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質よりスピード、圧倒的なスピード

スピードとは単純な速さだけでなく、安価に手軽に提供すること
質は時に本質を見失い、自己満足の材料に成り下がる

市場と欲求が飽和し、縦に伸びていくことが頭打ちになりつつ閉塞感の時代におけるイノベーションとは、

まず加速。既存では成しえなかった速度で手に入る、あるいは価値を出す。試行錯誤の時間とロスをカットし、時間のない現代人に魅力的な提案を行う。なにせうかうかしていれば競合がさらなる速度でアップデートされてしまう。他人が削減してくれる時間によって、さらなる時間削減を行い、結果として自分の首を絞めるための試行錯誤を重ねる時間を確保する。

次に安価。デリバリーの合理化とコストカット、スピードアップすることによる人や機械の労働力の削減。
そして値下げ。値下げに次ぐ値下げ。バリューチェーンの上から下へ、とにかく叩きまくる。経済の仕組みなんか知ったことではない。自分の身を切り、足りない分は他人も切り、徹底的に価格を破壊する。金のない現代人にとってはこれまた魅力的。

だから仕方ない。
1時間が30分になったら30分でできるやり方を。
30分が10分になるならでできる最善を。
10分が1分になり30秒になり1秒になるなら、そこでできるベストを尽くしつつ、ベストの上限を1時間分に近づけていく努力をするほかない。

今やあらゆる仕事は質よりスピード。
スピードに勝る価値は、もはやないと心得よう。

それって僕のより早く進むって本当かい?

時間をかけて追い求めた品質を提供することは自己満足にすぎない。
それは企業の成果たる製品に関しても、個人の成果たる日々の仕事のアウトプットに関しても同じことである。
実に嘆かわしい、矜持の微塵もないという人もいるだろう。矜持を語りたければその前提たるスピードを担保しないことには土俵に上がれない。そう思うならなおさら誰にもおいて行かれないスピードで仕事を成していかなければならない。

さながらチャップリンのモダン・タイムスのような、滑稽な社会だ。

やっと手に入れた幸せすらも許されない無情な現実に少女は悲嘆の涙を流す。そんな姿を見たチャーリーは、あきらめないで強く生きれば道はきっと開けると強く励まし、少女はその言葉に希望を見出す。

こうして、現代社会の冷たさと束縛に囚われない自由な生活を求め、二人ははるか向こうに続く一本道へと歩き去っていくのだった。

モダン・タイムス / Wikipedia

わたしと同じように、現代の冷たさと束縛も高速化する。
わたしもそれに捕まるまいとさらに高速化する。はてしないイタチゴッコの末に社会全体が高速化していく。
とにかくスピード。1時間を1秒に、1秒を1ミリ秒に。圧倒的なスピードをもって社会を追い抜き、過去の自分を置き去りにし、相手に考える時間を与えず自由に生きていく。

でもいずれ追い付かれることはわかっている。加速をやめられない時点ですでに追い付かれているかもしれない。
チャーリーが歩んだ道の先へわたしもいつか行くことができるだろうか。
その時わたしはどんな顔をしているだろうか。

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