U-NEXTオリジナル書籍

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動画配信サービス「U-NEXT」オリジナル書籍のnoteです。 U-NEXTが手がけるオリジナル書籍の紹介を中心に、本にまつわる様々な話をお伝えします。 https://video.unext.jp/book/originals/book

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  • 試し読み / U-NEXTオリジナル書籍

    U-NEXTオリジナル書籍に関する「試し読み」を集めました。ぜひお気軽に手にとっていただけるとうれしいです。

  • 書評 / U-NEXTオリジナル書籍

    U-NEXTオリジナル書籍に関する「書評」を集めました。選者のみなさんがどう物語を読んだのか、さまざまな視点をお楽しみください。

  • 連載「装幀苦行」

    『これからの「正義」の話をしよう』のデザインなどで知られる、装幀家・水戸部功さんによる「デザインとは?」「装幀とは?」を考える連載です。

  • 著者インタビュー / U-NEXTオリジナル書籍

    U-NEXTオリジナル書籍に関する「著者インタビュー」を集めました。著者のみなさんがどう物語を紡いだのか、ぜひご覧いただけるとうれしいです。

  • note「#読書の秋2021」感想文

    note「#読書の秋2021」にて、U-NEXTの課題図書について書いていただいた記事をまとめています。

最近の記事

【試し読み】井上荒野さん『犬の名前』

■著者紹介 ■あらすじ ■本文  野副圭介  最初は小さな違和感だった。尻の周辺の、なんとなく熱っぽい感じ。これが「痔」というやつだろうか、だが還暦を過ぎて仕事を縮小し、座り仕事が以前ほどではなくなった今になって、そんなものになるかなあと思っていた。痛みはなかったので様子を見ていたのだが、そのうち手で触ってもわかるくらい腫れぼったくなってきて、こりゃあ何か黴菌でも入ったのかもしれないと、病院に行ったのだった。  ふたつ先の駅に近い総合病院の外科に、妻の萌子の旧知である

    • 書店訪問記①高久書店「やれることは全部やる」

      一階店内 こだま新幹線で東京から約一時間半。静岡駅からは在来線で45分の掛川駅で下車し、掛川城方面に五分ほど歩くと、青い外壁が目印の高久書店さんへ到着です。 土曜日の午前11時。信号を渡ってお店へ向かおうとすると、ちょうど母娘と思しき二人組のお客さんが入店されました。お邪魔にならないよう少し時間を空けよう。お店を通り過ぎ目の前の掛川城をぼーっと眺め、河川敷を歩き、いざ今度こそ「こんにちはー」と扉を開けると、先ほどのお客さんが買い物や高木さんとの会話を楽しそうにされている真

      • 【試し読み】弟の将来だけが希望持てるかも・・・朝倉かすみさん『非常用持ち出し袋』

        ■著者紹介 ■あらすじ ■本文  1    小豆沢芙実は嬉しかった。  さっきから目尻に笑みがたまっていた。口元もほころんでいる。  喉を伸ばし、空を仰いだ。午後四時を過ぎていたが、三月の空はまだ青かった。どこもかしこもきっぱりと澄んでいる。  息を吸うと胸いっぱいに明るさが広がった。真っ白なシーツを思い浮かべる。物干し竿にかけ、洗濯ばさみで留めたシーツだ。  大きな風が吹いてきて、芙実の前髪をやさしく煽った。シーツも風をはらみ、太っちょのお腹のようにふくらむ。と、どこ

        • 【試し読み】森晶麿さん『うどんリープ—香川に帰ったらタイムリープから抜けられなくなった件—』

          ■著者紹介 ■あらすじ 大学進学を機に郷里の香川を出、東京の企業に就職した達也はある日縁談を進められる。乗り気になったものの、地元には遠距離恋愛中の恋人がいた。大型連休の金曜に香川へ帰省し、別れ話をするはずが、気がつくと帰省最終日の日曜朝になっている。何とか恋人に別れを告げるものの、時間はなぜか金曜夜に戻ってしまい、やり直しの会話の中で、達也は恋人の秘密に気づく。本当に彼女とは終わりなのか。達也の本当に望む未来はどこに——? ■本文 1 四月三十日 日曜日──困惑  

        【試し読み】井上荒野さん『犬の名前』

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          『うどんリープ―香川に帰ったらタイムリープから抜けられなくなった件―』書評|故郷と都会の時間の差(評者:要潤)

          読み始めた時、まさか自分自身のストーリーが描かれているのかと思った。 高校卒業を機に故郷を出て、都会の喧騒に紛れながら仕事もプライベートも関係なく、どんどんと都会の垢が身に纏わりつき、自分を見失いそうになった時、思い立つとよく故郷に帰省した。地元香川県は海と山の距離が近い。実家に向かう海岸沿いにある浜街道なんかを車で走り、目の前に広がる瀬戶内海の水平線をぼんやり眺めていると、穏やかな波が静かに自分の身体にこ びりついたその垢を洗い流してくれるような気がした。 本書の物語の

          『うどんリープ―香川に帰ったらタイムリープから抜けられなくなった件―』書評|故郷と都会の時間の差(評者:要潤)

          偏愛本紹介9月 悩ましい本

          地球温暖化を感じずにはいられない猛暑も過ぎ、少しばかりではありますが、過ごしやすい時間も増えてきました。その代わりに湿度が不快感を補っている気がしなくもないですが…。 今年の月見系商品も出揃い、金木犀の香水がウィンドウにならび、いよいよ秋が来る…!という期待が徐々に高まるこの頃。 夜更かしにぴったりな、悶々とさせるとっておきの本をご紹介します。 ※ピンクな悶々ではないです。悪しからず。 金庫破りときどきスパイ 主人公が錠前破り。それも義賊でもなく、戦時下の空き巣を家族ぐ

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          『The Miracle of Teddy Bear』翻訳者福冨渉さんによる訳者解説

          『テディベア』をもっと楽しく読むために  Prapt『The Miracle of Teddy Bear』をお読みいただき、ありがとうございました。訳者の福冨渉です。海外文学の翻訳では、作品の終わりに続いて、訳者による解説が載ることがよくあります。もちろん本作は、それそのものでエンタメ小説として楽しむことができます。ただ、お読みいただくとわかるように、物語のそこかしこに、タイの社会・政治・歴史的な文脈を理解していないとわかりにくい部分も見られます。以下では、本作の訳者解説あ

          『The Miracle of Teddy Bear』翻訳者福冨渉さんによる訳者解説

          『コンビニエンス・ラブ』書評|矛盾とともにある“アイドル”について今こそ考える本(評者:西森路代)

          映画『バービー』の中で、バービーと彼氏のケンの共通の友人であるアランという登場人物がいる。彼は、人間社会にふれてトキシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ)に染まってしまったケンについていけず、バービーたちと行動をともにしていた。 アランは劇中、「イン・シンクはみんな僕なんだ」と言っていた。そのあとさらに、「ほかの彼らも…」と続けていたところを見ると、アイドル的な人気のあるボーイバンドのメンバーは、アランのように有害な男らしさとは無縁の存在であり、また女性と行動をともにす

          『コンビニエンス・ラブ』書評|矛盾とともにある“アイドル”について今こそ考える本(評者:西森路代)

          『窮屈で自由な私の容れもの』書評|軽やかな「袋」となれ(評者:桜木紫乃)

           女の体は、自身で守っていないとさまざまなものが入り込んでくる。「おふくろ」とはよく言ったものだ。「お」をつけたって袋は袋、入り口だけで出口がない。 「女」と名付けられた袋を、作者は「窮屈で自由な私の容れもの」と呼ぶ。タイトルとしてこれ以上のものはないだろうと、ラスト一行まで息を詰め読んだあとに思った。  現実の痛みは忘れても、神経から遠いところに鈍痛が残っているのは人の常。水ぼうそうのウイルスが疲れとストレスで帯状疱疹に変わるのに似ている。入れるばかり入れて追い出す機能がつ

          『窮屈で自由な私の容れもの』書評|軽やかな「袋」となれ(評者:桜木紫乃)

          【試し読み】吉川トリコさん『コンビニエンス・ラブ』

          ■著者紹介 ■あらすじ ■本文   ―NEW GAME… 1  灰人の背中で卵が割れた。 「裏切り者!」  空気を切り裂くような金切り声があたり一帯に響いた。その言葉の強さにたじろいで、反応が遅れた。声のしたほうを振りかえると、犯人はすでにこちらに背を向けて走り出していた。薄暮の中でもはっきりと見て取れる、青からピンクへあざやかなグラデーションを描く長い髪。よく事務所の前で待ち伏せしているsisの一人だった。 「おい!」 「愛生!」  とっさに飛び出しかけた俺を、伊央が

          【試し読み】吉川トリコさん『コンビニエンス・ラブ』

          【試し読み】井上荒野さん『不幸の****』

          ■著者紹介 ■あらすじ 所属する劇団が分裂しかけていることを聞いたばかりの沙恵美は、ホームクリーニングの仕事のため、約束の時刻に豪邸に着いた。しかし、家の奥さんは予定を忘れていた様子で、さらに間男らしき男もいる。沙恵美の見立ては正しく、奥さんことるみはある思惑を持って、大学時代の知人男性を招いていた。 不満と憤り、苦境にある、そんな二人の耳に唐突に、暴力的に届いたのは、子どもが悪戯で叫ぶ女性器の俗称だった。 ■本文  石田沙恵美  どこから飛んでくるのか、駅前のロー

          【試し読み】井上荒野さん『不幸の****』

          【試し読み】芦花公園さん『宇宙の家』

          ■著者紹介 ■あらすじ ■本文  これはずっと前に行ったもう行くことはない家の話だ。  その家はとある県の、空港から二時間ほど車を走らせたところにある。  全く開発されていない土地だから何もない。本当に何もないのだ。車道の脇には竹林が生い茂っていて、街灯もなく、夜は走れたものではない。  車道沿いに点々とある文字の消えかかった商店はどこも看板だけ出して閉店しており、店の前には廃車にしか見えないような車が何台か停まっている。  死んだ町ではない。元から何もないのだ。  唯

          【試し読み】芦花公園さん『宇宙の家』

          偏愛本紹介8月 お盆を感じる本

          先月、どこかでゆっくりしたいという母の願いで旅行にいってきました。 「自然が多く、ごみごみしていないところがいいな。 夏だし避暑地? あ、夏休み価格ですね……」 と予約サイトとにらめっこした結果、ふと「琵琶湖がみたい」という衝動に突き動かされ、レイクビューが美しい某ホテルのお世話になりました。 「ゆっくりする」が目的の旅行にもかかわらず、貧乏性の母娘二人旅は気がつけば観光地巡りに朝から大忙し。せめて夜だけはゆっくりしようと、横になってテレビでもとなった時、ある番組の再放送に出

          偏愛本紹介8月 お盆を感じる本

          【試し読み】寺地はるなさんの連作シリーズ第5弾『マッシュルームルーム』

          ■著者紹介■あらすじ■本文 大学がとても広い場所である、ということは啓も知っていた。生まれてからの三十余年とんと縁のない場所だったが、いちおう知識としては知っていた、ということだ。  母は啓を大学に行かせたがっていた。「お金のことなら気にしなくていい」と死ぬ直前まで言っていたが、啓には経済的事情とは異なるふたつの事情があった。ひとつは学ぶことは好きでも人にものを教わるのが大嫌いだという性分。もうひとつは、極度の方向音痴。  啓は額に汗を滲ませ、不織布マスクの下で浅い呼吸を繰り

          【試し読み】寺地はるなさんの連作シリーズ第5弾『マッシュルームルーム』

          『The Miracle of Teddy Bear』書評②|誰かの是ではなく(評者:大矢博子)

          クマのぬいぐるみがイケメン青年に変身して、持ち主の青年と愛し合うBL──と聞いたときの正直な気持ちは、「ちょっと何言ってるかわからない」だった。 さらに読み始めると、のっけから部屋の中の「抱き枕さん」だの「掛け布団おばさん」や「茶色のノートおじさん」だのが会話をしている。児童書? ファンタジー? だが、保証しよう。最初の数ページを読んで抱いたそんな疑問や違和感は、いつの間にかすっかり忘れてしまい、あなたは物語にのめり込むはずだ。そして最初の疑問や違和感こそ著者の企みであり、実

          『The Miracle of Teddy Bear』書評②|誰かの是ではなく(評者:大矢博子)

          【試し読み】『Tonhon Chonlatee』(Nottakorn著/ファー訳)

          ■著者紹介 ■訳者紹介 ■あらすじ ■本文 プロローグ 「いい天気だ」  華奢な腕がベランダと寝室の間のガラスの引き戸を開けると、チョンラティーの形のいい唇から思わず声が漏れ出た。  今朝は本当に天気がいい。  柔らかい光と海からの爽やかな潮風が、この部屋の主であるチョンラティーの気持ちを穏やかにしてくれる。元々今日の気分はよかったが、ますますご機嫌な気持ちになる。  兄のように慕っている隣家のトンと同じ大学に合格したとわかってからこの一週間、チョンラティーはバカみ

          【試し読み】『Tonhon Chonlatee』(Nottakorn著/ファー訳)