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【読書ノート】34「最悪の予感: パンデミックとの戦い」マイケル・ルイス

2021年全米ベストセラー作品。米国の感染症対策のドキュメンタリー。新型コロナウイルスの話は本書の後半からで、前半は感染症対策に携わる人々の前日譚が描かれている。新型コロナウイルス流行語に日本にもCDC (疾病対策センター)を作るべきという議論が起きたが、本書ではCDCがリスクを軽視し感染症対策の中心とならず、むしろ先見の明のある地域の保健衛生官など複数の異端者たちが様々な効果的な対策を行った過程が描かれている。

「バータは連邦政府に勤めていたころ、技術的な危機を次々に乗り越えなけれればならなかった。そうするうち、ある不思議な法則に気づいた。どんな大きな組織でも、危機を解決するのは、おおやけ重要な地位を占める人物ではなく、組織ピラミッドのずっと下にいる無名の従事者であることが多い、という法則だ。」p299

「ジョー・デリシは感染症の制御方法に革新をもたらすであろう最新の武器に、CDCがいかに無関心か思い知った。しかし、公衆衛生において厳しい決断を下す必要性が消えたわけではない。決断の責任は、システムの下層部、つまり地域の保健衛生官に押し付けられた。社会的な立場が弱く、何かと避難を受けやすいものの、人命を救いたいのであれば、地域の保健衛生官は重責から逃れられない。」

(2023年1月5日)


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