鵜田良江

独日・英日翻訳『ベルリン 1928-1933』『第三帝国のバンカー』『少女が見た194…

鵜田良江

独日・英日翻訳『ベルリン 1928-1933』『第三帝国のバンカー』『少女が見た1945年のベルリン』『スターリンの息子』ローダン正篇/NEO クエスチョニング🌈 小児がんの娘&自閉症の息子 林学系修士 元化粧品開発技術者 🇩🇪🇦🇹🇺🇸(🇸🇪🇫🇷)→🇯🇵Translator

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プロフィールと訳書

プロフィール 独日・英日出版翻訳者。2017年3月に出版翻訳を始め、現在8年目。訳書は25冊ありますが締切を破ったことは一度もありません。これまでSFやミステリーのエンタメ小説や海外の漫画、グラフィックノベルなどを訳してきました。訳については取引先から「日本語が安定している」「セリフにリアリティがある」「品質の高い訳文」「ほかの訳者に比べてほとんどと言っていいほど手がかからない」と評価されています。592ページの歴史大作グラフィックノベル『ベルリン 1928-1933ー黄金

    • esは飾りなのかどうか複数のAI翻訳に聞いてみて、漫画のAI翻訳についても考えてみました

      こんにちは! エンタメ翻訳者の鵜田良江です。 タイトル画像のように大文字で「ES」と書くと、一部のドイツ語SFファンのみなさまは何か反応されてしまうかもしれません。このあたりの事情はあとでご説明しますけれど、今回のテーマは、何かと見落としがちなドイツ語の小さな単語、「es」。それから、最近話題になった漫画のAI翻訳のこと。 思いつくままに書いていたら1万字を超えてしまい、誰が読むと? という感じになってしまいました。ドイツ語文法の話はいいから漫画のAI翻訳のことを、という方

      • 1隻なのに部隊? Einheitのこと

        きょうはドイツ語の翻訳のお話。 ドイツ語のSF小説、とくにスペースオペラによく出てくる「Einheit」。 いろいろな意味があって慣れないと悩まされるし 誤訳しやすい単語でもある…と思っています。 独和事典の説明 小学館の独和大辞典にはこうあります。 1. (ふつう単数で)一致, 統一, まとまり(など。以下略)    Tag der Deutschen Einheit(ドイツ統一の日)みたいな。 2. (計量の単位としての)単位(以下略)    die Einhei

        • だれかを排除したりしない言葉

          おはようございます! きのう、散歩をしていたら アメリカフウロが咲いているのを見つけた。 初夏に咲くとされているけれど 近所では春夏秋と暖かい時期、わりと長く見かける花だ。 とはいえ真冬に咲いているのを見たのは初めてだったので かなりびっくりした。 色も薄くて、寒いよう、と言っているみたいで 早くあたたかくなるといいね、と思った。 ところで さいきん、ツイッター(X?)で 1年ほど前にバズって大変なことになった ぼくのツイート(ポスト?)が どなたかに見つかったらしく ふ

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        プロフィールと訳書

          they/themの…訳???

          おはようございます! きのうの福岡はとってもいいお天気で 早くもオオイヌノフグリがたくさん咲いていた。 サファイアみたいな明るいブルーは 冷たい空気によく似合うな、と思う。 ところで、タイトルの件である。 このあいだ翻訳者同士のやりとりで they/themの訳をどうすればいいのか というのが目に入ってきた。 なにかの文章の中で だれかひとりの人の代名詞として「they」が出てきた といいう話ではない。 プロフィールにthey/themとあった というケースだ。 いや

          they/themの…訳???

          I am a boy.の訳と、訳を確定させるまでの話

          きのう散歩をしていたら もう近所の八重咲きの紅梅が散りはじめていた。 きょうは前置きは短めにして タイトルの「I am a boy.」の訳について。 以前どこかのサイトで I am a boy.の訳のバリエーションについて 論じられていたのを見たことがある。 申し訳ないがどなたが書かれていたのか 覚えていないのだけれど。 (思い当たる方がいらっしゃったら教えていただければ幸いです) そこでは訳の候補として ぼくは少年だ。 わたしは少年です。 わたしは少年である。 み

          I am a boy.の訳と、訳を確定させるまでの話

          【訳書のこと】『第三帝国のバンカー』翻訳裏話

          先日、1月22日に新しい訳書が発売された。 『第三帝国のバンカー ヤルマル・シャハト  ――ヒトラーに政権を握らせた金融の魔術師 』 (ピエール・ボワスリー/フィリップ・ギヨーム脚本  シリル・テルノン作画  鵜田良江訳、パンローリング) というバンド・デシネ(フランス語圏のコミック)だ。 1877年に生まれ、1970年に没した ドイツの経済学者・政治家ヤルマル・シャハトの 後半生を描いた作品。 第一次世界大戦前のドイツ帝国時代から大手銀行の重役を務め 戦間期のワイマ

          【訳書のこと】『第三帝国のバンカー』翻訳裏話

          【翻訳のこと】ワイマールVSヴァイマル

          きのうはお昼ごろから偏頭痛におそわれて 寝込んでいた。 あの偏頭痛というやつはいったいなんなのか… ぼくは鶏を食べると、というか 動物の皮とか内臓とかを食べると 一発で偏頭痛に襲われるわけだが (アレルギーかなにか、かもしれない) そんなものを食べなくても あの偏頭痛というやつはやってくる。 あれが1日でおさまるのが不思議だ。 そしておさまってみると なんだかすごくすっきりしている。 体が勝手にデトックスかなにかを やっていたりするのかもしれないけれど もう少し穏やか

          【翻訳のこと】ワイマールVSヴァイマル

          【雑感】さくらねこ

          きのう、散歩の途中で猫に会った。 やけに立派な体格の、眼光鋭い猫だった。 ぼくは猫を見ると思わず「ニャァ」と声をかけてしまうのだけど (自慢ではないが猫の鳴きまねはうまい) わりと高い確率で返事をしてもらえる。 その猫もすぐに「ニャー」と返事をして近づいてきて 足もとに身をすり寄せてきた。 こういうすぐに寄ってくる猫というのは 自分に自信があるのだろう。 どんくさい人間が手を出してきたところで つかまったりなんかしねーよ、みたいな。 その猫も、なんかくれるんだろ的な

          【雑感】さくらねこ

          【アイデンティティのこと】一人称問題

          福岡の朝の6時半はまだまだまっくらで 雨あがりの水たまりに古い建物の外灯が映っていて 思わず見とれてしまった。 福岡の海岸沿いは、九州とはいえ 冬は暗く、寒い。 気候は日本海岸式気候で (いまの小学生はこんなふうに習うらしい) 朝鮮半島がなければ豪雪地帯だったはずだと 聞いたことがある。 ぼくはもともとが暗い性分なせいか 明け方の暗い時間が好きだ。 だれにも見られずに外を歩ける時間、というのが。 ぼくは「ぼく」という一人称を使っているけれど 生まれたときに割り当てられ

          【アイデンティティのこと】一人称問題

          【子どものこと】がんばった

          きのう、わが家ですき焼き大会をした。 ぼくがすき焼きを食べるのは20年ぶりのこと。 ぼくには自閉症の息子がいて どんなにおなかがすいていてもきらいなものは食べない。 野菜はほとんど受けつけないから すき焼きなんかしても食べるはずはないだろうと ずいぶん長いあいだ作る気にもならなかった。 それがやっぱりやろうと思い立ったのは 娘が大学に合格したお祝いに なにかをしようと思ったからだ。 そのタイミングで息子に 「すき焼きなんて見たことない」と言われた。 いやいやきみのせいで

          【子どものこと】がんばった

          【雑感】ドイツはイスラエルの言いなり???

          おととい、12月27日は ホロコースト犠牲者を追悼する国際デーだった。 ぼくもナチス関連のグラフィクノベル/コミックを3冊訳しているので 無関心とはいかない(ちなみに上の画像の3冊)。 とはいえ。 ここでぼくのドイツに対するスタンスを明らかにしておきたい。 ドイツ語の翻訳をしているというと ドイツに憧れてドイツ語の勉強を始めたのだろうと思われがちなのだが 実はそうではない。 偶然、読みたいと思った本がドイツ語版しかなかったからだ。 それでも、仕事につながるあてもなく 4

          【雑感】ドイツはイスラエルの言いなり???

          【雑感】数字のこと

          ここ数日、まだ暗い早朝に外に出ると 目の前の電柱の上のほうにカラスがとまっている。 今朝は冷たい雨が降っていたけれど、やはり同じ場所にいた。 あそこで夜を明かしたのか、待つ人でもいるのだろうか。 そういえばきのう ツイッター(現X)で大学のコスパの話が出ていた。 卒業生の収入が少ないとコスパが悪い大学になるらしい。 ぼくも母校の平均収入を下げている者のひとりなので いくらか申し訳なく思いながらも その数字は議論するに足るものなのだろうかと考えていた。 コスパとは、コストパ

          【雑感】数字のこと

          【雑感】歌で育った話

          福岡の夜明けは遅くて…とはいえ この時期、朝の5時は日本のどこでもまだ真っ暗ですね。 外に出てみると、雨が上がったばかりみたいで 排水溝からは水しぶきの音が聞こえて 電線からはしずくが落ちてくる。 そんななか、電線にうつる街頭の明かりがきれいでした。 1月下旬にしてはあまり寒くないとはいえ それなりに寒く でも早くも梅が咲いていたりすると 「はるーはなーのみーの」なんて 早春賦の一節でも歌いたくなってきます。 そういえばわたしの使う言葉は 古風なものが多くて 1970年

          【雑感】歌で育った話

          『検脳鏡』(クルト・ラスヴィッツ作、1900年)

          まずはじめに このたびの地震で被災されたみなさまに 心からお見舞い申し上げます はじめまして、の方もいらっしゃると思います。 ドイツ語や英語のグラフィックノベルやSF小説の翻訳などをしている 鵜田良江と申します。 きょう、2024年1月10日は、翻訳を担当しました 宇宙英雄ローダン・シリーズ704巻『サトラングの隠者』の発売日です。 このシリーズは、月に2回、 ドイツ語版の原書をそれぞれに2巻ずつ収載する形で 翻訳出版が進められています。 704巻にはドイツ語版の1407

          『検脳鏡』(クルト・ラスヴィッツ作、1900年)

          ヨアヒム・リンゲルナッツの短編を訳してみました

          訳書のグラフィックノベル『ベルリン 1928-1933ー黄金の20年代からナチス政権の誕生まで』(ジェイソン・リューツ著、鵜田良江訳、パンローリング)でトリックスターとして大活躍するドイツの詩人、ヨアヒム・リンゲルナッツ(Joachim Ringelnatz, 1883-1934)。 ワイマール共和国時代のベルリンで暮らし、カバレティスト、コメディアン、詩人、作家として知られるリンゲルナッツ、ですが。日本での知名度はいまひとつなような……。ドイツ語圏ではいまでも詩集や絵本や

          ヨアヒム・リンゲルナッツの短編を訳してみました