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they/themの…訳???

おはようございます!
きのうの福岡はとってもいいお天気で
早くもオオイヌノフグリがたくさん咲いていた。
サファイアみたいな明るいブルーは
冷たい空気によく似合うな、と思う。

ところで、タイトルの件である。

このあいだ翻訳者同士のやりとりで
they/themの訳をどうすればいいのか
というのが目に入ってきた。

なにかの文章の中で
だれかひとりの人の代名詞として「they」が出てきた
といいう話ではない。
プロフィールにthey/themとあった
というケースだ。

いやいやそのまんまでしょ

と思ったのだけれど
なにやらカタカナのアイデンティティに訳すとか
そんな話になっていた。
でもその話は完結してしまっていて
ぼくの入る余地などなかったので
なんだか感じが悪いかもしれないけれど
ここで書いておこう、と思った。

当事者として。

ぼくはクエスチョニングで
ほんとはthey/themなんてはっきり言えたらいいなあ
なんて憧れながら
けっきょくはshe/herでいいです、となってしまう。
そのあたりがふらふらしているところも
やっぱりクエスチョニングだ。

とはいえ。

自分の代名詞はthey/themだと表明している
というのは
she/herやhe/himのような
男女どちらかの性別の代名詞を使われたのでは
アイデンティティクライシスが起きるので
they/themを使ってほしい、という意思表示だ。

この意思表示がプロフィールにある場合には
そのまま伝えるべきだと思う。
sheもheもtheyも英語の代名詞である。
ドイツ語の代名詞はまた違っているし
日本語では、一般的な会話では、特殊な場合を除いて
性別に応じた代名詞を使うことがない。

英語ではどうしても
男女どちらかに振り分けられた代名詞が使われてしまうけれど
そのどちらかの枠に入れられたのでは
自分は生きていくことができないから
その枠外の言葉を使ってほしい、ということなのだ。

ぼく自身もそうだけれど
さあ男女に分かれてください!と言われたときに
すんなりとどちらかに行くことができない、というのは
かなり、つらいものだ。

もう53年も生きてきているのに
自分の意志ではどうにもならない。
生まれ変わって、どちらかだとはっきりと言える人になりたい
なんて、思ってきた、ずっと。

こんなふうに悩んで
どれだけの人が
みずから命を絶ってきたのだろうと思うと
つらくてたまらない。

そう、they/themは
もうそんな悲しいことが起きないように
という祈りのこもった言葉でもある。

英語ではthey/themでお願いします
そう書かざるをえないほどの
いろいろな出来事の積み重ねが
その人には、ある。

それを、事情を聞かずに
うんわかったよ、they/themなんだね
と言ってもらえる世界ならば
その人以外の黙っているたくさんの当事者たちも
生きていっていいんだね、と思えるはずだ。

だから、プロフィールなのだから
中途半端に訳したり、別の言葉に変えたりしないで
そのままにするべきだろうし、してほしいなぁと思う。

そして、どうしてもやめていただきたいのは
they/themとあるからといって
勝手に「ノンバイナリー」や「トランスジェンダー」みたいな
どこにも書かれていないアイデンティティに
勝手に訳すというか書き換えること、である。

これは、絶対にやってはいけないことだ。

当事者として、切にお願いしておきたい。

ぼくは自分のアイデンティティを表す言葉を
「クエスチョニング」にしている。

どこに帰属していいかわからないし
ほんとうに困っているこの状況を
この「クエスチョニング」という言葉は
的確に表してくれていて
この言葉、この定義のおかげで
あぁ、ぼくはここにいていいんだな、と思うことができた。

これを勝手に「ノンバイナリー」なんてされてしまっては
またしてもアンデンティティクライシスである。

このアイデンティティクライシスというのは
当事者ではない方にはどうも軽くとらえられがちだと
感じているのだけれど
かんたんに言ってしまえば
「死にたくなる」ということである。

ぼくは、「クエスチョニング」という言葉のおかげで
そして、そういうアイデンティティなんだということを
受け止めてくださったみなさまのおかげで
もう大丈夫、だと思えているけれど

大丈夫かどうかよくわからない、そんな境界線にいて
いまにも向こうに行く道を選びかねない
そんな状況にいる人たちを
あっちのほうに押してしまうような、そんなことは
もうほんとうに、やってはいけないことだし
絶対に、やめてほしいと思っている。

自分のアイデンティティは自分で決めるものであって
ほかの人が勝手に
「あなたはこうだよね」なんて、決めたりなんて、できないものだ。

自分の代名詞はthey/themである。

そう言われたら、あ、そうなんだね、で、いいではないか。

ジェンダーのアイデンティティが
女性か男性か、どちらかに定まっている人は
どうしてあなたはsheなんですか? heなんですか?
なんて聞かれたりするだろうか。
どうやって説明しよう、って、悩んだり、しているだろうか。
どうして自分は女性なのか、代名詞はsheなのか
言葉を尽くして説明しなさいと
要求されたり、するだろうか。

they/themを自明のこととして受け入れること。

これって、だれかの命を大切にする、ということでも、ある。

どうか、そのままに、してほしいなぁ、と思う。

なにが正解かなんて、そんな話ではなくて
当事者としての、お願い、です。


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