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最後の時間たち 《さよなら商業デザイナー(21)》

── 前回「すべては感謝に変わるまで」の続きです

「1年間もかかってしまいました。」

2017年の1月に「さよなら商業デザイナー」という文章を書き始めてから、1年後の最近です。1年前のそれらの文章は乱文手記として2017年3月末日を引退日と定めて書いたものだったのですが、実はその時点でのご依頼によって、現在もまだ継続しています。そのため完全引退として再度定めさせていただいたのが2018年3月です。

結局、完全に引退できるまでにちょうど1年もかかってしまった私が、ここにいます。


現在、2018年の1月も後半です。月日は年齢を重ねるごとにどんどん速く感じるものですね。結局、延びに延びてしまった私の商業デザイン引退劇も、あと約2ヶ月となりました。お勤めの方なら、このあたりで有休消化って感じなのでしょうけれども、自分で経営しているとそうもいきません。

面白いというしか言いようがありませんが、引退するだけのことにまさか1年もかかってしまうとは予想を遥かに越えて、現実社会をしみじみ感じる機会をいただいたと、これまた感謝するしか、自分を納得させる方法はありませんね。

まぁ、確かに経営というものはそんなものなのでしょう。倒産だとか解散だとかするにも大変な時間と費用や労力がかかってしまうものです。とか書いていますが、私は別に事業を辞めるとは一言も言っていませんからね(笑)まぁ、そのように捉えられてしまう方も実際多いですが、そんな対人における様々な出来事や反応、それもまた、そこから学ぶものが多くあるものです。

1年前は、引退について多くの言葉を書いていた私ですが、それからは静かにしていたつもりです。あと2ヶ月、静かにしていたいと今も思っています。あと僅かな仕事を残すのみです。しっかりと納められるように、1年前に書いた「感謝に変わるまで」という感じで、本当に感謝の気持ちで終えるために、この1年間、延びに延びたのもその為で、自分なりに頑張って来たつもりです。


新年を迎え、あと3ヶ月というのは、確かにもはや消化試合的な、最後のまとめや、ご挨拶や、申し送りや、なにかのトラブルに対しての備えとしての待機期間でもあるのですが、それとは別に僅かですが制作案件もまだあります。予定では、2月中から3月の初旬までには、すべての案件を終える予測でいます。

その後は、身内の絡みや自分自身の制作は、続いていきますが、それはもう別の話で、4月には、やっと新たな動きに踏み出せることとなります。「まいったなあ1年も遅れちまった」という気持ちも無いわけではないですが、それ以上の経験上の学びを得た1年間だったと感じています。

まぁ、すべては終えてから、なんかを話し出すことでしょう。それこそ、この1年のことは、たぶん、もっと時間を置いて数年後にならないと話すことはできないだろうと思っています。一言で言うと、この1年「人間ってスゲーなー... 」って、良くも悪くもすべてに感じる1年でした。

同じ引退でも、安室さんや小室さんなどとは、規模が違いますが、きっとあのお二人も「人間ってスゲーなー... 」って、きっと思っていると思います。個人的には、小室さんにはまたいつか戻って来られることを望んでいますが、私はきっと二度と戻らないでしょう。

商業社会の中に密に身を置いた期間として、ここで一度さよならをして、その後は、それらを活かして、また、はじめましてって感じで、はじめたいですね。なにかを1から。それまではしばらく、潜伏期間のような時間を過ごすと思っています。あとは、頭の片隅で「別の名前」なども考えたりしながら、今を過ごしています。


それにしても、ここまで1年もかかるとは思ってもみませんでした。こんなことになるとは、1年前には想像もしていなかったです。

しかし、なんとなくですが、1年前の当時にはわかっていなかった「私はなににさよならするのだろう」ということ。それが、1年かかってやっと「自分がさよならするもの」がわかってきた自分が今はかなり確実にいます。
あとね。やっぱり怖いものですよね。一番の収入源でもあった事業を辞めてしまうこともそうですが、あとはやっぱり年齢的な部分もやはり怖いです。しかし、年齢的な部分で言うと、逆にいまがそういう時期だよなってことも素直に思うんですよね。

様々な人それぞれの人生がありますが、私の場合はやっと、四十路からの「正道に戻す」っていう気持ちがあります。

だから出来る限り静かに穏便に感謝の気持ちで去るためにも1年もかかってしまいましたし、引退の気持ちが大きく湧き出てからはもう5年以上も経っていますし、そもそも、違和感を覚えていたのは既に20年も前からでしたので、やっとこれから自分を生きることをはじめるような気持ちも、可笑しいですが、心にはあるんです。


そんな感じの現在なのですが、2月の節分辺りまでは、結構超多忙なので、その後から最終オーダーに取りかかろうかなという時点です。なので、ボソボソ書いているわりには、実は、せかせかとした時期ではありますが、最後までこれまでの自分として、その時点までは、商業デザイナーとしての思考で遂行するように、力を込めて制作をおさめ、晴れて退こうと思います。


20年ぶりの「休み」

ここ最近は、ある意味で仕事漬けの日々をおくっていました。満了まではあと5日間ありますが、ここまでくるとこうしてようやく少し他のことに時間もとれるようになってきます。

ある意味で最後の一ヶ月は、最終章に相応しく寝る間も削りながらの集中したひと月でした。しかしながら、良いひと月だったと思えます。

とはいえ、残りもあと僅か5日間となった今日からは、また別件が大スタートします。毎年この時期からスタートするある事柄なのですが、今年はあと5日で委託デザイン事業を完全に終えるので、ある意味で今回からは新たな気持ちでこれからの日々がスタートする感じです。

できればインターバルを置いて、静寂を感じるかのように最後の日を迎えて、ちゃんとゆっくりと整理整頓をしながら見送りたかったのですが、物事はいつもこのように、頭とお尻が食い込んで重なって、移っていくのですよね。そういうもんなんですよね。仕方が無い。


とは言え、基本はフリーで自分ひとりで動いてきましたから、ここ約20年くらいは、気持ちの中では仕事から離れることが無かったので、インターバルにずっと憧れていました。用事や仕事というものは、面白いように繋がるもので、ひとつが終わろうとすると、途端に次のなにかが入り込んで来る。

思えば、ちいさなことでも、長期間のゆったりとしたプロジェクトだったとしても、また時には大赤字になるようなことだとしても、仕事が無かった日は、まず無かった20年間でした。これは本当に有り難いことです。

特に営業活動などもせずに、自社の宣伝などもまったくもって行わずにも、そうこうして人の繋がりで、お仕事をいただいてきたのです。有り難い。


だからその反面、ずっと思っていました。「いつ止まるんだ?」「あぁ〜いつか完全に一度、休みというものに出会いたい」と。

友人にもデザイナーだったりで、企業にお勤めだったりで、たまに会ってお酒を飲んだりもしましたが、やはりお勤めの方だと日曜日とか、完全に休みの気分でいられるようで、とても自分との違いにいつも羨ましいものだなぁと、思っていました。

その逆では、これもまた友人の社長は、毎晩酒を飲まなければ眠れないという人は結構多かった。年代やキャリアなどにもよりますが、こういう代表やひとり事業の方は多いですよね。私もその気持ちはとてもわかります。


昨年あたりだったかな、とある組織の従業員というか若手の社員の方が、自社の代表のことを話していて「あの人は自営業だから、あまいんだよ…」と、言い放っていた場面に出会いました。

ああ、いつの世も、雇用される側というのはこの程度の視野しかないのだなぁと、その発言にとても驚きながらも呆気にとられましたが、まぁ、そうしてここ30年くらいで社会は保障や補償によるマジックにかかってしまった国民が多くなってしまったのも、ある意味で平和な国家の証でもあるのでしょう。

簡単な例で言うと、以前社会が大きく変わった「週休二日制度」も今ではそれにも慣れてしまった人達。こういう人はきっとどんなところで働いても、そこはすべてブラック企業にしか捉えられないことだと思います。そこに来てまたこれからも、働き方改革だとかで、自分の人生なのに他人に「休み」を決められるだけでなく、こんどは自分の「働き方」までも決めてもらうことになるのでしょうね。

って、また話が脱線していますね。


20年ぶりに「今日は仕事がないぞ!」という日を、やっと迎えられそうです。でも、実際は他にも今後の案件は複数あるのですが、ここで言っている仕事というのは「お客様からの委託事業」という業務のことです。

社会人的に言えばこれは「休み」になるのでしょうけれどね。私個人としての観念だとちょっと違うのですよね。俗に言うそんな「仕事」という意識も私は少し違っているんです。まぁ、そういうことを今が明けたら、少し書き出してみるのもよいかもしれませんね。

ある意味で、20年間越しの夢が叶いますね。まずは、随分と忘れてしまったかのような素の自分を思い出そうと思っています。

こういう風に述べてしまうと、そんなに仕事が嫌だったの?と、思われてしまうかもしれませんが、好きじゃないのにこんなに続くはずがないですよね。この最後の一ヶ月は特にそれを感じましたよ。「ああ、オレはこの仕事が好きなんだな」って。一言で言って、やはり最後は心から感謝しかないものですよね。

では、まだそんな仕事の途中ですので、今日はこのへんで^^

つづく ──

20180326 8:00


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