![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/129116155/rectangle_large_type_2_b2b545cba3fb995e8ddf425df96aed38.jpeg?width=1200)
【雑感】ドイツはイスラエルの言いなり???
おととい、12月27日は
ホロコースト犠牲者を追悼する国際デーだった。
ぼくもナチス関連のグラフィクノベル/コミックを3冊訳しているので
無関心とはいかない(ちなみに上の画像の3冊)。
とはいえ。
ここでぼくのドイツに対するスタンスを明らかにしておきたい。
ドイツ語の翻訳をしているというと
ドイツに憧れてドイツ語の勉強を始めたのだろうと思われがちなのだが
実はそうではない。
偶然、読みたいと思った本がドイツ語版しかなかったからだ。
それでも、仕事につながるあてもなく
4年間、1日に10時間もの時間を
ドイツ語の勉強をすることに費やしたのだから
あのエネルギーはどこからわいてきたのだろうかと
いまとなっては不思議でならない。
ドイツにも行ったことがない。憧れの国、というわけではないのだ。
そして、ドイツといえば
ナチス時代の犯罪行為を真摯に反省している国、というイメージもあるだろう。
だからぼくもドイツに学べ!と言いだすのだろうと思われてしまうかもしれないが
個人的には、そう単純なことではないと感じている。
ナチス時代がよかったと言う人がドイツに存在することは
事実として受け止めなければならないのだろうし
(念のために申し添えるが、絶対に肯定はしない)
ドイツにおける極右政党の台頭も、否定できない事実ではある。
とはいえ日本と決定的に違うと感じているのは
「政府が」過去の犯罪行為を真摯に反省していること
あらゆる差別を許さない姿勢を鮮明にしていること
そして
あれを二度と「繰り返させない」義務があると若い人たちに説いていることだ。
つまり
ドイツバンザイ!ではないけれど
見習うべきところはあると思っている。
前置きが長くなったが
ここからが本題である。
きのうのことだが
ホロコースト犠牲者を追悼する国際デーということで
ドイツ政府関連のアカウントが投稿したX(旧Twitter)のポストに対して
ホロコーストの引け目があるから
ドイツはイスラエルの言いなりで
ガザにおける民間人への攻撃を非難することができない
という趣旨の投稿がなされ
それが拡散されるという現象が起きた。
ぼくの視界にも入ってきた。
それが大学で教えている方のようだったから
ずいぶん困ったことになったものだなと思った。
あっという間にどこかに流れていってしまったから
だれの投稿だったのか、わからなくなったのだけれど。
とはいえ。
ドイツはイスラエルの言いなりになって
ガザにおける過剰な攻撃を批判することができないという説は
日本語のXの世界で一定の支持を受けているような印象がある。
いや、上のような説を見たい、拡散したいという欲求が
くすぶっているように見える
というほうが正確だろう。
さて、本当にドイツは
イスラエルという国家によるガザへの民間人への攻撃を
批判していないのかどうか。
次のポストを見ていただけるだろうか。
ドイツのベアボック外相の1月26日のポストを
ドイツ大使館が日本語訳した3連投である。
人々がハンユニスで直面する絶望的状況について強い懸念を覚えています。自衛権行使においてもルールを守り、テロとの闘いにおいても国際人道法を守る義務は世界のどの国にもあり、イスラエル政府も同様です。1/3 https://t.co/ow0q9ayuHE
— ドイツ大使館🇩🇪 (@GermanyinJapan) January 26, 2024
イスラエル政府は、人道支援物資に関し、緊急に#ガザへの搬入拡大を可能にし、そのために必要な作戦変更を行わなければなりません。何十万人もの人々が、イスラエルの通告に従い南部に避難し、国連施設等に身を寄せていました。2/3https://t.co/osO0hGhUua
— ドイツ大使館🇩🇪 (@GermanyinJapan) January 26, 2024
民間人は、簡単に消えることなどできません。その場を立ち去れという呼びかけだけでは無理で、人道的戦闘休止が緊急に必要なのです。人質の全員解放を実現させるためにも必要なのです。3/3https://t.co/C7XDliROcz
— ドイツ大使館🇩🇪 (@GermanyinJapan) January 26, 2024
「人道的戦闘休止が緊急に必要」だと
はっきりと述べている。
次は、昨年11月2日のドイツのハーベック副首相の声明を
ぼくが引用RPしたもの。
ドイツでの反ユダヤ主義的言動の増加、議論の混迷を受けての、ドイツ副首相兼経済気候大臣ハーベックの声明。パレスチナの民間人の保護、人道支援の必要性を明確にしながら、イスラエルの安全はドイツの国家理性で、歴史的経緯から責任があり、ドイツに宗教的不寛容が存在する余地はない、と。 https://t.co/Gbe1hktRUZ
— 鵜田良江🎗 Yoshie Uda (@hexenkurs) November 3, 2023
こちらでドイツの副首相は
イスラエルという国家の安全保障をサポートすることと
イスラエルを批判することは矛盾しないと発言している。
個人的には、もっとできることはあるのではないかと思ってはいるけれど
ドイツがイスラエルを批判していない、言いなりだというのは
事実ではない、と言わざるを得ない。
それから蛇足なようだがもうひとつ
いまではあまり信じている人はいないのだろうけれど
「ドイツではパレスチナの旗を掲げると逮捕される」
という説が拡散されたこともあった。
これについては
ベルリン在住のライター、河内秀子さんの
昨年11月6日の次のポストをご覧いただきたい。
一律で禁止はされていません。イスラエル批判はもちろんパレスチナが国の権利を擁護することもドイツで禁止ではなく、先週末ベルリンなど各地でデモが許可された上で行われています。確かに数名逮捕者も出ましたが、例えばイスラム主義組織「ヒズブ・タフリール」の旗だったり「ユダヤ人を殺せ」とい> https://t.co/tCImZzdqUj
— kawachi_berlin (@berlinbau) November 6, 2023
うような、民衆煽動罪に抵触する場合だけです。
— kawachi_berlin (@berlinbau) November 6, 2023
ベルリンの11月5日の親パレスチナデモは平和的に進み、8500名ほどが参加。フリーパレスチナとかガザのジェノサイドを止めろ!などと掲げた人もたくさんいました。イスラエルへのハマスの攻撃に祝杯をあげたサミドゥンは禁止にhttps://t.co/aypHpYeuF0
ヒズブ・タハリールの独国内での活動禁止理由について「言論弾圧」などと疑問がなされたので:2003年ドイツ内務省による禁止の理由を。雑誌Explizitの中で「イスラエルの生存権を否定し、イスラエルの消滅とユダヤ人の殺害を呼びかけている」こと。ドイツ国内の極右NPDとの関わりも問題視されました。
— kawachi_berlin (@berlinbau) November 7, 2023
やはり、そのような事実はない、ということになる。
この話を持ちだしたのは
なんとなくではあるものの
「ドイツはイスラエルの言いなりで
ホロコーストでユダヤ人を虐殺したことを反省しながら
パレスチナ人の虐殺は肯定している」
という説を流布させることで
ドイツの歴史に学ぼうという姿勢を愚弄してやれ
という空気を感じるからだ。
繰り返しになるが
ドイツのイスラエルに対する働きかけが十分だとは思っていない。
とはいえ
自分の見たい情報だけを見て
ひとつの国を的外れな方向から非難すること
そしてそれを拡散する行為は
避けたほうがいいのではないだろうか。
それぞれの国に、いろいろな考え方の人がいる。
イスラエルにさえ、ガザへの攻撃に反対している人はいるのだ。
もちろんドイツにもいる。
そしてそのような人たちは、ぼくたちと同じように
だれもが穏やかな日々を送れますようにと
祈ってやまないのだから。