裏野ウラ

思考するコンガイストが自分のために書く文章。

裏野ウラ

思考するコンガイストが自分のために書く文章。

最近の記事

ただ、隣にいてくれるだけの夜に救われることがある

その日、私は箱根発17:46の小田急ロマンスカーに乗って新宿に向かっていた。 日本に戻って半年ほど、がむしゃらに働いて、やっと自分の仕事も形になってきた。 本来ならこの1ヶ月は夫のいる国に短期で戻るために空けていたが、結局戻らないことになり、私は同じく仕事で忙殺されていた友達を誘って箱根に慰安旅行に来ていた。 赤く掻きむしった蕁麻疹が広がった肌に箱根の湯は染みた。 料理は美味しく、湯も景色も最高で、マッサージを楽しみ、私たちは完璧な独身貴族のような無計画箱根旅行を楽しみき

    • どうしようもなく、好きで、好きで

      心臓がバクバクいっていた。 3ヶ月ぶりに会うはずなのに、もう何年も会ってないんじゃないかと思うほど、私は緊張していた。 だって、きっと今日が終わったら、もう私たちは連絡も取らない。きっと会うこともない。 だからただ、今日はあの人にありがとうだけ伝えようと思って来た。 あったかいものでも飲みながらイチョウを見ようよ、と昔に口約束をしていた。 そんな口約束を、私が引っ張り出して呼び出した。彼はあまり乗り気ではなかった。 駅直結の50メートルほどのイチョウ並木。 きっとそれを往

      • 好きでもない男とした一年半越しのそれは、薬のように私を癒した

        「長くねぇ〜〜〜!?」 深夜11時。上半身にカフスボタンの光るシャツ、首と腕には高級ブランドのネックレスとブレスレットをギラギラさせ、下半身はボクサーパンツ一丁でzoom会議をしている男が、一瞬パソコンをミュートにしてこっちを振り返った。 「だねぇ。早く終わらせてよー。」 と、私が返事をすると 「くそー、この会議の前にお客さんと飲んできたから更にしんどい」 と、男はさらに愚痴をこぼし、画面に戻った。 その日の朝、私は大変落ち込んでいた。 メンタルをやられやすい体質の

        • 窓を開けた。冬の花の匂いがした

          冬の朝のツンとした空気が肺に滑り込んでくる感覚が好きだ。 そんな初冬の香りがし始めた晩秋。 私は久しぶりに11月に日本にいた。 久々の11月の空気が気持ちよくて、私は外に出た。 辺りを散歩していると、窓を開けた時の花の香りの正体が隣の家のサザンカだということに気付いた。 もうしばらく散歩をした。 近くの自然保護林の中を歩く。 朝日が差して葉っぱがキラキラ輝いている。孔雀の羽みたいに輝く葉から零れる木漏れ日が、地面に宝石のような光を落としている。 私は今、朝にいる。 そし

        ただ、隣にいてくれるだけの夜に救われることがある

          疲れて日本に帰ってきた

          無理やり仕事を作って、必死に獲得した帰国のチャンス。 こうやっていつも頑張って頑張って言い訳を作って日本に帰ってきていた。 今回もそうだった。 一つ決定的に違うのは、夫と距離を置くことを話し合ってから帰ってきたことだった。 話を切り出したのも、話し合ったのは飛行機に乗るその日だった。 日本までの飛行機の出る首都の街まで車で送ってくれるというので、朝早くに家を出ることにし、カフェで朝ごはんを食べてから向かうことにした。 カフェで、夫に手紙を渡した。 言語が不自由な私は、

          疲れて日本に帰ってきた

          恋と裏垢に立たせてもらったから。

          当初は惚気垢から始まった裏野ウラが、いつの間にか、私の思考整理の場になって、たくさんの人に共感してもらうようになった。 裏垢の人たちはあまりにも優しく、共感力が高く、同じ痛みを抱えて分かち合える存在だった。とても暖かかった。優しくて、居心地が良かった。 これからもここで絵を描いて、文章を書いて、みんなに共感してもらって、そうやって自分を表現していっても良かった。でも、でもいつまでもここにいたら、私は現実の世界で生きられない、と思うようになった。 ある意味、裏垢は私にとって

          恋と裏垢に立たせてもらったから。

          寂しさを誰かのせいにしたくない

          その日、私は頭痛で目が覚めた。 前日、たまたま呼び出された友達の前で大号泣して、そのまま帰り道に低血糖でフラフラになり、なんとか帰りついて即寝込んでしまった。 朝にクッキーを食べて頭痛薬を飲んだら楽になってきた。 ここ1ヶ月、全然食べられていない。 夏の終わりのある日、彼にKindleを返した。 楽しい最後の一日にできた。 その日の出来事はまた別の文章に書いているけれど、アホみたいにポエ散らかしているから恥ずかしくて公開しないかもしれない(笑) でも花火のように楽しく

          寂しさを誰かのせいにしたくない

          最後にもう一度会う日はすぐそこに

          彼にはもう一度会わなければならない。 彼からKindle本体を借りているのだ。 これを返す時は私が「楽しめる」状態になった時にしようと決めている。 「楽しむ」は彼の生き様だった。 常に人生をモヤモヤと悩み続けている私からすると「楽しめるか、楽しめないか」で日常のいろんなことを決めている彼は、明確で、前向きで、驚きと発見と憧れでいっぱいの人だった。そんな彼から私は、人生を楽しむコツと小さな幸せを見つけるヒントをたくさん教えてもらった。 彼は早くKindleを返して欲しそう

          最後にもう一度会う日はすぐそこに

          自分が自分を大好きだと思えること

          何度も何度も思う。 「あの時、私があんなことしなければ…もっと冷静になれてれば…」 「別れ話してた時、もっとすがればよかった。それでもいいから、まだ私と一緒にいて欲しいって言えば良かったのかな…」 そんな後悔が私を何度も何度も襲ってくる。 その度に 「そんなことない、これで良かった。あのまま続けてても良い結果にはならなかった。」 ってもう一人の自分が言う。 「問題の解決になってないんだよ。寂しさは自分の中から来てるんだから。原因は自分の中にあるんだから。彼は何とかして

          自分が自分を大好きだと思えること

          人を好きになることと、その人のカケラをもらうこと

          溢れる思いと自己分析と、決意のnoteを書いたその夜、私は久々に横になってすぐに眠れた。 朝方、疲れる夢を見たので、寝起きはあまり良くなかった。 どうやらストレスはそう簡単に私を解放してくれないらしい。 スッキリ起きられるはずだったのに、なんとなく良くない寝起きを迎えた私は、散歩に出ることにした。 一週間以上続いた長雨は今朝ようやく上がり、青い空に蝉の声が響いていた。 私は家の近くのコンビニでコメダ珈琲のココアを買って近くの公園へ向かった。 この公園は婚外さんが度々私

          人を好きになることと、その人のカケラをもらうこと

          婚外卒業への道

          8月某日、私は婚外さんにフラれた。 ちょっとしたことで喧嘩して、お互いにカチンときてしまって、関係は修復できずそのまま終わってしまった。 きっと、よくあることだ。 少し時間が経って、頭が冷静になってきたところで、気づいたことがあったからこうして文章を書いている。 これは、私の日記みたいなものだから、気になる人だけ読んでくれたらいい。 日記を読まれるのはちょっと恥ずかしいけど、気付きや決意を人に見てもらったほうが先に進めるのかなと思って、駄文を晒すことにした。 私は、恋愛依

          婚外卒業への道

          香りの手紙

          その香りは初めて会った時に彼がプレゼントしてくれたものだった。 コロナ渦でみんながマスクをつけるようになり始めた頃 「エタノールでできてるからマスクの消毒に使ってね。お守りだよ。」 と、くれたアロマ消毒液は初夏にぴったりな爽やかな香りだった。 もらった時は「わぁいい香り!」くらいにしか思わなかったが、実はそれは彼が自分で作ったものだと明かされて、後日、使ったハーブを教えてくれた。 何気なくそのハーブの効能を見てみると、使われたハーブは全て弱った心に元気を与える効果のあるも

          香りの手紙

          アロマオイル

          「おはよぉ」 今朝も早起きの君からのDMを寝坊助の私は一時間後に返す。 「君がくれたアロマいい匂いだよお…もったいなくて使えないから、起きた瞬間にかいで、蓋して枕元に置いてるんだよお」 寝ぼけて君にそう言うと、 「うわああ、なんてかわいいことを…」 と可愛く照れたあと 「つ、使うためにあるんやからね!全部オーガニックだから安心して使っていいよ!」 照れた様子が本当にかわいい。 「無水エタノールで作ってるからコロナ対策にもいいから!マスクにシュってしてね!」 「お守り

          アロマオイル

          初対面 [後編]

          twitterの裏垢で知り合った気になる彼との初対面の記録。 前半はこちらから。 プレゼント交換をしたあとも私達は時間を忘れて延々と話し込んでいた。 「DMでこんなに話せてしまうんだから会ったらやばいだろうね」って前から話していたけど、本当に会ったらずっと話してた。 この時、予想外だったのがホテルの部屋の配置だった。 予約サイトではソファがある部屋のようだったが、実際にはソファではなく、マッサージチェアとデスクチェアしかなく、私たちは向かい合って座っていた。 ソファで

          初対面 [後編]

          初対面 [前編]

          緊急事態宣言も解除され数週間ぶりに来た地元の駅は夕日がキラキラと床に反射して映画の世界のようだった。 車内換気のために開けられた窓から流れてくる初夏の空気もなんだか世界をキラキラ見せてくれる。 いつも人と会う時は必ず付けている香水を今日は付けずに出た。なんとなくまっさらな自分を見て欲しくて。 ーーあーあ、私、会いに行ってる。 彼の顔も声も名前も知らない。 知っているのは優しい文章と人の心を裸にするあたたかさだけ。 twitterの裏垢では随分前から相互だったけど、いつから

          初対面 [前編]