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ショートショート集

21
短編小説よりも短い作品を掲載しています。
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#ショートストーリー

ショートストーリー「空飛ぶ少年兵」

ショートストーリー「空飛ぶ少年兵」

 眠れなかった。
 ベッドの上で毛布にくるまってから何時間も経つのに、まだぼくは夢の世界を訪れることができなかった。

 きっと、幽霊がいっぱい出てくる映画を観てしまったせいだ。就寝前にそんなものを観るから、恐怖が眠気を上回っているのだ。
 まるで深い深い森の奥で、捨てられておびえた子犬になった気分だ。
 冴えた目で、天窓に四角く切り取られた星空を見つめながら、そんなことを思った。

 ふっと短く

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掌編小説「1984年のサンセットサイダー」

掌編小説「1984年のサンセットサイダー」

 夕方のニュース番組は、ロサンゼルスオリンピックの様子を報道していた。

 真面目そうな三十代前半くらいの女性アナウンサーが、今日は日本の誰がどの競技で何色のメダルを獲得し、どんな感想を述べたかといった客観的な事実を簡潔に伝えていた。

 僕はテレビの向こうの彼女が読み上げる選手の名前を誰一人として知らなかったから、特にこれといった興味を抱かなかったし、どんな感慨も覚えなかった。

 僕が知ってい

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ショートストーリー「人魚狩り」

ショートストーリー「人魚狩り」

「人魚を狩りに行こう」
 突然ルームメイトにそんなことを言われたら、誰だって戸惑うに違いない。
 実際、おれもちゃんと戸惑ったし、「何だって?」とちゃんと訊き返した。

「だから、人魚狩りだよ」とルームメイトは少し口を尖らせながら、潮干狩りみたいなニュアンスで言った。
「人魚を狩る?」おれは首を捻った。「そもそも人魚って実在するのか?」
「おいおい」ルームメイトは呆れたように笑った。「実在しないも

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ショートストーリー「絶対に名は明かせない」

ショートストーリー「絶対に名は明かせない」

 喋ってみると、名無しの権兵衛は意外といいやつだった。

 彼の部屋は僕の隣で、以前から気になる存在ではあった。
 だって、決して自分の名前を明かそうとしない同学年の隣人なんて、気にならないはずがない。
 だけど同時に、決して自分の名前を明かそうとしない彼のその特殊性は、周りから一定の距離を置く役割を果たしていた。事実、彼は寮の中で浮いていた。

 だけどひょんなことから、僕は彼と親しくなった。

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【ショートショート】中華料理店にて

【ショートショート】中華料理店にて

 営業先との商談に失敗した帰り、俺と高橋は近くにある中華料理店に寄った。

 失敗して落ち込んだとしても、空腹は満たす必要がある。
 そうでなければ、午後から始まる別の営業は乗り越えられないのだ。

 俺たちは店の一番奥にある壁際のテーブル席に腰を下ろし、俺は五目そばと炒飯、高橋は酢豚と天津飯を注文した。

 小ぢんまりとした店内には、カウンター席と四つのテーブル席が配置されており、俺たちの他に客

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【ショートショート】カーネル・サンダースの呪い

【ショートショート】カーネル・サンダースの呪い

〈先日投稿した、短編小説『少年たちの秘密基地』でカットしたシーンを編集して、ショートショートに仕上げたものです〉

 僕らの秘密基地は小さな森の中にあって、白い布に囲まれた円筒の形をしている。

 使わなくったシーツを利用して、木々の間を輪の形に覆っているのだ。
 控えめな蝉の鳴き声が、至る所から聞こえていた。

 放課後、僕ら-僕とマナブとシゲチーとよっちゃんと掛布の5人-は秘密基地内で、次にど

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ユウヒ飲料の自動販売機【ショートショート】

ユウヒ飲料の自動販売機【ショートショート】

 自動販売機の扉を開けると、その向こうには『昭和40年代の世界』が広がっていた。

* * *

 本日9台目になる自動販売機の飲料を補充し、集金を終えた俺は、トラックに乗り込み、車を発進させた。

 車内のラジオからは、ブルース・スプリングスティーンの『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』が流れている。

 時刻は午後1時半過ぎ。道は空いていて、もう5回は信号に捕まっていない。
俺は自然と『ボーン・

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【ショートショート】コーヒーショップの男たち

【ショートショート】コーヒーショップの男たち

 ティムは五十代半ば、白髪混じりの恰幅のいい男で、私に優先して仕事を回してくれる重要な顧客の一人だ。

 我々はいつものように通い慣れたコーヒーショップの店内で、いつものようにビジネスの話をしていた。
サンフランシスコ、ノースビーチの一角にあるイタリア風の古い店だ。

 ティムはカプチーノを一口飲んだ。
そしてジャケットから一枚の写真を取り出し、テーブル越しにそれを私に寄越した。「この男だ」

 

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【ショートストーリー】逆回転寿司の逆襲

【ショートストーリー】逆回転寿司の逆襲

 ここ最近、逆回転寿司で客による不正が多発していた。食べ終わった皿がレーンに戻されているという事案が発生しているのだ。

 それも一皿や二皿ではない。多い日だと十皿を超えることもある。
しかしその不正が発覚してから数週間が経過しても、犯人の特定にはまだ至っていなかった。

 警察沙汰にはしたくなかった店主のコオリヤマは、店内に注意喚起の紙を貼ることにした。
だが、大した効果は見られなかった。タチの

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『寂寥感の忘れ方』(掌編小説)

『寂寥感の忘れ方』(掌編小説)

 「じゃあね〜っ、紗良っ」
「また明日ね〜」
「うんっ、バイバイ〜」

 志穂と成美と別れた後、私は一人自転車を走らせていた。
ソフトボール部の練習が終わり、家路を走る頃には、外はすっかり暗くなっている。

 5月になったばかりのこの季節、穏やかな夜風が涼しく、心地良い。

 でも、長い夜道を一人で走るのは、ちょっぴり寂しさを感じることもあったりする。

 私の通う高校は早良区にあって、私の自宅は

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