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夫婦の不思議


脳出血で倒れた父。
入院して死ぬまでの2週間、はじめのうちは、少しコミュニケーションが取れていたが、容態が変わり、残りの期間は意識がないままだった。

私から父に触れる事は、もう記憶にない子供以来?日常的な母へのDV。遠い昔、私への性的虐待の記憶が当然のように父を遠ざけていたから。今まで日常会話はあっても、私から父に触るなんてあり得ない!


父の両耳にイヤホンをつけて父の好きだった音楽を流してみたり、手を握ってみたり話し掛けてみたり、身体をさすってみたりした。

静かに目を閉じたまま、ただ呼吸だけしている。今この状態で父のなかでは何が起こっているのだろう。今までの人生を振り返っているのだろうか。それとも、自分の内側でさえも何も感じられないのだろうか

散々暴れて怒鳴ってきた姿を見てきたのを思うと、これはこれで父にとっても、私達家族にとっても安らぎの状態なんじゃないかと複雑な気持ちになった。

不思議だったのが母。
長年苦労してきたのに毎日病院に通い、父に会いに行く。もう完全に動けなくなった父に向かって罵詈雑言のチャンスなのに!父を見捨てる絶好のチャンスなのに!……何故?

この時、夫婦にしか分からない何かがあるのだなと母の小さな背中、懸命な姿を見てわかった気がした。










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