マガジンのカバー画像

現象学

4
運営しているクリエイター

記事一覧

積石考

積石考

趣味の関係で水辺に行くことが多い。河原の小石を調査することもある。河原の石の状態で、川の様子を推測したりもする。
そんな中で、よく見かけるのが積石。河原で見ないことは殆どないぐらい見かける。──人は何故、石を積んでしまうのか。

積石というと、真っ先に思い浮かべるのは三途の川、賽の河原のお話ではなかろうか。親より先に亡くなったこどもが行き着くところがこの世とあの世の境目とされる三途の川のほとりにあ

もっとみる

「未来の知覚」を考える

文化は、存在しない物を人に見させてしまうほど、知覚に影響を与えることができるだろうか。(p.108)

地理学の大著「トポフィリア 人間と環境」(イーフー・トゥアン著、小野有五・阿部一共訳)を読んでいる。

「トポフィリア」という言葉と、人間の環境に対する情緒的な捉え方が本書では重要な論旨である。けれど、この著全体が大きな「人間たちの環世界」を記した文化の冒険譚のような、わくわくする驚きと喜びに貫

もっとみる

イーフー・トゥアン「トポフィリア-人間と環境」(1992)



"文化は、存在しない物を人に見させてしまうほど、知覚に影響を与えることができるだろうか。"(p.108)

トポフィリアとは著者の造語で、人と場所(環境)との情緒的な結びつきや愛着を意味する言葉。地理学や文化人類学の領域において、人間は環境に対して「主体的に解釈し、関わっていく」存在であることを示した大著。

そこに記述されているのは、時間と空間を超えた膨大な事例の記述。それぞれはまるで詩のよ

もっとみる

バシュラール「空間の詩学」意訳的要約(序論1〜3)

ガストン・バシュラール「空間の詩学」の序論一から三までの要約です。
序論自体は九まであります。
()は自分の解釈です。

序論


・詩的な問題を研究したいと願う哲学者は、
 これまでの自分の哲学的研究の習慣を捨ててね。
 考えを繋げたり積み上げたりしてるのは虚しいから、
 イメージの中に没頭した方がいいよ。

・詩の哲学というのは、言葉から生まれる新しいイメージの中に
 完全に没頭することだ

もっとみる