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I am a boy.の訳と、訳を確定させるまでの話

きのう散歩をしていたら
もう近所の八重咲きの紅梅が散りはじめていた。

きょうは前置きは短めにして
タイトルの「I am a boy.」の訳について。

以前どこかのサイトで
I am a boy.の訳のバリエーションについて
論じられていたのを見たことがある。
申し訳ないがどなたが書かれていたのか
覚えていないのだけれど。
(思い当たる方がいらっしゃったら教えていただければ幸いです)

そこでは訳の候補として

ぼくは少年だ。
わたしは少年です。
わたしは少年である。

みたいな主語と文末を変えたバリエーションが
並んでいたように思う。

こういうのなら
最終的な訳の選択は簡単だから
早くすんでいいなぁ、と思った。

ぼくが「I am a boy.」の訳の候補を考えはじめると
こんな感じになる。

ぼくは男の子だ。
わたしは男の子よ。
ワタシは男の子なのヨ。
ぼくは女の子じゃない。
わたしは男子だから。
男子だってば。
女子じゃないよ。
わたしは少年なんだ。
オレは少年だからさ。
わしは少年なんじゃよ。
それがしは男の子(をのこ)である。
朕ハ男子ナリ。

…がんばればもっといけるけど
ぼくが考えはじめると
話がどんどんひろがって収拾がつかなくなる。

産業翻訳なんかのところにいくと
そんなでかい話じゃない、と言われたりする(汗)

ぼくが翻訳のさい、調べ物に時間をさくのは
このひろがり過ぎてしまう訳の候補を
収束させるためだ。

前にこちらでとりあげた
最新の訳書の『第三帝国のバンカー』は
英語版から訳してフランス語版とつきあわせて
フランス語の翻訳者さんに確認をとり
という形で訳したけれど

英語版とフランス語版でつきあわせても
訳の候補をしぼりきれないときは
史実の確認に走った。

ニュルンベルク国際軍事裁判での
シャハトの発言の訳は
どうにも困って
記録映像を掘り返して
ドイツ語でのシャハトの言葉を見つけて
やっと訳が確定した。
参考にしたのは下の映像。
シャハトの登場は1分44秒あたり。

もともと調べ物は好きだし
楽しい作業とはいえ
仕事でやっているのだから楽しいなどという次元ではない。

とくにこの『第三帝国のバンカー』は
関連する日本語の資料が少なくて
一般的な書籍で日本語でフルネームで紹介されるなんて
めったにないのではないか、という実在の人物もたくさんいて
そうなると責任重大だから
英語やドイツ語、そしてフランス語の資料を読みあさった。

そんなこんななので
つい時間をかけてしまう。
印刷にまわるまで、最後の最後まで粘って
訂正のお願いをしてしまう。
今回も、たくさん手間をかけさせてしまって
申し訳なかったのだけれど。
ぎりぎりまで対応してくれた編集者さんには
本当に感謝している。

そして、読んだ方に
興味深い本だった、次を期待しています
そんな言葉をかけてもらえたりしたので
うん、がんばろう、と、思ったり、している。


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