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中田敦彦による松本人志批判を詳しく読み解く➃:権力集中と日本社会

さてさて、少しあいだがあいて、今日は4回目。少しペースアップしていかねば。

それでも、ねっとり動画を見て分析していくのも、自分の性にあっているというか、なかなか興味深いものです。それに、いろんなことがわかってくるし。まあ、理屈っぽいところもあるかもしれませんが、備忘録的に今日もやっていきます。
 
私自身のねらいは、中田敦彦による松本人志批判の「背景」を知りたい、ということです。表側についてはいろんな人が批評しているし、大部分の芸人は松本さん側につくでしょう。まあそれでいいと思います。
 
芸人さんたちはお笑いの世界にいるわけです。いわばみんな同じ水につかっているわけです。そのなかで、松本批判なんてなかなかできないですよね。松本さんが中心を担い、多くの芸人さんたちはその求心力のなかで自分の立ち位置をもっている。松本さんがいなくなれば、みんなバラバラになりそうです。
 
でも、私はその中にはいません。とすれば、もう少し違って見方があってもいいかなと。中田さんの見方でもありませんが、期待するところはあります。でも、言葉足らずかな。(以下の「…」は中田さんの発言、時間は発言があった動画の箇所を指し示しています
 

松本人志が作った「芸人=審査員」

あとね、他の賞レースとの大きな違い、これ功罪両方あるんですけど、『M-1』って圧倒的に審査員に光がめっちゃ当たるんですよ。で、審査員が何て言うかっていうのは超重要なんですよね。とくに松本さんだよね。松本さんがもっと点数入っても良かったと思いますけどねって言ったら、順位が低くても、ものすごいフォーカスされたりしますよね。あれがもう圧倒的な特徴なんですよ。この『M-1』の。(13:24)

中田敦彦のYouTube大学 - NAKATA UNIVERSITY
「【松本人志氏への提言】審査員という権力」

かつて、若き日のダウンタウも賞レースに出ていたわけです。実際、彼らは大きな賞ってあまり取っていないんじゃないかな。
 
『遺書』のなかに書かれた有名な「藤本義一批判」があって、松本さん自身が芸人以外の作家や文化人の審査員を嫌った面がある。芸人のことは芸人で決める。だから今日、『M-1』の審査員はみんな芸人になったわけだ。
 
おそらく、芸人のなかには、一般の人とかを審査員に混ぜてもいいのでは、と思っている人もいるはず。西川のりおさんなんかも、『M-1』に関連してそんな発言をされていた記憶がある。

松本人志はオールラウンドプレーヤー

それで中田さんは、松本さんのちょっとした発言が審査に影響を及ぼすというわけである。

そんななかで僕がずーっと思ってたことは、松本さんがあらゆる大会にいるんですよ。これ冷静になって考えてほしいんですけど、『IPPONグランプリ』にもいらっしゃいますよね。『すべらない話』にもいらっしゃいますよね。漫談でも大喜利でもいるんですよ。なんだかんだで、若手を審査するっていうお仕事がめっちゃ多いんですよ。(15:13)

中田敦彦のYouTube大学 - NAKATA UNIVERSITY
「【松本人志氏への提言】審査員という権力」

たしかに、現状そうですよね。それはわかります。ただ、ひとつ確認しておきたいのは、『M-1』や『キングオブコント』をはじめ、いずれの番組も松本人志が創設者であることです。だから、その中心に松本さんがいるのは当然でしょう。
 
また、たとえば大喜利を取ってみれば、松本さんは20代前半、大阪時代の『四時ですよ~だ』のころから大喜利をやってきた、大喜利レジェンドでもあります。もちろん、漫才レジェンドコントレジェンドフリートークレジェンドでもある。なんだか将棋の永世七冠・羽生善治さんみたいですね。松本さんは、お笑いオールラウンドプレーヤーであり、それぞれの分野でスペシャリストでもある。松本人志信者である私は、その点は見過ごせないです。

テレビで選ばれ続ける松本人志

それは第一人者だから、カリスマだからっていう意見もあると思うんですけど、今までも カリスマ的な芸人さんってたくさんいたんですよ。たけしさんとか、さんまさんもそうじゃないですか。でも、たけしさんやさんまさんは、そんなに審査員をいっぱいやらないんですよ。(15:48)

中田敦彦のYouTube大学 - NAKATA UNIVERSITY
「【松本人志氏への提言】審査員という権力」

たぶん、それはそれぞれご本人の以降でもあるだろうし、テレビ局側の好みでもあるだろう。むしろ、テレビ局がいつも松本人志を指名している、と考えた方がよさそうだ。
 
ちなみに、関係ない話だが、30歳で芸能界デビューしたオールドルーキー、タモリさんは、芸歴5年しかたっていない若手時代に、すでに『お笑いスター誕生!!』の審査員を務めたという面白エピソードをもっている。若手なのに、芸歴があるかのようにうまく世間をだました、ということですね。すばらしい。

成田悠輔の発言との類似性

ここが松本さんの特筆すべきところで、松本さんはあらゆる大会を主催して、あらゆる大会の顔役になっていったんですよね。ここで非常に重要なことは、賞の審査員が、どのジャンルでもですけど、実はその業界で一番力を持つことが大きいんですね。(16:05)

中田敦彦のYouTube大学 - NAKATA UNIVERSITY
「【松本人志氏への提言】審査員という権力」

んー、そうですね。わかります。言っていることはわかります。松本人志に権力が集中しているってことですよね。
 
ここで思い出すのは、経済学者の成田悠輔さんがしたという「高齢者は老害化する前に集団自決みたいなことをすればいい」という発言。中田さんの発言はこれに近いんじゃないかという気がします。
 
要するに、お笑いの権力構造が長らく変わっていない。松本人志の審査、一言によって、若手芸人の未来は大きく変わってしまう。それは実は、若者に非常に厳しい現実を突きつけているんだ。これが中田さんの本意でしょう。
 
でも、彼自身は、意識的にか無意識的にか、こうした成田さんの発言などを受け取り、自分のいる分野で発信した。とすれば、中田さんの動画は、たんにお笑い界にとどまらず、日本社会の問題点の一端を突いているはずなんです。
 
そういう壮大な話とも読み取れる。そのあたりの中田さんの感覚は鋭いと思います。では、そこからどういう主張が展開できるのか。それが課題です。
 
ではでは、また次回。(梅)

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