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note🔰大阪芸術大学文芸学科卒業/Xジェンダー不定性、性嫌悪、無性愛の当事者/LGB…

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note🔰大阪芸術大学文芸学科卒業/Xジェンダー不定性、性嫌悪、無性愛の当事者/LGBTQ+がテーマの小説書いてます

記事一覧

しんでれら

 この作品は2021年4月頃に書いたものです。時代設定は2020年夏をご想像ください。 しんでれら  足早に大都会のネオン街を歩く。近付いて来る夏の陽気が色濃く残る、現…

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7日前
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君のために(ボツ)

 ゼミ仲間との飲み会の帰り道、イヤホンで音楽を聴いていると突然、曲が止まった。同時にポケットの中でスマホが激しく震えている。  歩みを止め、スマホを手に取る。画…

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2週間前
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君のために

あらすじ  大学生の桂木愛音は、学校に向かう電車内で痴漢に襲われそうになった専門学生の松林奏志を助け、これをきっかけに二人は仲良くなる。  その後、同性愛者だと…

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2週間前
6

前から書いてみたかった。
自分の中から吐き出して、文字に起こして、それを俯瞰して見て。それで、なにも変わらないかもしれないけれど、でもやっぱり彼らには救ってもらった想いの方が強いから。飲み込みたい。
大きな一歩を踏み出せたら、良いな。無理でも、それはそれで、良いかもね。

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1か月前

ひとりごと

 好きだったゲイアイドルがいた。四人組のグループで、自分の人生の中でその四人が、初めての推しになった。  彼らの表現力、それ以上に歌詞に心打たれた。  まるで、…

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1か月前
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ウエディングドレス

 私は、娘のウエディングドレス姿を見るのが夢なの。娘が生まれた瞬間から、楽しみにしてきたのよ。  夫と離婚して、生活が困窮していく中でも、いつか来る娘の最高級の…

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2か月前
3

無題

 手を繋ぎたいとか。キスをしたいとか。抱きしめたいとか抱き合いたいとか。一切想ったことがなかった。  ただ、隣にいたい。一緒の時間を共有したい。綺麗な景色を見た…

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2か月前
4

誕生日

 誕生日は、好きじゃない。寧ろ嫌いだ。  体は女性なのに男性に成りたくて、好きな相手は女性。いわゆる性同一性障害、もとい性別不合の俺は、自分の誕生日の祝い言を素…

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3か月前
1

澄み渡る空の下に、君はもういない。

 岡野辰樹の自室のベッドの下から、遺書が一通出てきた。それは、昨年末に自殺した三歳年上の幼馴染みで同じ同性愛者の、中本直弥の遺書だった。  岡野辰樹は、遺書に書…

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3か月前
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夢の話

 妊娠した夢を見た。  元々月経不順の病気を持っていて、胃腸は万年消化不良でムカムカしている。そのせいで臨月まで妊娠に気付かなかった……というような内容の夢だっ…

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3か月前
1

嘘を塗る

 母から譲り受けたドレッサーに映るのは、奇妙な自分自身の姿。  目を逸らしたいが、そうもいかない。今日は、正装を求められる場に招待されているからだ。コンタクトを…

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4か月前
1

ここでさよなら。

 春風に舞い散った髪を見て、恋に落ちた。細く、柔らかな黒の短髪に、桜の匂いがした。あの衝撃的な出来事から、もう三年になる。  大学も決まり、学年末テストも返却さ…

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4か月前
1

澄み渡る空の下に、まだ僕がいた頃。

・前作「澄み渡る空の下に、君はもういない」のスピンオフ的な感じのやつです。時系列的には本編より前 ・中本直弥目線。長谷川貴春と二人の話 ・土佐弁は似非 ーーーーー…

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5か月前
1

【澄み渡る空(ry】で主人公達が喋ってる土佐弁は、ネットを駆使して勉強して書いたものですが、エセなのと、ルビの関係でめちゃくちゃ読みにくいかもです(許して)
wordの方ではなんとか綺麗になってたんですが

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5か月前
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澄み渡る空の下に、君はもういない(2/2)

 緊張して、痛いくらいの鼓動が耳の中で響いている。ホテルを出ると、それも気にならないくらい、雑踏の方がやかましかったけど。  迷いながらも辿り着いた、長谷川貴春…

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5か月前
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澄み渡る空の下に、君はもういない(1/2)

 いつも、ふと思い出す幼馴染みの顔は、困ったような笑顔だった。  元からアンニュイな雰囲気を纏う、派手とは縁遠い男だった。だけど、昔はもっと表情豊かだった気がす…

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5か月前
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しんでれら

しんでれら

 この作品は2021年4月頃に書いたものです。時代設定は2020年夏をご想像ください。

しんでれら

 足早に大都会のネオン街を歩く。近付いて来る夏の陽気が色濃く残る、現在の時刻は夜の九時前だ。
 大学を卒業し、今年で二十五歳になるのだが、童顔のせいで、よく十代に間違えられる。マスクをしていると余計に幼く見えるらしく、派手な髪色のキャッチが、物珍し気な顔を向けてくる。
「ここ、新宿の街でクラスタ

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君のために(ボツ)

君のために(ボツ)

 ゼミ仲間との飲み会の帰り道、イヤホンで音楽を聴いていると突然、曲が止まった。同時にポケットの中でスマホが激しく震えている。
 歩みを止め、スマホを手に取る。画面には、着信を知らせる画面が表示されている。発信主は奏志だった。
「んー、どした?」
「なんとなく声が聞きたくて」
 耳に直接奏志の声がかかるのがくすぐったい。奏志の向こうから、大爆笑している声が聞こえる。聞き覚えのある芸人の名前も聞こえ、

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君のために

君のために

あらすじ

 大学生の桂木愛音は、学校に向かう電車内で痴漢に襲われそうになった専門学生の松林奏志を助け、これをきっかけに二人は仲良くなる。
 その後、同性愛者だとカミングアウトした松林に「電車で助けてもらった時に一目惚れした」と告白された桂木は、付き合うことにした。
 喫茶店や花火大会など、デートを重ねていく二人。時には同性同士で付き合うということの偏見に直面してしまうこともあった。
 交際を重ね

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前から書いてみたかった。
自分の中から吐き出して、文字に起こして、それを俯瞰して見て。それで、なにも変わらないかもしれないけれど、でもやっぱり彼らには救ってもらった想いの方が強いから。飲み込みたい。
大きな一歩を踏み出せたら、良いな。無理でも、それはそれで、良いかもね。

ひとりごと

ひとりごと

 好きだったゲイアイドルがいた。四人組のグループで、自分の人生の中でその四人が、初めての推しになった。

 彼らの表現力、それ以上に歌詞に心打たれた。
 まるで、心の傷を塞ぐような。そっと傍に寄り添ってくれるような。優しく肩を叩いてくれるような。一緒に笑ったり、泣いたりしてくれるような。
 当時、自分の性をまだはっきりと把握していなかった曖昧な自分には、彼らしかいないと感じた。

 一生推す。死ぬ

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ウエディングドレス

ウエディングドレス

 私は、娘のウエディングドレス姿を見るのが夢なの。娘が生まれた瞬間から、楽しみにしてきたのよ。
 夫と離婚して、生活が困窮していく中でも、いつか来る娘の最高級の幸せを夢見てきたの。
 それなのに。

 座卓で向かい合う娘の表情は、幸せとは程遠い。

「――ごめんなさい」

 そう言うが早いか、娘は座卓の横で、土下座をした。
 娘は、聞き間違いじゃなければ謝る前に、男の子になりたい、と言った。

 

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無題

無題

 手を繋ぎたいとか。キスをしたいとか。抱きしめたいとか抱き合いたいとか。一切想ったことがなかった。
 ただ、隣にいたい。一緒の時間を共有したい。綺麗な景色を見た時、楽しい経験をした時、まっさきに君に話をしたい。そうとしか想えなかった。
 友人に言わせれば僕のこれは、中学生くらいまでの似非学生恋愛なんだそうで、大人が抱く真の愛とはかけ離れているそうだ。
「本当は彼女のこと、好きじゃないんじゃね?」

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誕生日

誕生日

 誕生日は、好きじゃない。寧ろ嫌いだ。

 体は女性なのに男性に成りたくて、好きな相手は女性。いわゆる性同一性障害、もとい性別不合の俺は、自分の誕生日の祝い言を素直に受け止められる余裕が、ない。

 こんな体で、こんな人間として、生まれたくなかったのに。みんながこんな俺の誕生を祝福するから。苦しい。

 かといってたかが俺なんかの為に一生懸命折り紙や粘土を使った工作の作品をプレゼントしてくれる幼い

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澄み渡る空の下に、君はもういない。

澄み渡る空の下に、君はもういない。

 岡野辰樹の自室のベッドの下から、遺書が一通出てきた。それは、昨年末に自殺した三歳年上の幼馴染みで同じ同性愛者の、中本直弥の遺書だった。
 岡野辰樹は、遺書に書かれていた「恋人の長谷川貴春に会いに行ってほしい」という願いを叶えるため、地元高知県から神奈川県に向かう。
 岡野辰樹と長谷川貴春は、お互いの中本直弥との思い出話を通じ、追憶にふける。
「一緒に生きようゆうたんは、おまんやぞ!」
 同性愛者

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夢の話

 妊娠した夢を見た。

 元々月経不順の病気を持っていて、胃腸は万年消化不良でムカムカしている。そのせいで臨月まで妊娠に気付かなかった……というような内容の夢だった。

「そんなわけあるかい」

 朝のぼんやりとした光を浴びながら、ベッドの中でそう独りごちた。

 そんなわけあるかい。そんなわけ……。

 寝返りを打って、枕元に投げ出したスマホを探し、手に取る。7時15分。休みだから、もう少し寝た

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嘘を塗る

 母から譲り受けたドレッサーに映るのは、奇妙な自分自身の姿。
 目を逸らしたいが、そうもいかない。今日は、正装を求められる場に招待されているからだ。コンタクトを入れた瞳で、鏡を睨む。そうして思いため息を、ひとつ。意を決して、シースルーバングをヘアピンで両サイドにまとめた。
 笑みを形作るブラウンの眉。本性を隠すナチュラルなつけまつ毛。アイシャドウとチークには同系色をのせ、統一感を出す。
「私は、今

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ここでさよなら。

ここでさよなら。

 春風に舞い散った髪を見て、恋に落ちた。細く、柔らかな黒の短髪に、桜の匂いがした。あの衝撃的な出来事から、もう三年になる。
 大学も決まり、学年末テストも返却された。あと残すのは卒業式だけ。未だに、一目惚れの相手に告白出来ないでいる。
 奇跡的に三年生は同じクラスになれたのに。最後の体育祭、最後の文化祭。日常を過ごすにつれ友人関係になれて、一生残る思い出の中に、きっと私は濃く刻まれている。マスク越

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澄み渡る空の下に、まだ僕がいた頃。

澄み渡る空の下に、まだ僕がいた頃。

・前作「澄み渡る空の下に、君はもういない」のスピンオフ的な感じのやつです。時系列的には本編より前
・中本直弥目線。長谷川貴春と二人の話
・土佐弁は似非

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 部署の新人歓迎会で訪れた居酒屋に、偶然取り引き先の方々も来ていた。部長が聞いたところによると、あちらは送別会をしていたのだそうだ。
 寿退社する者がおりましてなあ、と既に酔いが回っているのか、赤ら

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【澄み渡る空(ry】で主人公達が喋ってる土佐弁は、ネットを駆使して勉強して書いたものですが、エセなのと、ルビの関係でめちゃくちゃ読みにくいかもです(許して)
wordの方ではなんとか綺麗になってたんですが

澄み渡る空の下に、君はもういない(2/2)

澄み渡る空の下に、君はもういない(2/2)

 緊張して、痛いくらいの鼓動が耳の中で響いている。ホテルを出ると、それも気にならないくらい、雑踏の方がやかましかったけど。

 迷いながらも辿り着いた、長谷川貴春が住むらしいマンションを見上げる。まだ新築なのか、白っぽい外壁が太陽光を反射させて、少し眩しい。

「……都会は夢があるにゃあ」

 思わず、そう独り言ちていた。

十階以上ある高層マンションをぼけっと眺めているうちに、自分が平日のど昼間

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澄み渡る空の下に、君はもういない(1/2)

澄み渡る空の下に、君はもういない(1/2)

 いつも、ふと思い出す幼馴染みの顔は、困ったような笑顔だった。

 元からアンニュイな雰囲気を纏う、派手とは縁遠い男だった。だけど、昔はもっと表情豊かだった気がする。気は長い方だが人並みに怒るし、大口を開けて笑うことも、声をあげて泣くこともあった。それが、今では思い出せない。

 いつから感情が死んでいるのか、と考えて、地元高知を出て行ってからだ、と思い至った。見送りに行った高知空港では、はしゃい

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