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【雑感】ドイツはイスラエルの言いなり???

おととい、12月27日は
ホロコースト犠牲者を追悼する国際デーだった。

ぼくもナチス関連のグラフィクノベル/コミックを3冊訳しているので
無関心とはいかない(ちなみに上の画像の3冊)。

とはいえ。
ここでぼくのドイツに対するスタンスを明らかにしておきたい。

ドイツ語の翻訳をしているというと
ドイツに憧れてドイツ語の勉強を始めたのだろうと思われがちなのだが
実はそうではない。
偶然、読みたいと思った本がドイツ語版しかなかったからだ。
それでも、仕事につながるあてもなく
4年間、1日に10時間もの時間を
ドイツ語の勉強をすることに費やしたのだから
あのエネルギーはどこからわいてきたのだろうかと
いまとなっては不思議でならない。
ドイツにも行ったことがない。憧れの国、というわけではないのだ。

そして、ドイツといえば
ナチス時代の犯罪行為を真摯に反省している国、というイメージもあるだろう。
だからぼくもドイツに学べ!と言いだすのだろうと思われてしまうかもしれないが
個人的には、そう単純なことではないと感じている。

ナチス時代がよかったと言う人がドイツに存在することは
事実として受け止めなければならないのだろうし
(念のために申し添えるが、絶対に肯定はしない)
ドイツにおける極右政党の台頭も、否定できない事実ではある。

とはいえ日本と決定的に違うと感じているのは
「政府が」過去の犯罪行為を真摯に反省していること
あらゆる差別を許さない姿勢を鮮明にしていること
そして
あれを二度と「繰り返させない」義務があると若い人たちに説いていることだ。

つまり
ドイツバンザイ!ではないけれど
見習うべきところはあると思っている。

前置きが長くなったが
ここからが本題である。

きのうのことだが
ホロコースト犠牲者を追悼する国際デーということで
ドイツ政府関連のアカウントが投稿したX(旧Twitter)のポストに対して
ホロコーストの引け目があるから
ドイツはイスラエルの言いなりで
ガザにおける民間人への攻撃を非難することができない
という趣旨の投稿がなされ
それが拡散されるという現象が起きた。
ぼくの視界にも入ってきた。

それが大学で教えている方のようだったから
ずいぶん困ったことになったものだなと思った。
あっという間にどこかに流れていってしまったから
だれの投稿だったのか、わからなくなったのだけれど。

とはいえ。
ドイツはイスラエルの言いなりになって
ガザにおける過剰な攻撃を批判することができないという説は
日本語のXの世界で一定の支持を受けているような印象がある。

いや、上のような説を見たい、拡散したいという欲求が
くすぶっているように見える
というほうが正確だろう。

さて、本当にドイツは
イスラエルという国家によるガザへの民間人への攻撃を
批判していないのかどうか。
次のポストを見ていただけるだろうか。
ドイツのベアボック外相の1月26日のポストを
ドイツ大使館が日本語訳した3連投である。

「人道的戦闘休止が緊急に必要」だと
はっきりと述べている。

次は、昨年11月2日のドイツのハーベック副首相の声明を
ぼくが引用RPしたもの。

こちらでドイツの副首相は
イスラエルという国家の安全保障をサポートすることと
イスラエルを批判することは矛盾しないと発言している。

個人的には、もっとできることはあるのではないかと思ってはいるけれど
ドイツがイスラエルを批判していない、言いなりだというのは
事実ではない、と言わざるを得ない。

それから蛇足なようだがもうひとつ
いまではあまり信じている人はいないのだろうけれど
「ドイツではパレスチナの旗を掲げると逮捕される」
という説が拡散されたこともあった。

これについては
ベルリン在住のライター、河内秀子さんの
昨年11月6日の次のポストをご覧いただきたい。

やはり、そのような事実はない、ということになる。

この話を持ちだしたのは
なんとなくではあるものの
「ドイツはイスラエルの言いなりで
 ホロコーストでユダヤ人を虐殺したことを反省しながら
 パレスチナ人の虐殺は肯定している」
という説を流布させることで
ドイツの歴史に学ぼうという姿勢を愚弄してやれ
という空気を感じるからだ。

繰り返しになるが
ドイツのイスラエルに対する働きかけが十分だとは思っていない。

とはいえ
自分の見たい情報だけを見て
ひとつの国を的外れな方向から非難すること
そしてそれを拡散する行為は
避けたほうがいいのではないだろうか。

それぞれの国に、いろいろな考え方の人がいる。
イスラエルにさえ、ガザへの攻撃に反対している人はいるのだ。
もちろんドイツにもいる。
そしてそのような人たちは、ぼくたちと同じように
だれもが穏やかな日々を送れますようにと
祈ってやまないのだから。




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