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寂しさを誰かのせいにしたくない

その日、私は頭痛で目が覚めた。

前日、たまたま呼び出された友達の前で大号泣して、そのまま帰り道に低血糖でフラフラになり、なんとか帰りついて即寝込んでしまった。

朝にクッキーを食べて頭痛薬を飲んだら楽になってきた。
ここ1ヶ月、全然食べられていない。


夏の終わりのある日、彼にKindleを返した。
楽しい最後の一日にできた。
その日の出来事はまた別の文章に書いているけれど、アホみたいにポエ散らかしているから恥ずかしくて公開しないかもしれない(笑)
でも花火のように楽しく、切なかった。最後の夏の夜は最高の夜だった。

ご飯が食べられないことも、友達の前で号泣したことも、もちろん彼とお別れしたということが大きな原因の一つではあるけど、それよりも、なによりも、もう目の前に日本を離れて夫が待つ国に帰らなければないない日が来ているという事実のほうが、私を怖がらせた。

あの国に帰るのは怖い。
別に夫にDVやモラハラを受けているわけじゃない。
むしろ、夫は、誰に聞いても100%「いい人だね」って言われるような男だ。

なんで怖いのか。

孤独が怖い。
あの国には、仕事も、頼れる人も、心許せる友達も、相談できるような人も、涙を流して気付いてくれる人も、心が安らぐ場所も、癒してくれる食べ物もお菓子もない。
どこにも行くことができなくて、言葉も流暢ではなく、ずっと家に籠るだけ。日本が恋しくて恋しくて、TwitterとYouTubeで見聞きする日本語だけが私の癒しだった。何度もTwitterを開いては、時差で深夜帯のために誰もいないTLを見ては悲しく思い、こちらの夕日が沈むと共に登る日本の日の出だけを心待ちにして暮らしていた。
向こうの昼間が嫌いだ。世界中の誰からも必要とされていないような気がして、孤独に堕ちる。
だから、起きた瞬間から皆が起きている今の環境も、どのメッセージにもリアタイで返事ができることもとても幸せに思う。


私を知っている人なら分かると思うけど、私は会いたい人に会うためなら軽く飛行機も新幹線も乗っちゃうくらいフットワークが軽く、人が好きだ。
誰かと一緒にいられることに何よりも幸せを感じる。人が大好き。
だから、向こうでの暮らしはまるで牢獄に閉じ込められているかのように苦しい。

本当に私は寂しがり屋だった。もともと一人行動が好きだから昔は気が付かなかったんだ。「一人でいるほうが好きだ」くらいに思っていた。でも、誰かといる時間があるから、一人の時間も楽しめるんだってことに気付いたのは異国の地に嫁いでからだった。

そんな孤独と戦う苦しい日々の中でいつの間にか踏み込んでいたのが婚外だった。
婚外は私の寂しさを埋めてくれた。誰かが常に私と共に居てくれる、私を想ってくれているということが私を不安から解放して安心させてくれた。


話は戻るけど、彼と最後に会った日、彼はもう一度私に会いたそうだった。
でも、決定的なひと言は言わない。後ろめたさがあったのだろう。
自分からフっておいてずるい人だと思った。

本当は私だって今でも大好きだし、飛行機が離陸する直前でも会いたいと思うし、今すぐ会いに行くよって言ってしまいたい。

でも、いまもう一度彼に会ってしまったら、向こうに帰った時にもっと寂しくなってしまうから。
私の寂しさの原因は「海外暮らしの孤独感」なのに、いつの間にか「彼に会えない寂しさ」にすり変わってしまうから。
本当は自分の周りの環境や、心の持ちようの問題なのに、寂しくて苦しいのを彼のせいにしてしまう。それに、彼からの「おはよう」を待つためだけに夕方まで泣きながら暮らすなんて、もういやだ。


こうやって書き出してみると私ってばけっこうメンヘラだ。事実、メンタルかなり弱い自覚はあるけど…めんどくさいメンヘラとして彼に見られなくないというゴミみたいなプライドもあった。


辛いのを彼のせいにしたくない。彼のために自分が辛くなるのもしたくない。また寂しさを拗らせて彼を傷つけるのも嫌だ。

そもそも寂しさの根源と彼は無関係なんだから。
それに気付いたから、私は婚外を辞めると宣言したんだ。

すぐ連絡が取れる所に好きな人がいたら絶対に頼ってしまう。助けて寂しい苦しいのって、何とかしてもらおうとしてしまう。
でもそれを彼に求めるのは筋違いだし、彼もそこまで頼ってほしいとは思っていない。そして、彼にはどうにもできない。


婚外男性にもいろいろタイプがいる中で、彼は婚外に「癒し」と「お楽しみ」を求めるタイプだった。そんな人を私が「心の支え」にしようとするとバランスが崩れる。中には支えてくれるタイプの婚外男性もいるだろうけど、彼はそうではなかった。
こんなことまで分析できているのにまだ彼のことが好きな自分が憎い。


というわけで、確実に私が心のバランスを崩すとわかっている環境に行くに当たって、彼はいないほうがいい。
だから、最後に「また会える日があったら教えて」と言った彼に「いつか私が強くなったらね」と返した。



でもね、私だってタダで心の健康を害するような場所に戻るつもりはない。
帰ったら、夫と話し合って「もう日本に住む、限界だ」と伝えるつもりだ。
これまで3年間、日本への想いが捨てきれずに日本とあちらを行ったり来たりして暮らしてきた。移動のたびに、積み上げかけた仕事も人間関係も、半壊して、その度に作り直そうとしたり、新しく作ろうとした。でも、何も継続しない、実にならない。人生が溶けているようだった。それを夫との結婚のせいにしていじけている自分も嫌いだ。

正直、夫は何も悪くない。わがままな私を許してくれるかなんてわからない。でも、私の気持ちも、夫の気持ちも、言葉にしないとわからない。


今これを書いているのも、夫に向けて書く手紙の練習だ。
私たちにはスムーズに話し合いができるほどの言語力がない。だから、手紙に書いて翻訳して、そして渡すことにする。あるいはGoogle翻訳に打ち込みながら話し合うしかない。
悲しいな、話し合いたい人とマトモに話し合う言語すら持ってないなんて。


でもがんばろう。
もう自分が寂しいのを誰かのせいにして生きていたくないから。

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