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12月16日の手紙 グレイラットの殺人


拝啓

楽しみにしていた、
M.W.クレイヴンのワシントン・ポーシリーズの
第4作「グレイラットの殺人」の感想です。
これまでの感想はこちら。

気をつけているつもりですが、やはりネタバレが気になる方は、ここでブラウザバックをお願いします。
また、下手の記事でお会いしましょう!






待ちきれずに紙の本を買ってしまいましたが、積んでいるうちに、Audible版が出ました。
嬉しい、本当に嬉しかったです!
人気あるんでしょうね。今後も翻訳とAudible化を期待しています。
紙の本も大好きですが、ワシントン・ポーシリーズら、Audibleがあっています。
何故って、家事をしながら、電車通勤しながら聞けるのです。
面倒な家事がワシントン・ポーシリーズのおかげで気楽に取り組めるようになるし、
憂鬱な通勤時間も楽しくなります。
好きな小説を耳から聞くの、いいですよ!

今回も表紙は素敵


左側を向いている大きな灰色のネズミが、掠れた灰色で描かれています。ネズミの目はうつろで、アニメーション的なネズミほど可愛らしくはないものの、本物のネズミのようではありません。
この灰色ネズミが事件のどんな部分を表すのか、ワクワクさせる表紙です。
本当にネズミが出てくるのか、それともマスコットなのか、比喩なのか、この表紙だけで、想像が膨らみます。
ネズミの左腕の付け根に、赤い汚れがついているのですが、ずいぶん読み進めるまで気づきませんでした。
今回も丁寧な仕事の表紙です。
いい作品は、表紙も凝っていますよね。

ファンとしての不安


前回の終わりが終わりだったので、
ポーが最初に出てくるシーンが裁判所というのに、ハラハラしてしまいました。
作者と編集者の作戦にまんまと、引っかかってしまいました。
しかし、ハードウィッククロフト(英国カンブリア州にある、年代物の羊小屋を改修したポーの家)のことも心配ではありますが、
それより、ポーの今後の人生、(フリンとその息子の人生も)が心配です。
もともと体制に屈しない人間だとしても、ここ数年のポーの働きはかなり危険な気がします。
そろそろ社会的に、破綻するのではないか…などと冒頭では暗い気持ちになりました。

冒頭シーンの衝撃


ありとあらゆるジェームズ・ボンドが出てくる冒頭、
イギリス人にとってはワクワクしただろうなぁと思います。
この書き出しを思いついた時点で、M.W.クレイヴンは
でもこれ、それぞれのジェームズ・ボンドを知らないと魅力が半減する始まりですね。
ちなみに、ピアーズ・ブロスナン、ダニエル・クレイグ、ショーン・コネリーはわかるけど、他の俳優がわかりませんでした。
検索しました。インターネットは偉大です。
ティモシー・ダルトン、なかなか好みの顔でした。ショーン・コネリーより好きなタイプかもしれません。
ダニエル・クレイグのボンドって硬派で好きなのですが、ジェームズ・ボンドとイメージすると何故かピアーズ・ブロスナンのにっこり笑顔が浮かんでくる不思議…。
ジェームズ・ボンドは、子どもの頃見ると、よく分からないことが多く、面白いけれど、すごく奇妙な映画だと思っていました。(子ども向きではないということだと思うのですが)
どうしてスパイなのに、ちゃんと名前を言ってホテルに泊まったり、
名乗ったりするのだろうとか、
出てくる女性は何故、ことごとく彼のことを好きになってしまうのだろうとか、
かなりのピンチになってもほとんど怪我をしないのは何故だろうとか、
素朴な疑問を持っていました。
大人になってみれば、
どれもこれもジェームズ・ボンド映画のお約束、アクション映画のお約束というだけです。
何も考えずに爽快感を楽しむ映画、それがジェームズ・ボンドなのだと今では思います。
加えて海外の景勝地が舞台になってるので、今ほど情報がなく、海外旅行が気軽でなかった時代は、興味深かっただろうと思います。

女性に取り囲まれるポー


これまで登場した、ポーを取り巻く女たちが次々登場します。
タイトルが暗いのに、そのギャップに驚きました。
ちょっと日本のライトノベルみたいな展開なんです。ポーのことを憎からず思っている女性がポーの回りにわらわら寄ってくるのです。
しかも、年下〜同年代〜少し年上と年齢も色々、性格も年下天然、ヤンデレ、お姉さん、ツンデレ、腐れ縁など、ほとんど全てを網羅しているのです。
新たに登場するMI5の職員も女性です。
英国ミステリってこんなのでしたっけ…?とポカンとしてしまいました。
それとも日本の警察や関連省庁におじさんが多過ぎるのでしょうか。
そう考えると、女性が活躍する社会じゃないんだなぁ、日本は。
ちなみに、ポーは女心には疎い設定で、沢山女性が寄ってきても、何も感じていないようです。ますますラノベ主人公、しかもハーレムラノベの主人公だ!と思ってしまいました。
ホロヴィッツの作品を間に挟んだからか、ワシントン・ポーシリーズが読みやすく、軽く感じられるのは事実かもしれません。
これは批判ではなくて、事実として、とっつきやすいということです。

犯人の予想が外れた…と思ったら当たった!…と思ったら…


個人的にはとある場所に出てきたある人が最初から犯人だという予想をつけていました。
あまりにも、わかりやすいキャラクター造形なのが怪しいと感じました。
また、M.W.クレイヴンは味方だと思わせた人を犯人にする傾向があるので、好感度の高い新キャラクターには要注意なのです。
これは1作目からずっとそうです。
犯人がすでにわかっているブラックサマーの殺人でも共犯者が、そういう人でした。
今回は、わかりやすいから、この人だな、とピンときました。
「あー、犯人、はずれたー」と思った後で、「おや?これは」という展開になりゾクゾクしました。
そして、
「やった!シリーズ4作目にして、犯人当たりました!」
と思ったら、「えええええええ!その人なの??」となる結末、
そして終わった…と思ったところで、本当の終章が始まり、全ての伏線と読者が気になっていたことが怒涛のように、そして、すっきり解決されていきました。
今回、前半はやや退屈しましたが、後半はどんでん返しにつぐ、どんでん返し!
かなり楽しめました。
心配は杞憂でした。ワシントン・ポーシリーズ、次作も期待しています。
残ったのは、
・キュレーターの最終章のあと、結局どうなっていたのか
・エステル・ドイルは何がしたかったのか
・ポーの出生
・バネ足ジャック事件とは?
という謎でしょうか。
今後のシリーズ、次作で明かされるのかと思うと今から楽しみです。

Audibleは進化する

今回も、読み手の方、とってもよかったです。
各キャラクターの読み分けが上手いんですよね。
それぞれの性格がにじみ出た喋り方、声の出し方で、しっかり演じられていて、
返答だけでどのキャラクターかわかるのが
、Audibleユーザーとしては本当に助かります。
家事をしていても聞き取りやすいのです。

そして、今回1番有り難かったのは、
付属資料・PDFに登場人物一覧が付いたことです。
これまでスマホのメモ帳に、メモを取りながら書いていたので、
とっても助かりました。
登場人物一覧があると、感想も書きやすいです。
Audible担当の方、感想読んでくださっているのでしょうか…。
ミステリは、基本的に登場人物一覧をつけてもらえると助かります!
地図などがある場合は、添付して欲しいです。
今後とも進化、期待しています。

著者あとがきと謝辞

今回は何と、あとがきと謝辞に別れました。
とっても複雑な構成の作品だなぁと思いながら読んでいたのですが、
あとがきでどうしてそうなったのかの謎が解けるので、ぜひ、あとがきも聞いてください。
ストックしていたネタを、それぞれの良さを無くさずに再構成するために、
かなり練られたようです。
ファンとしてはそういう裏側がわかったも楽しかったです。
そして、圧巻の謝辞。
いつものことですが、M.W.クレイヴンのユーモアが炸裂しています。
こちらも、ぜひ、聞いてください。

アクション多めの展開で、少し不安がありましたが、想像以上に楽しめました。
次作も、期待です。






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