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同級生Yの夢《Dream Diary 29》


xxxx年05月24日(x)
 


 薄暗い貯蔵庫の中で、高校時代の同級生Yが葡萄を使ったアイスクリームを作り、とても美味しそうに食べていた。葡萄は床に接した背の低い戸棚の中にたくさん貯蔵されている。それを見て、私もアイスクリームを作って食べたいと思った。しかし私は日頃からYのことを快く思っていなかった。だから彼に作り方を教えてもらうことを躊躇していた。なぜ彼が嫌いなのか? ケンカが弱いくせにイキがるからだ。イキがってる奴? 不良? ツッパリ? ヤンキー? それぞれ意味が少しずつ違うような気がするが、まあどうでもいい。それとモテ自慢。イラッとくるのはYが本当に女子高生にモテていたことだ。「女と付き合うことで男は人間的に成長してゆく」などと高校生のガキが自分で言うな自分で。どうせ『高一時代』(旺文社)とか『高2コース』(学研)なんかの学年誌に載っていた、加藤〇三あたりの通俗人生論の受け売りだろが。高校生の悩み相談コーナーとか。あ~あ、不良ツッパリヤンキー気取りが、あんな青少年向け通俗人生論の受け売りをやるようになっちゃお終いだカッコわる。オレなんか‥‥えっと、私はどうだったかな? そうそう、およそ六~七年に一人くらいの割合で私に興味を持つ女性が現れると、三十代半ばに振り返ってみて気が付いたのだった。まあまあマシな方か? でもこっちは毎日の割合で女性に只ならぬ関心を寄せているって言うのに? あんまりマシじゃないな。まあどうでもいいや。いやよくない。いや微妙‥。すると同級生のYが、緑色の葡萄を使うと美味しいアイスクリームが作れるんだと私に言った。しかし私は緑色の葡萄を選ばなかったので、美味しいアイスクリームが作れなかった。私はあらためて高校時代のことを思い出してみた。Yにはいいところも色々あったじゃないか。何だかんだ言っても友達だ。私はそう思い直した。緑色の葡萄か。もう一回作ってみよう。今度は美味しいアイスクリームが作れるかも知れない。




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