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創業4年で上場 ~ 導入ツールの変遷と、上場準備の裏側 ~


このnote記事は、スタメンnoteリレーの6日目です!
明日はカスタマーサクセス部の松宮さんの記事が公開予定です。

一人でも多くの人に、感動を届け、幸せを広める。」という経営理念を掲げ、複数のBtoB SaaSを展開している株式会社スタメン財務経理部の清家です。財務・経理・税務・開示・債権債務管理などを管轄しています。
前回のnoteリレーにも参加しており、その際は以下の記事を書きました。

いくつかいただいた反応の中で、「過去の導入ツールの変遷も知りたい」というお声を頂戴しました。
創業時まで遡ってツール等をまとめていたのですが、上場まではそこまで変化がなく、どちらかというと創業時から上場時までの主要トピックについてまとめた方が面白いのではないかと思い、今回は「上場の裏側」について書いていけたらと思います。



提供サービスについて

2023年12月期 第1四半期決算説明資料より抜粋

TUNAGという社内のエンゲージメント向上を支援するSaaSサービスを提供しています。600社以上に導入いただいており、上記の通りそのほとんどがストック収益(月額定額料金)です。そのため上場準備期間中の売上管理・費用管理などについても、基本的にはシンプルな管理方法が取りやすい傾向にありました。 以降、ご一読いただく際にはそちらを念頭に置いていただけばと思います。


創業から上場までのトピックまとめ

スタメン内で作成。N-4期〜上場までの変遷をまとめました。

弊社は、2016年の8月に前代表の加藤・現代表の大西・前CTOの小林の3名で創業しました。
創業当初から1つ目の大きなマイルストーンとして、「2020年(創業当時のオリンピックイヤー)での上場」を掲げており、採用や社内体制はそれを前提に逆算してつくりあげていきました。
※ 創業までの過程については、以下の記事をご覧ください。


一般的なIPOスケジュール

出所:https://www.hibikipartners.com/glossary/glossary_4621/

大まかには、上記のようなスケジュール感で進行していく企業がほとんどではないかなと思います。N-3期からのTODOが分かりやすくまとまっていましたので、リンク先もぜひご覧ください。


2016年〜2017年(N-3期)

2017年はイベント盛りだくさん!

◆2016年
8月の創業後はサービス開発に注力しながらも、2020年上場を見据えて一人目の管理部門・開発部門・営業部門のメンバー採用に奔走していました。当時はWantedly一本にリソースを投下し採用活動を行っていました。

◆2017年
1月のサービスリリースを皮切りに、3月には初の資金調達、東京支社開設など拡販体制を一気に整えていった年でした。資金調達はこのタイミングが最後であり、以降財務的な動きはあまりなく、営業活動やその他仕組みづくりなどに注力していました。
一方コーポレート的な側面では、上場を見据えた経理や労務の内製化にも着手し始めました。この頃から新卒採用活動を行なっており、新卒1期生がインターンを始めたり、2017年の後半は翌年入社の中途採用活動をメインに動いていました。


2018年(N-2期)

従業員の純増数が過去イチ!

◆コーポレートトピック
2018年には、監査法人による初の通期(2017年度)ショートレビューがありました。この頃から管理体制の強化に本格的に取り組んでいくことになります。月次決算体制の整備や、内部統制/ガバナンスについても各種規程の整備・職務権限の整理などひとつずつ作り上げいきました。

◆ツール
2018年から会計ツールをマネーフォワードに切り替え、その他の周辺領域である請求書発行や経費精算もマネーフォワードで揃えていきました。マネーフォワード切り替えにはいくつか理由がありますが、スタメンでは当時、経理未経験のメンバーで管理部門を運営していたこともあり、教科書的な複式簿記がシステム上でも採用されている方が、座学と実務をつなげやすかったという背景があります。


2019年(N-1期)

証券会社レビューが始まりました。

◆コーポレートトピック
2019年には証券会社によるレビューが開始されました。昨年2018年1年かけて決算の体制を整えていった訳ですが、会計側の残高と帳票の残高が一致しないなどの問題が発生したことで、改めて数値の検証プロセスを見直していった時期です。合わせて事業部側と管理部側で数値の算出ロジックについて共通認識を作り出したのもこの時期でした。
※余談ですが、証券会社さんにも特徴があり、「レビュー時点でミスは0であるべき」という会社さんもいる中で、「ミスしたとしてもプロセス側での原因がハッキリしているならOK」という会社さんもいらっしゃいました。

◆ツール
勤怠システムをKING OF TIMEに変更したのみで、これ以降管理系ツールの入替はほとんど行っていません。(上場後にマネーフォワードクラウド会計からマネーフォワード会計Plusに変更作業をかけました。)


2020年(N期)

上場準備が佳境に差し掛かる中、様々なランキングで1位を獲得できたことが自信に繋がる

◆コーポレートトピック
2020年はいよいよ証券審査&東証審査&ロードショーというトリプルセットです。最終審査に向けて経理チームが上場準備に専念できるように、経理法務部と人事部を統合し、コーポレート本部体制に切り替えました。
本部体制にした上で朝会などを共にすることで人事も含めて一体感が生まれ、経理が過去数値の最終検証や、エクイティストーリーの補足説明シートづくりに専念することができました。上場準備という一大プロジェクトを人事も含めたコーポレート全員で自分事化することができたのは、本部体制に切り替えたことが大きかったと感じています。


上場準備における4大トピックのTips

①ガバナンス/内部統制/ルールづくり

家づくりで例えるなら、地盤固めや骨組み設計がここにあたります。
例えばですが「過去数値は触らない」といったような、文字にすると当たり前に聞こえるようなことも、意外と明文化されていないがために徹底出来ていないケースがあったりします。弊社でも取締役会での報告数値と会計システム内の数値が合わず、よくよく調べてみると修正仕訳を過去日付で入力してしまったことが判明するといった事例もありました。

会計システムだと分かりやすいですが、事業部側で利用している顧客管理システムでも基本的には過去数値を編集しないようにロックをかける等しておいた方がベターです。またスタートアップではExcelではなくスプレッドシートを利用するケースが多いかと思いますが、こちらも同様に関数を数値に置き換えたり、編集権限のロックをかけておくと安心です。

ほかにも様々あり挙げだすとキリがない世界ですが、創業初期段階でこういったルールづくりに秀でた方を採用できると後々とても心強いはずです。
ガバナンスについては別途一本まるっとnoteで書いてみようかなと思います。

出所:https://www.businesslawyers.jp/articles/1155


②数値の整合性担保

①に関連しますが、数値の検証プロセスについても早め早めに明文化しておくと良いです。例を挙げると、システム利用料1名あたり100円/月が売上としてクレジット決済されるとします。売上金は銀行口座に自動入金され1決済あたり95円です。差し引かれた5円は手数料として費用計上します。

一見正しそうですが、決済システムからのデータと突き合わせると、手数料の5円にも内訳がありそれぞれ税率が違うことで残高にズレが生じるといったことが発生したりします。

計上数値が正しいといえる根拠を、計上時の算出方法とは別角度から確かめるプロセスが用意できると安心ですね。

③予実の精度向上と算出ロジックの共通化

後述する④のためでもありますが、売上と各段階利益、それに紐づくコストそれぞれのコントロールも重要になってきます。
費用に関してはある程度上振れは抑制が可能かと思うので、ここでは売上創出のためのロジックづくりに触れられればと思います。

売上創出(契約)に至るまでには様々なステップを踏む必要があり、予算づくりや見込み管理のためには、ステップ毎の流入量や流入率を算出しなければなりません。そのロジック(KPI)の精度を高めていくことに加え、事業部側と管理部側で共通認識を持っておくことも同様に大切になります。

事業部側で算出ロジックが変更になっていることを知らず、管理部側では昔のロジックを監査法人や証券会社に説明してしまうといったことが起こりえるからです。(弊社でも過去にそういった事例がありました。)
「コンバージョン」といった用語の定義も社内で定めておきましょう。(ホワイトペーパーのDLもコンバージョン?ウェビナーは?etc.)

出所:https://promote.list-finder.jp/article/marke_all/purchase-funnel/

④エクイティ・ストーリーづくり

上場承認を受けた後に機関投資家向けにロードショー(会社説明会)を行うのですが、③の過去データの精度が成長戦略の納得感を左右するといっても過言ではありません。
他にももちろん、ミッションビジョンバリューやプロダクトのポジショニングや競争優位性、TAM、市場環境などを踏まえた上でプレゼン資料を作成する必要があります。とはいえ最終的には過去数値から効率性・健全性・収益性を推し量ることで、将来見通しについての整合性が取れる部分は大きいため、エクストづくりにおいても過去データの整備は重要だったなと感じます。

エクスト・ロードショー向けに集計したメトリクス集



その他の実践して良かったこと6選

パワポ、ワード、ガバナンス/ルール、エクセルのどれかが得意分野である人で上場準備チームを組成できるとスムーズ

  • パワポ:証券会社とのやりとり/プレゼン系/全体の戦略や進捗管理

  • ワード:1の部などの文章や規程系

  • ガバナンス/ルール:内部統制整備

  • エクセル:データ集計・数値周り


用語についての社内で共通認識を持つための辞書作り

  • CV(コンバージョン)の定義

    • 何をカウントするか

  • 使う用語を決める(平均MRR?ARPA?)

  • 大文字か小文字かを決める(× HR-TECH  〇 HR-Tech)

    • Ⅰの部やエクスト資料での表記ゆれを無くす

スタメン内で作成
スタメン社内で作成


スプレッドシートの色付けルール(青=ベタ打ち、黒=関数)

  • 外資系やコンサルティング企業では、以下のような色分けが徹底されているそうです。

  • 予算策定時には、シートを準備する人と直接入力する人が違う場合があるので、こういったルールがあると関数を上書きすることも減りますし、編集すべきセルがすぐに見つかり効率的です。

出所:https://note.com/excelconsul_t/n/n2bfcc6f73a04

ちなみに、以下の数式を条件付き書式設定ルールのカスタム数式に入力すると、ベタ打ちに任意の色付け等が自動で出来るようになります。

=NOT(ISFORMULA(A1))*ISNUMBER(A1)


過去データの蓄積

  • 成長の過程において利用していたツールを入れ替えるケースは、往々にして出てくるかと思いますが、必ずバックアップデータをダウンロードしておくことが大事です。(ほとんどのITツールがクラウドになっているので尚更)

  • その際将来集計する可能性を視野に細かい粒度でエクスポートできるのがベストですが、まずは四半期単位でフリーズデータをどこかに格納することをルーティン化していきましょう。


予算づくりは科目単位で

  • 弊社でも創業当初の予算策定はざっくりしたものでしたが、予実の精度を高めるために科目単位での予算組みに変更しました。

  • 過去データを科目単位の形に後から切り替える必要が発生し、整合をとることに苦労しました。

  • 人件費や広告宣伝費、人員数に基づく売上高(一人当たり売上高に異常値がないか)など、予算策定のロジックづくりは早めに固めにいけると良いでしょう。


スプレッドシートやGoogleドライブへのアクセス環境を渡してしまう

  • 弊社はGoogle Workspaceを活用しており、データはGoogleドライブに格納し、表計算ツールはスプレッドシートを利用しています。

  • 上場準備中から今に至るまで、監査法人様や証券会社様とのデータ受け渡しや依頼事項等に関してはGoogleドライブやスプレッドシートの直リンクにアクセス権限を付与する形で行っています。

  • メールやslack等も必要に応じて利用しますが、情報のストックという観点や抜け漏れを防止する意味で、オススメです。


最後に

最初は創業から上場時までの導入ツールの変遷をまとめようと思ったのですが、2018年頃からあまり変化がなく、他のトピックをまとめている中で上場準備について書くことにしました。
ただ上場準備とひとまとめにするには、範囲が膨大すぎるがゆえに内容が少し冗長な気もしてきました。
内部統制なら内部統制のみ、エクストならエクストのみと、各ジャンルごとに特化して次回以降note執筆してみようかなと思っています。
ご希望ございましたら、ぜひコメントやDMなどいただけますと幸いです。



また、弊社では新しい仲間を大募集中です!まずはカジュアルにお話しながら弊社のことや事業のこと、メンバーのことを知ってもらえる機会にできると嬉しいです。


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