夢の話


 妊娠した夢を見た。

 元々月経不順の病気を持っていて、胃腸は万年消化不良でムカムカしている。そのせいで臨月まで妊娠に気付かなかった……というような内容の夢だった。

「そんなわけあるかい」

 朝のぼんやりとした光を浴びながら、ベッドの中でそう独りごちた。

 そんなわけあるかい。そんなわけ……。

 寝返りを打って、枕元に投げ出したスマホを探し、手に取る。7時15分。休みだから、もう少し寝たい。

 ……寝たら、隣に赤ちゃんがいるのだろうか。と、ふと思った。

 結婚願望はない。どころか、性欲自体無いし、寧ろ気持ち悪いと思っている性嫌悪のはずなのに。

 薄いお腹に手をやる。つい、数分前までここにいた。およそ九ヶ月間気付いてなかったとはいえ、認識した後にむくむくと湧き上がってきた愛着を、まだ脳が覚えている。

 男の子か女の子か、それすら分かる前に目が覚めてしまった。相手が誰かも分からない。それでも、お腹の中の子がどんな風に成長するのかと、母親と楽しみに思っていた。

 そんなこと、あるわけないのに。

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