞いている感じで楽しく読める。米中関係ではなく、米国・中国、それぞれの基本的な趨向性(あるいは戦略)を、歴史だけでなく、文学映画音楽など幅広い視点から論じていく本。帯には「地政学」ってかいてあるけど、そうじゃないと思う。

『街場の米中論』内田樹 (著) 教養人の雑談を聞いている感じで楽しく読める。米中関係ではなく、米国・中国、それぞれの基本的な趨向性(あるいは戦略)を、歴史だけでなく、文学映画音楽など幅広い視点から論じていく本。帯には「地政学」ってかいてあるけど、そうじゃないと思う。

『街場の米中論』 2023/12/6
 内田 樹 (著)

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ここから僕の感想 まずね、僕は内田樹氏のことが好きなのである。最近のネット批評空間では内田樹氏は極めて風当たりの強い、批判されやすい立ち位置にいて、そのことも僕が内田氏が大好きな理由である。

 まず、「エビデンスは?データは?」「それはあなたの感想でしょう」と言い立てることで「論破した」と満足する(俗称をエビ厨と

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『モラルの話』  J.M. クッツェー (著), くぼた のぞみ (訳) すくなくとも二周読むことおすすめ。一周目とは全然違うものが、二周目には見えてくるのである。

『モラルの話』 J.M. クッツェー (著), くぼた のぞみ (訳) すくなくとも二周読むことおすすめ。一周目とは全然違うものが、二周目には見えてくるのである。


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ここから僕の感想

 ごく薄い短編集なのだが、この作家の場合、それでもヘビー級なのである。この前、若い時の『夷狄を待ちながら』の感想を書いたばかりだが、

こちらは短編七篇、書かれた時期に幅はあるが、まあ最近の作品である。
 
 前半2篇は若い人物の話だが、三篇目から老人の話になり、四篇目から、作者の性別の違う分身、老女性有名小説家のエリザベス・コステロの登場となる。
 

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『飛ぶ夢をしばらく見ない』山田太一 (著) もちろんテレビドラマもたくさん見たし好きだったけれど、 山田太一氏の訃報を聞いて、真っ先に思い浮かんだのがこの小説なので、再読して、感想文書きました。

『飛ぶ夢をしばらく見ない』山田太一 (著) もちろんテレビドラマもたくさん見たし好きだったけれど、 山田太一氏の訃報を聞いて、真っ先に思い浮かんだのがこの小説なので、再読して、感想文書きました。

飛ぶ夢をしばらく見ない

山田太一 (著)

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ここから僕の感想。というか思い出話半分。

 山田太一氏の訃報を聞いて、この本があるはずのあたり、三階の廊下に妻が後から据え付けてくれた背の低い本棚のあのあたりに走った。大学生活から20代の頃に買った本はだいたいあの辺にあるのだ。すぐ見つかった。家じゅう本だらけ本棚だらけなのだが、それでも「あの本はこの辺にあるはず」というのは分

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