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10月24日の手紙 ブラックサマーの殺人 ネタバレあり


拝啓

英国の作家、M.W.クレイヴンのワシントン・ポーシリーズ2作目、「ブラックサマーの殺人」
前回と同じくAudibleで読了(聴了)しました。

https://www.audible.co.jp/pd/B0BKQKKT9Q?source_code=ASSORAP0511160006&share_location=pdp

ネタバレありの感想です。
ネタバレが嫌な方はここでブラウザバックしてください。
また別の機会にお会いしましょう。

さて、「ブラックサマーの殺人」です。
身も蓋もない感想になりますが、今作も面白かった!です。
まず、「ストーンサークルの殺人」と同様、表紙が素敵です。
横殴りの雨がふる中であかりがついている建物がブルーグリーンと黒を基調にイラストタッチで描かれています。この建物は何なのだろう、そしてどうしてひどい雨が降っているのだろう…と読み手を期待させる表紙なのです。

読み進めていくと、この建物は家ではなくて、ミシュランで三つ星をとったレストラン「バラスアンドスロー」であることがわかります。
また、ウェンディという暴風雨が近づきつつある状況の夏であるということも。「だから、表紙には、横殴りの雨が降っているのね」と納得します。
さて、「ブラックサマーの殺人」は前作「ストーンサークルの殺人」と違って、犯人が誰か?ではなく、犯人がどうやったのか?がストーリー展開のポイントです。
加えて、殺人が起こったのは現在ではなく、過去であり、ワシントン・ポーがすでに解決に導いた事件なのです。犯人とされたミシュラン三つ星シェフ、ジャレド・キートンはすでに裁判を終え、刑務所に入っています。
ところが、殺されたはずの被害者が警察官の前に現れたことから、ポーの捜査に疑念が持たれることになるのです。
ワシントン・ポーは間違った捜査をしてしまったのか?
ワシントン・ポーが真実に辿り着くのと、捕まってしまうの、どちらが早いのか?
「被害者は死んでいなかった」のか?
もしそうならどうやったのか?
暴風雨ウェンディも含めた困難な要素とタイムリミットにワシントン・ポーが立ち向かいます。
もちろん、前作でお馴染みとなった仲間、マチルダ≪ティリー≫・ブラッドショーやステファニー・フリン警部、エドワード・バンジル部長らが登場します。
事件の謎や経緯については、本作か、早川書房さんのnoteを読んでもらう方が良いでしょう。

 

以下には
ファンとして面白かった部分、気になった部分を列挙します。

警察小説としての面白さ


ワシントン・ポーは破天荒ですが、元々は地方の警察官で、現在は、英国の国家犯罪対策庁(NCA)アメリカでいうところのFBIのような組織の重大犯罪分析課(SCAS)に属しています。日本風に言えば公僕なのですね。ですから、ワシントン・ポーシリーズは、警察小説としての楽しみ方もできます。
ただ、イギリスの警察システムはよくわかりません。ポーの部長刑事という役職がまずわからないのです。刑事部長みたいなものなのでしょうか。それにしてはあんまり偉くなさそうです。階級表がほしいです。
しかし、所轄と重大犯罪分析課(SCAS)の関係とか、出世に勤しむ警官がいるとか、上司とぶつかって嫌われるなどは日本の警察小説にもありそうなことです。このわかりにくい所となんとなくわかる所が両方あるのが、ワシントン・ポーの警察小説とそての面白さを引き出していると思います。
日本の警察小説との1番の違いは女性の活躍の度合いでしょうか。管理職の女性がかなり多いのです。

ティリーの成長と年齢の謎


ティリーは、前作の事件から、免許を取得するなど、ずいぶん成長した様子です。箱入り娘だったティリーですが、文字通り、バービー人形が、窮屈な販売用の箱から取り出されたようです。前作の冒頭では、オフィスから出て、地方に行って捜査するのにも緊張していたのに…と思い返すと、素晴らしい成長です。とは言っても、データ処理の天才であることに加えて、天真爛漫さ、率直さは相変わらずです。
ティリーが可愛らしいので、
ティリーがポーの愛犬であるエドガーと遊ぶ様子や
ティリーとポーが事件現場である「バラスアンドスロー」で高級なランチを食べる場面は、
事件の真相に関係なく楽しんでしまいました。
ポーの高級ランチに対する講評も面白かったですが、やはりティリーが可愛らしいのです。
おばあちゃんが孫を見る眼差しに近いかもしれません。ティリーには安全に楽しく暮らしてほしい…と、一読者として切に願います。

しかし、ティリーって年齢何歳くらいでしょうね。ちゃんとした記載がどこにあったか思い出せず、いつも20代前半で想像してしまうのですが、ポーは「自分とそこまで歳は変わらない」みたいなことを言っていた気もします。いや、そもそもポーは幾つなのでしょう。読書眼鏡が必要な歳であるという場面が今回は出てきます。ポー、老眼が始まっているのね…。45歳と描写されていたような気もします。45歳なら老眼が始まるのは全くおかしくはありません。
だとすると、ティリーは30代くらいなのかしら…。ステファニー・フリン警部と年齢は変わらないくらいなのでしょうか。ティリーは姉というか母のように慕っていますが。
まあ、作者が謝辞で、「ストーンサークルの殺人での記述だとポーは11歳で、警察に入ってしまったことになると指摘された」と書いていたので、年齢はざっくり考えておくので良いのかもしれません。あまり目くじらを立てないで読む方が楽しい気もします。

新キャラ登場


今回登場した女性陣、ポーに土地を売ったトマス・ヒュームの娘や天才観察医、エステル・ドイルは魅力的で、もしワシントン・ポーと何かあるのかしら、あったらどうしようなどと思ったのですが、それは杞憂でした。
クレイヴンは芯の強いキレものの女性キャラクターが好きなのだと思われます。
特に、エステル・ドイルは個性的で美人なキャラクターで、映像化する場合は、かなり人気が出そうです。
だってゴスメイク、セクシーな毒舌(読み手は男性ですがとっても色気がある読み方!!)と、ピンヒールの美人観察医ですよ。しかも素晴らしく仕事ができて、ポーに一目置いています。こんな美味しいキャラクターなかなかないと思います。ティリーとは真逆の魅力です。今後も出てきてほしいです。

ジャレド・キートンの悪辣さ


前回は犯人に色々と同情するところもあったのですが、今回の犯人は思いっきり嫌なやつです。調べれば調べるほど嫌なやつなので、思いっきりポーを応援できます。
しかし、インフルエンサーでシェフでCEOの人ってそこそこいると思うのですが、あんなにはっきりとサイコパス認定してしまって良いものでしょうか。日本だと炎上しそうです。まあ、言いたいことはすごくわかるのですが。

地図の楽しみ


英国に土地勘がないので、地名や高速道路が全くわからず、スマホの地図アプリで調べながら読んでいます。行ったことのない土地を調べるのは、面白いです。M6号線をなぞったり、ケンダルという町を調べたり、シャップウェルズホテルは実在するので、その近くにあるハードウィッククロフト、ポーの家はどのあたりだろうと地図の上を行ったり来たりしています。
いつか英国に行ってみたいものです。

ポーの出生の秘密


今作で明らかになるのか?と思いきや、軽く匂わせただけで終わりました。これからシリーズをかけて解き明かしていくことになるのでしょうか。それならシリーズはもうしばらく絶対続くと言うことかもしれません。
それはとても楽しみです。
個人的には、「ポーの出生にまつわる出来事が辛いものであっても、その後、様々な愛なあったから、ポーには正義感と愛がある」と設定されている気がするのです。辛い出生の秘密が明らかになっても、ポーに残る愛がありますようにと祈っています。

謝辞が面白い!


M.W.クレイヴンの謝辞はこれまで読んだ中でもとびきり面白いものです。
「謝辞が面白いってどういうこと?」と思われると思いますが、まあ読んでみてください。
Audibleで聞くと感情をたっぷり込めて読んでくれるのでなおさら面白いです。緊迫感のあるストーリーの最後に謝辞があることでふっと緩んで、明るい気分になる気がします。M.W.クレイヴンはサービス精神が旺盛なタイプなんでしょうね。

今後も楽しみ!

感想を書いていたら止まらなくなってしまいました。
第3作は実はAudibleで書き終わっています。第4作は紙の本を買いました。
英国では出されているらしい、ワシントン・ポーの短編集の出版もしてほしいと切に願っています。
第4作まで読んだら、1〜3作を紙の本で買いなおし、付箋をつけながら読み直して、ワシントン・ポーとティリーの年齢を確認するための年表を作ろうかしら…と考えているくらいです。

秋の夜長におすすめのシリーズです。
それでは、また。


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