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ニーチェならギルガメシュの箴言を認めるだろうか。


英雄王

不図、関智一さんの演じていられる「ギルガメシュ」というキャラクターの名言なるものが気になって、検索窓に、「ギルガメシュ 名言」という言葉を打ち込んでみる。

その中で、以前作品の中で耳にしたことがある名言を目にした。そこで、私はニーチェの「道徳の系譜学」という本の内容を思い出した。

ま、とりあえず、英雄王のギルガメシュ様の箴言を引用させていただくことにする。

「正義の味方?誰も傷つかない世界だと?おかしなことを。誰も傷つかず幸福を保つ世界はない。人間とは犠牲がなくては生を謳歌できぬ獣の名だ。平等という綺麗事は、闇を直視できぬ弱者の戯言にすぎぬ。――――雑種。お前の理想とやらは、醜さを覆い隠すだけの言い訳に過ぎぬ。 」出典:https://festy.jp/web/posts/4813

極端に見えるこのギルガメシュの言葉も、見方を変えれば至極真っ当な代物に見える。というか、この文言をみておかしいと感じるのは、自分の生きている時代においての背景や常識や、善とされていることしか基にしていないゆえに起こることであるから、そもそもおかしいと切り捨てる方が、はなはだオカシイとは思うのだが・・・。

ギルガメシュは、メソポタミア、肥沃な三日月肥沃地帯(西アジア)にあるウルクという所の王である。

その場所がどのような背景を持ち合わせているかを知ろうとしなければ、この文言も極端なように聞こえるかもしれない。

さて、当然のことながら、ウルクのような古代文明には、民主主義というものは存在してはいない。食糧生産を開始した世界でも数少ない地域であるものの、民主主義というある意味で贅沢な政治形態は、この時代を生きるのには適さなかったのだろう。

なんとなくこの名言を、一つ一つ繙いていきたいと思う。

「正義の味方?誰も傷つかない世界だと?おかしなことを。誰も傷つかず幸福を保つ世界はない。」

いわゆる正義の味方は、公平や平等を重んじる、皆の味方である。しかしながら、古代のメソポタミア文明の時代に発達した集権的な政治機構は、効率よく集団を運営し、管理するために、「平等」というものを重視しなかったのだろう。それぞれがそれぞれの役割を持ち、つまり分業をすることは、より適切な生存方法であったと同時に、そこには弱者の犠牲、搾取、そして強者による支配、圧制ともいえるものが無かったとは言い切れない。「誰も傷つかず幸福を保つ世界はない。」とは、もしかしたら現代では通用しない恐れもあるが、少なくともギルガメシュが生きた時代では、真理に近いことであったのだと思われる。

「人間とは犠牲がなくては生を謳歌できぬ獣の名だ。平等という綺麗事は、闇を直視できぬ弱者の戯言にすぎぬ。」

これもギルガメシュの時代を考えれば、納得がゆく。人間は、自らの都合のいい様に環境を改変する。植物や動物を、自分の生存のための道具とし、彼らの生存ベクトルを逆転させる。彼らの命を犠牲にして、人間は生き長らえることができる。しかし人間が犠牲にするのは、動植物だけではもちろんない。人間は人間をも犠牲にする。奴隷は安価で売買されることもあっただろう。

そこで平等というニーチェが否定するような、禁欲的で、盲動的で、ルサンチマン的な考えが弱者の中から現れる。もちろんこれは、強者と弱者の対立と言う「闇」を受け入れることができないことから生じる考え。決して強者のそれではない。ギルガメシュは、平等などにおそらく毛ほどの関心を示すことはないだろう。強者は、強者と弱者の間に対立があるなんて思いもしないのだからこそ、強者なのであろうよ。

「雑種。お前の理想とやらは、醜さを覆い隠すだけの言い訳に過ぎぬ。」

お前の理想、衛宮士郎という人間の、「正義の味方」という虚偽妄言。

しかしそれは、前述のとおり、弱者特有のルサンチマン、強者であることが悪であると価値転換しようとする弱者の考えとなんら変わりはないのかもしれないな。弱者であることを肯定し、強者を悪とすることは、依然弱者は弱者のままであると認めていることだ。その思い上がりという醜さを、平等や公平や自由を目指す「正義の味方」とやらは、体現しているのかもしれない。

もしくは、「英雄」という言葉を、「正義の味方」と勘違いしているかもしれない。確かにどちらも「hero」ではあるが、そこには大きな断絶があるようで。正義の味方はヒーローかもしれないが、ヒーローは、ギルガメシュのような英雄ではないのかもしれない。


ギルガメシュの箴言。

これは間違いなく、古代特有の環境に裏付けられたもの。しかし依然として現代にもどこかで根付いているようなもの。


あなたはこの言葉を、どう受け止めるだろうか。

ただのアニメの戯言?

それとも

認めたくはない、真実のようなもの?




今日も大学生は惟っている。



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