梅影(ウメカゲ)

ウェブライター。主にお笑いについて語ります。ときどき映画、ときどきフランス。umeka…

梅影(ウメカゲ)

ウェブライター。主にお笑いについて語ります。ときどき映画、ときどきフランス。umekageya@gmail.com

最近の記事

やすし・きよしの漫才は「名人芸」だったのか?

このところ、横山やすし・西川きよしの漫才を見直す(聞き直す)機会があった。ネタ的には重複もあるが、彼らの漫才20本弱を再見した。今回はその感想を書こうと思う。 「やす・きよ漫才」の代表作は何か? いろいろなネタを見直してみて、「やす・きよ漫才」の代表作はどれかと改めて考えてみると、実はよくわからない。これはかなり重要なことだと思う。 たとえばダウンタウン、あるいはいとし・こいしやダイマル・ラケットなどの漫才では、「これ」という代表作がいくつか挙がる。ダウンタウンであれば

    • 「笑いは生活の質を向上させる」という研究を見て私が思うこと

      8月3日の読売新聞ネット版に、「がん経験者が『お笑い』見ると、生活の質アップ…近畿大と吉本興業チーム『笑うことはタダ』」という記事が出ていたので、紹介します。 この記事は、さまざまながんを経験した人が「お笑い」を見ると、生活の質の向上につながる研究結果が出た、というもの。詳細については記事をご覧ください。短いですよ。 日本笑い学会とは… このような結果については、どの研究についてもおおむね賛同します。笑いで病気を改善させる、みたいなことは以前から世間で言われていますし

      • TAKEO PAPER SHOW 2023「PACKAGING―機能と笑い」開催

        ひとことで「笑い」と言っても、漫才やコントだけがすべてではない。世の中のありとあらゆるものが「笑い」と関係しています。 「笑い」について研究しようとすると、そのジャンルの幅の広さにめまいがしそうです。ヨーロッパの理論だと、ベルクソンの『笑い』(岩波文庫)などのように、哲学や生理学に関係するでしょう。近年ではAIを使った研究も見られます。 これらについてはまた改めて紹介しますが、今回は「パッケージ」についてです。紙の専門商社である竹尾が、紙とデザインのイベント、TAKE

        • 松本人志監督が世界とつながろうとした『しんぼる』

          以前、『電波少年』で自分の笑いが世界に通用するのかを試した松本人志。あの企画が成功したかどうかはわからないが、『HITOSI MATUMOTO VISUALBUM』のオーディオコメンタリーかなにかで、松本の下ネタのコントを見たアメリカ人の親子がかんかんに怒って帰っていった、というエピソードを語っていたと記憶している。 そんな「世界」との相性がよくなかったはずの松本人志監督は、『大日本人』を引っ提げて、カンヌ映画祭で「世界」と直面した。おそらく、上々の反応だったのだろう。こ

        やすし・きよしの漫才は「名人芸」だったのか?

          松本人志監督はなぜ『しんぼる』を撮り急いだのか?

          映画作家・松本人志は、長編第1作『大日本人』(2007)の成功のあと、『しんぼる』(2009)を撮り上げた。だが、両作品の作風の変化に戸惑った人もいるだろう。『しんぼる』は難解で、自省的な作品である。日本人には苦手かもしれない。 前回指摘したのだが、映画作家はときに内省的な作品を撮ることがある。たとえば北野武は、『TAKESHIS'』(2005)を撮った。自分の名前がタイトルになっている。まあ自画像みたいなものだろうか。 ゴッホが大好きな松本人志も、ひょっとしたらゴッ

          松本人志監督はなぜ『しんぼる』を撮り急いだのか?

          松本人志監督の不幸

          前回から時間があいてしまって、何を書いたか忘れてしまったが、思い出しながら書いていきます。とりあえず前回は、松本人志の映画を2つのグループに分けるということをしました。といっても、2本ずつですが。 ➀『大日本人』(2007)、『しんぼる』(2009) ➁『さや侍』(2010)、『R100』(2013) 分ける基準はいたって単純です。松本人志が主演しているか、そうでないか、です。単純ですけれどもじつはとても重要。なぜか。これらがコメディアン・松本人志によるコメディ映

          松本人志監督の不幸

          松本人志の映画作品を分析するポイント①:2つのグループに分ける

          みなさんもご記憶に新しいと思いますが、オリエンタルラジオ・中田敦彦さんが自身のYouTubeチャンネルで「松本人志批判」を行いました。 そのなかで、わりと唐突なんですが、松本人志の映画作品を批判する箇所がありました。結局、動画自体が盛り上がってしまって、続編となるような動画はアップされることはないでしょう。そして、中田さんの映画批判の中身は、聞けずじまいに終わりそうです。 ただ、私の予想では、「松本人志の映画作品はつまらない、おもしろくない」とただ連呼するだけで終わる

          松本人志の映画作品を分析するポイント①:2つのグループに分ける

          漫才師に必要なのは「かわいらしさ」:中田敦彦騒動を振り返る

          さて、オリエンタルラジオ・中田敦彦さんが自身のYouTubeチャンネルで展開された松本人志批判。各方面に波紋を広げました。 私自身は中田さんにいろいろと期待していたのですが、なんだか尻すぼみで終わりそうです。「松本愛の裏返しだった」とか、まあそうなのかもしれないですけど…。 私は、あまり売れなかった『エンタの神様』出身芸人・オリエンタルラジオの悲痛な叫びというか、芸人として伸びない慨嘆やお笑い界の中心に立てない嫉妬などが入り混じった、そんな複雑な心境から生まれたんじゃ

          漫才師に必要なのは「かわいらしさ」:中田敦彦騒動を振り返る

          中田敦彦による松本人志批判を詳しく読み解く⑤:お笑いシンギュラリティは来るのか?

          中田敦彦さんの一連の発言は、たんにお笑い界にとどまらず、日本社会の構造的問題をも突いているのではないか。そんな話を前回書きました。 松本人志という権威がいるかぎり、若い芸人はそれに追随するほかない。それは若者にとってのディストピアなのではないか、というのが彼なりの主張だと考えます。その点は、私も理解します。 とにかく、動画「【松本人志氏への提言】審査員という権力」の続きを追っていきましょう。(以下の「…」は中田さんの発言、時間は発言があった動画の箇所を指し示しています

          中田敦彦による松本人志批判を詳しく読み解く⑤:お笑いシンギュラリティは来るのか?

          中田敦彦による松本人志批判を詳しく読み解く⑥:松本人志の映画批判

          中田敦彦さんの動画について詳しく見ていきましたが、長く書いてきたのでそろそろまとめにします。 動画の後半は、松本人志が賞レースの審査員をやり過ぎているので、辞めてはいかがかという提言。それについてはどうなんですかね。結局、テレビ番組として、松本人志が必要だ、あるいは松本人志が見たい、という要望がある限り、出続けるんだろうと思います。 そこには松本人志を頂点としたお笑い界をよしとする磁力が働いている。多くの芸人がそれでOKと思っているなら、その流れは変わらないでしょう。

          中田敦彦による松本人志批判を詳しく読み解く⑥:松本人志の映画批判

          中田敦彦による松本人志批判を詳しく読み解く➃:権力集中と日本社会

          さてさて、少しあいだがあいて、今日は4回目。少しペースアップしていかねば。 それでも、ねっとり動画を見て分析していくのも、自分の性にあっているというか、なかなか興味深いものです。それに、いろんなことがわかってくるし。まあ、理屈っぽいところもあるかもしれませんが、備忘録的に今日もやっていきます。 私自身のねらいは、中田敦彦による松本人志批判の「背景」を知りたい、ということです。表側についてはいろんな人が批評しているし、大部分の芸人は松本さん側につくでしょう。まあそれでいい

          中田敦彦による松本人志批判を詳しく読み解く➃:権力集中と日本社会

          中田敦彦による松本人志批判を詳しく読み解く➂:もっと背景を見よ!

          今回で、中田敦彦のYouTube大学 - NAKATA UNIVERSITYの動画「【松本人志氏への提言】審査員という権力」の分析も3回目となります。 回を重ねるごとに、動画をぼんやり視聴していると見過ごしがちな中田敦彦という人物の悲喜こもごもがわかってきて、私にとっては新しい発見となりました。 ただ、何度も書くのですが、中田さんの分析に深みがないというかね…。ただ松本人志に権力が集中しているという、「現状はこうです」を言うだけです。なんでそうなったかという過去の経緯

          中田敦彦による松本人志批判を詳しく読み解く➂:もっと背景を見よ!

          中田敦彦による松本人志批判を詳しく読み解く➁:『エンタ』芸人・オリエンタルラジオの嘆き

          私自身、中田敦彦という芸人について、とくに良くも悪くも思っていません。面白いのかもよくわかりません。ただ、頭がいい人なんだろうなという印象です。とはいえ、ときどき論争を巻き起こすんだから、インテリジェンスの使い方が不器用なんだろうと想像していました。 中田さんの動画はこれまで見てきませんでした。「YouTube大学」と題しているにもかかわらず、その研究には深みがないだろうと予想していたからです。結局、問題となっている動画「【松本人志氏への提言】審査員という権力」を見て、私

          中田敦彦による松本人志批判を詳しく読み解く➁:『エンタ』芸人・オリエンタルラジオの嘆き

          中田敦彦による松本人志批判を詳しく読み解く➀:漫才至上主義について

          では、今回から、5月29日にアップされた中田敦彦のYouTube大学 - NAKATA UNIVERSITY「【松本人志氏への提言】審査員という権力」について、細かく見ていきたいと思います。 前回も書いたのですが、私はこの動画に対して好感をもっています。松本批判? 結構じゃないかと。でも、ツッコミどころがいっぱいなので、その点については冷静に分析していきたい。 結論を先に言っておくと、批判の説得力がわりと低いんですよ。すぐに論破されそう。もっと理論武装してもいいんじゃ

          中田敦彦による松本人志批判を詳しく読み解く➀:漫才至上主義について

          上岡龍太郎さんを悼む

          本日のお昼に、上岡龍太郎さんが、肺がんと間質性肺炎のため、5月19日にお亡くなりになったとの速報が流れました。 ほんとうに悲しいニュースです。昭和漫才の生き字引でしたね。1960年に漫画トリオの一員としてデビューし、人気司会者としてテレビで引っ張りだこだった2000年に芸能界を引退しました。1942年生まれでしたので、60歳になる前の引退に多くの人が驚きました。 私の個人的な記憶は1980年、4歳のときに始まります。このとき、関西の土曜お昼の人気番組『ノックは無用』を見て

          上岡龍太郎さんを悼む

          中田敦彦に対する期待と不満-松本人志批判について

          いや、出ましたね。待っていました。オリエンタルラジオ・中田敦彦による「松本人志批判」動画が公開されました。ちょっと面白かった。 これ、たまたま候補に出てきたので、私もすぐに観ました。個人的には、中田敦彦のYouTube大学 - NAKATA UNIVERSITY「【松本人志氏への提言】審査員という権力」について、基本的に好感をもっています。わりとストレートに言ったな、とすがすがしく思っています。 この動画、消されることとかあるんですかね? そんなことになる前に、私なり

          中田敦彦に対する期待と不満-松本人志批判について