U-NEXTオリジナル書籍

動画配信サービス「U-NEXT」オリジナル書籍のnoteです。 U-NEXTが手がける…

U-NEXTオリジナル書籍

動画配信サービス「U-NEXT」オリジナル書籍のnoteです。 U-NEXTが手がけるオリジナル書籍の紹介を中心に、本にまつわる様々な話をお伝えします。 https://video.unext.jp/book/originals/book

マガジン

  • 高瀬隼子さんエッセイ「こわいものをみた」(月1連載)

    小説家・高瀬隼子さんのエッセイ連載が始まります。 連載タイトルは「こわいものをみた」。 タイトルのとおり、ホラー好きの高瀬さんが日々感じた「こわい」をテーマしたエッセイです。 毎月第4金曜日更新。初回は5月24日です。 (バナーイラスト・デザイン:三好愛さん)

  • 試し読み / U-NEXTオリジナル書籍

    U-NEXTオリジナル書籍に関する「試し読み」を集めました。ぜひお気軽に手にとっていただけるとうれしいです。

  • 水戸部功さん 連載「装幀苦行」

    『これからの「正義」の話をしよう』のデザインなどで知られる、装幀家・水戸部功さんによる「デザインとは?」「装幀とは?」を考える連載です。

  • 書評 / U-NEXTオリジナル書籍

    U-NEXTオリジナル書籍に関する「書評」を集めました。選者のみなさんがどう物語を読んだのか、さまざまな視点をお楽しみください。

  • 著者インタビュー / U-NEXTオリジナル書籍

    U-NEXTオリジナル書籍に関する「著者インタビュー」を集めました。著者のみなさんがどう物語を紡いだのか、ぜひご覧いただけるとうれしいです。

最近の記事

「こわいものをみた」2 好きがこわい(高瀬隼子)

 こわいものが好きだ。もういろいろ無理しんどいストレスフル……と爆発しそうな日は、書店に行って角川ホラー文庫の真っ黒な背表紙を眺め、ぐっときたタイトルの本を買って帰り、風呂に入りながらそれを読む。湯舟の蓋を半分閉めて、その上に水とホラー小説と、調子がいい時は酒も並べる。風呂ホラー小説には日本酒があう。  汗をだらだらかき、湯から出たり入ったりを繰り返して数時間かけて本を読む。うちのマンションの風呂場には窓がないせいか、朝でも昼でもどことなく夜の感触がする。家の中で一番静かな場

    • 【試し読み】井上荒野さん 『小説みたいなことは起こらない』

      ■あらすじ ■本文  羽多野健太  茉莉子さんが雪の写真を撮っている。  昨日から降り続いている雪はすでに五十センチ以上積もっていて、今朝は吹雪いてもいるので、窓からの眺めは白一色だ。何を撮ったのかわからない写真になりそうだ。そもそも、茉莉子さんは写真を撮ってどうするつもりなのだろう―見せる相手は僕しかいないのに。  僕は自分のカップに、コーヒーサーバーに残っているコーヒーを注ぎ足す。カップの三分の一ほどしかない。これを飲み干し、テーブルの上のものを片付けたら、朝食は終

      • 「こわいものをみた」1 編集者がこわい(高瀬隼子)

         みなさんは、編集者という職業の人に会ったことはあるだろうか。わたしは31歳で初めて会った。小説家デビューを目指して新人賞に応募した小説が最終候補に残った時だ。待ち合わせ場所の喫茶店へ向かうわたしはガチガチに緊張していて、真夏だというのになぜだか直前に新調したジャケットを着こんでいた。脇汗も背中の汗も大変なことになっていた。測ってはいないけれど、知恵熱くらい出していたんじゃないかと思う。  子どもの時から小説が好きだったから、編集者という存在にも自然と興味を持って憧れていた。

        • 冒頭大公開【試し読み】奥田亜希子さん『ポップ・ラッキー・ポトラッチ』

           相田愛奈の将来の夢は、総理大臣になることだった。  小学生のころの愛奈はニュースを観るたび腹を立てていた。相田家のテレビは父親の意向で、朝は民放ではなくNHKの番組を映していた。三歳下の妹が四年生になり、あたしも占いとか「きょうのわんこ」とか観たい、と訴え、妹に甘い父親がそれを受け入れるまでその習慣は続き、つまり、小学生の愛奈は納豆をかき混ぜたり口の端から歯磨き粉を垂らしたりしながら、国会や裁判所や避難所や事故現場や紛争地域の映像を毎日のように眺めていたことになる。そして、

        「こわいものをみた」2 好きがこわい(高瀬隼子)

        マガジン

        • 高瀬隼子さんエッセイ「こわいものをみた」(月1連載)
          2本
        • 試し読み / U-NEXTオリジナル書籍
          43本
        • 水戸部功さん 連載「装幀苦行」
          2本
        • 書評 / U-NEXTオリジナル書籍
          25本
        • 著者インタビュー / U-NEXTオリジナル書籍
          8本

        記事

          「The Miracle of Teddy Bear」をもっと楽しむ!著者Prapt×訳者福冨渉インタビュー

          タオフーが生まれるまで 福冨:ということで、ついに『The Miracle of Teddy Bear』[以下『テディベア』]の日本語版が発売されますね。タイ語版の出版が2019年の5月だったので、翻訳にだいぶ時間がかかってしまいました。ごめんなさい。 プラープ:大丈夫、分厚いからしょうがない(笑)。 福冨:もともとは、ウェブサイトで連載された作品なんですよね? プラープ:はい。ただこの作品は、先に初めから終わりまでを書き上げてから、章ごとに掲載していってもらうように

          「The Miracle of Teddy Bear」をもっと楽しむ!著者Prapt×訳者福冨渉インタビュー

          30歳までに読みたいお仕事小説|『レイアウトは期日までに』書評(評者:朱野帰子)

          「社会に出た当初は、三〇歳までにひとかどの人物になりたい、なんて思っていたけど、現実にはまだまだ中途半端だ」  本書を読みはじめてまもなくこの一文に出会い、30歳手前の自分を思い出した。 『レイアウトは期日までに』の主人公の赤池めぐみは27歳、デザイナーをめざしていて、実用書系の中堅出版社で契約社員をやっている。文字の修正やデザインの直しなどのオペレーター的な仕事から始め、ようやく単行本のデザインもまかされるようになってきたところで、事業縮小により、あっさりリストラされてしま

          30歳までに読みたいお仕事小説|『レイアウトは期日までに』書評(評者:朱野帰子)

          【試し読み】寺地はるなさんの連作シリーズ第6弾『焼き上がるまで』

          ■著者紹介■あらすじ■本文1 グラタン皿に有塩バターを塗ります。にんにく一かけをすりおろして、これもまた皿に塗ります。  こんにちは。あたしの名前は愛里咲です。たまに「それって源氏名でしょ? 本名を教えて」なんて言うひとがいます。でもこれ、れっきとした本名です。谷川愛里咲。住民票を見せてあげてもいいですよ。  自己紹介からはじまるレシピを読むなんてはじめて、というかたも多いでしょう。でも、どこの誰なのかもわからない人間のレシピで料理をつくる気にはならないんじゃないかなと思

          【試し読み】寺地はるなさんの連作シリーズ第6弾『焼き上がるまで』

          【試し読み】井上荒野さん 『つまらない掛け時計』

          ■あらすじ ■本文   伊藤海晴  赤いニットのワンピースを脱がせると、繊細な白いレースのランジェリーがあらわれた。身につけているのは、どちらかといえば黒とか紫の方がしっくり似合う女だが、こういう清純な花嫁みたいなのも悪くない。なにより、郁佳が自分のためにこれを選んだのだと思うのはいい気分だった。伊藤海晴の欲望は十分に膨らんだ。四十六歳の彼にとって、それが十分に膨らむというのは重要なことだった。  自分もボクサーショーツ一枚の姿になり、郁佳に覆いかぶさったとき、椅子にか

          【試し読み】井上荒野さん 『つまらない掛け時計』

          おじいちゃんに恋人が!?【試し読み】坂井希久子さん 『祖父の恋』

           一 「ねぇ、お願い。どうにかお祖父ちゃんから、話を聞き出してくれない?」  電話越しの母の声が、哀願口調に切り替わる。さっきまで鼻息も荒く怒り狂っていたのに、唐突な転調だ。  指の産毛を抜きながら話を半ば聞き流していた若菜は、思わず「えっ!」と叫んでしまう。その拍子に、毛抜きで少し肉をつまんだ。  チリッと軽い痛みが走り、毛抜きを手放す。肩と頰で挟んでいたスマホを手に握り直し、反論した。 「なんで私が。一緒に暮らしてるんだから、お母さんが話しなよ」 「無理。こんなこと、お

          おじいちゃんに恋人が!?【試し読み】坂井希久子さん 『祖父の恋』

          読了まで約15分。冒頭の12,000字大公開!【試し読み】碧野圭さん ブックデザイナー小説『レイアウトは期日までに』

          1 「詰んだ」  赤池めぐみは、思わずそうつぶやいた。自宅アパートのドアスコープから見えるのは、初老の女性、めぐみのアパートの大家だった。大家はめぐみの部屋の下に住んでいる。 「赤池さん、いらっしゃるんでしょう? 外まで聞こえましたよ。開けてください」  そこまで言われると、ごまかしようがない。めぐみは溜め息をひとつ吐くと、ゆっくりドアを開けた。 「お邪魔しますよ」  大家は玄関のたたきに立った。かろうじて人ひとり立てるくらいの狭い玄関だ。  大家が二階のアパートに来たのは

          読了まで約15分。冒頭の12,000字大公開!【試し読み】碧野圭さん ブックデザイナー小説『レイアウトは期日までに』

          1/13高瀬隼子さん「め生える」刊行記念イベント@紀伊國屋書店新宿本店レポ

          高瀬:今日は来てくださって本当にありがとうございます。嬉しいです。いざ会場に入って皆さんをみたら急に緊張して手汗が……。  ——今日のこの「め生える」という本は1月6日に発売されたばかりですが、もう読まれた方はいらっしゃるでしょうか? 高瀬:あ、ちらほらいらっしゃいますね。まだ発売して一週間なのに。ありがとうございます。でもこのイベント、読んでなくても全然大丈夫なので、お気になさらず。  ——ネタバレというのはほとんどないですよね。 高瀬:そうですね。みんなはげる話な

          1/13高瀬隼子さん「め生える」刊行記念イベント@紀伊國屋書店新宿本店レポ

          デジタル⇒アナログ⇒アナログ⇒デジタル 手数がすごい!落合晴香さんのイラスト制作の舞台裏

          まずは、こちらをご覧ください。 既にお手に取られた方もいらっしゃるのではないでしょうか。 1月6日に発売されたばかり、高瀬隼子さんの新刊『め生える』、その表紙絵の全貌です。 これ、ラフと本画でまったく印象が異なるんです! その驚きの変貌ぶりと、描きだした落合晴香さんの緻密で目の回るような制作過程を紹介します。 打ち合わせからラフまで「せっかくみんなハゲたのに」と帯にあるように、ハゲがテーマの本作。 デザイナーの森敬太さんが考えた装丁プランは、直接的に頭皮や人物を描くので

          デジタル⇒アナログ⇒アナログ⇒デジタル 手数がすごい!落合晴香さんのイラスト制作の舞台裏

          『め生える』書評|高瀬さんは、容赦がない(評者:加納愛子)

          容赦がない。 高瀬さんの小説を読んで、そう思うことは私にとって喜びの一つだ。 しかし今回は、手放しで喜んでいる場合ではない。 みんなハゲる。 世界中の人間が、成人すると髪の毛が抜けるようになる。原因がわからないまま、ハゲである自分と他者の存在を認識することが日常化する。でもその日常は、頭皮とウィッグの間のように湿度があって、乾いておらず、息苦しい。主人公の真智加も、中学生の琢磨も、友人との関係の中で心に髪が絡みつく。そして変化が訪れる。 ルッキズムという言葉が世の中に浸

          『め生える』書評|高瀬さんは、容赦がない(評者:加納愛子)

          ●発売後即重版●冒頭大公開!【試し読み】高瀬隼子さん『め生える』

           汗をかくと、はげが目立つ。髪と髪がくっついて頭皮が露わになるのが嫌で、汗がひくまでトイレの個室にいた。ハンカチで頭と首と、耳の裏を拭いた。滲んだにおいがする。案内された三畳ほどの広さのブースは、クーラーが効いていて涼しい。約束の時間の十五分前にこのビルに到着し、違うフロアのトイレで息を整えてからやって来た佐島には、すこし肌寒く感じられるくらいだった。  佐島は木目調の椅子に腰かけ、同じ柄のテーブルに両手を置いた。尻の下がほんのり暖かかったので、直前まで別の客がいたのかもしれ

          ●発売後即重版●冒頭大公開!【試し読み】高瀬隼子さん『め生える』

          【試し読み】井上荒野さん『犬の名前』

          ■著者紹介 ■あらすじ ■本文  野副圭介  最初は小さな違和感だった。尻の周辺の、なんとなく熱っぽい感じ。これが「痔」というやつだろうか、だが還暦を過ぎて仕事を縮小し、座り仕事が以前ほどではなくなった今になって、そんなものになるかなあと思っていた。痛みはなかったので様子を見ていたのだが、そのうち手で触ってもわかるくらい腫れぼったくなってきて、こりゃあ何か黴菌でも入ったのかもしれないと、病院に行ったのだった。  ふたつ先の駅に近い総合病院の外科に、妻の萌子の旧知である

          【試し読み】井上荒野さん『犬の名前』

          書店訪問記①高久書店「やれることは全部やる」

          一階店内 こだま新幹線で東京から約一時間半。静岡駅からは在来線で45分の掛川駅で下車し、掛川城方面に五分ほど歩くと、青い外壁が目印の高久書店さんへ到着です。 土曜日の午前11時。信号を渡ってお店へ向かおうとすると、ちょうど母娘と思しき二人組のお客さんが入店されました。お邪魔にならないよう少し時間を空けよう。お店を通り過ぎ目の前の掛川城をぼーっと眺め、河川敷を歩き、いざ今度こそ「こんにちはー」と扉を開けると、先ほどのお客さんが買い物や高木さんとの会話を楽しそうにされている真

          書店訪問記①高久書店「やれることは全部やる」