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『ハーバード医学教授が教える健康の正解』

担当編集者が語る!注目翻訳書 第14回
ハーバード医学教授が教える健康の正解
著:サンジブ・チョプラ、デビッド・フィッシャー 訳:櫻井祐子
ダイヤモンド社 2018年9月出版

ハーバード教授×医師の画期的な「健康書」

本書の原題は『The BIG 5』。著者のサンジブ・チョプラはハーバードメディカルスクールの教授であり、同スクールの附属病院、べス・イスラエル・ディーコネス医療センターで医師も務めている(ちなみに本書の内容とは関係ないが、ベストセラー作家のディーパック・チョプラの実弟でもある)。

世の中には「身体にいい」といわれるものはいろいろとあるし、さまざまな先生がそれぞれの自説を語っている。著者の目から見ても、その中には「これは悪くないかな」と思えるものもあれば、そもそも評価に値しないものもあるという。

著者は、世にあふれる大量の情報に接するなかで、さまざまな研究やエビデンス(科学的証拠)を参照する限り、少なくともこの5つの食べ物・飲み物・習慣は「間違いない」と言える、ほかにも可能性がないわけではないが、文句なしに「合格」と言えるのはこの5つだ、というものに辿りついたという。その5つ(ビッグファイブ)が何かについてはぜひ本書でご確認いただきたいが、それぞれの効能や効果的な摂取法についてわかりやすく説いたのが本書だ。

ウソのような「事実」が次々と出てきた

この本の面白いところは、さまざまな人たちを何年も追跡調査したという結果を徹底的に積み重ねていく点だ。

この食べ物を食べた人(この習慣をやった人)たちとそうでない人たちを追跡したところ、何年後にはこんな違いがあった、という感じで、何十万人という人たちを何十年もフォローした研究やら、それらさまざまな研究で出た結果をさらに統合・分析した研究(メタアナリシス)の結果などを次々と畳み掛けてくるのだ。

たとえば、本書では「コーヒー」を「ビッグファイブ」の1つとして絶賛している。

チョプラ教授は肝臓専門医なので、どこか肝臓に悪そうな感じもするコーヒーについて、「飲めば飲むほど、肝障害を示す肝酵素のレベルが低くなる」というデータに出合ってとても驚いたという。だが、その後さまざまな研究を調べれば調べるほど、「コーヒーが身体にいい」ということを裏書きするデータばかり出てきた。

それらのデータは、コーヒーが糖尿病や心臓疾患、認知症、各種のガン、果ては虫歯まで予防する可能性が高いことを示していた。それにコーヒーを飲む人は自殺率まで低かった。ウソのような話だが、実際、著者が医師としてコーヒーの効能について語ると「ジョークと勘ちがいしてオチを待っている人がいるほど」だという。

私自身、「本当かな」と思いながら読み進めていったところもあるのだが、本書は「では、この事実から判断してください」とばかりに、説得力のある研究結果をせっせとわんさか積み上げてくる。

そのおかげで、読んでいるあいだにどんどん“洗脳”されていき、編集作業中、コーヒーの項を読んでいるときは、気づいたらコーヒーを飲んでいて、ナッツの項を読んでいるときは、気づいたらコンビニにナッツを買いに行っていたほどだ。

怒濤のエビデンスに基づく「なまけ者の健康法」

数年前くらいに、土日のどっちかくらいは走ろうかなと思ってジョギングをしたりもしていたのだが、なんとなくやっぱり面倒になってすぐやめてしまった。だが、本書を読んでからまた走るようになった。

本書では「運動」についても無数の健康効果が例示されているのだが、とくに有酸素運動が「記憶をつかさどる脳の部位への血流を増加」させたり、(マウスでの実験結果だが)運動で「新しい脳細胞が生まれる」ことも確認されたというのには驚いた。

また、「運動は薬物と同じくらいうつ病に有効で、患者によっては薬物よりも運動が向いている人がいる」という研究結果も引用されている(あと、「適度な運動がストレスレベルを半分以下に低減させる」とも)。

健康によくて、賢くもなるのかもしれないと思うと、走っているあいだのつらさまで、逆に「自分にいいことをしている快感」に変わってくるようなところがある。そうやって自分を追いこんでいるのが妙にハマって、ジョギングの習慣はしばらく続きそうだ。

なお、著者は本書を「なまけ者の健康法」と呼んでいる。世の中にはさまざまな健康の指針が氾濫しているが、細かいことは考えずに、ともかくもこの「ビッグファイブ」に従えば、それだけで相当健康にいいのは間違いないんだから、やってみればいいのではないか、ということだ。

ややこしい健康メソッドを取り入れても、いずれやらなくなってしまうだろうな……という方は、ぜひ本書を読んで、「なまけ者」仕様のごくシンプルなメソッドを試してみてほしい。

執筆者:三浦岳(ダイヤモンド社 書籍編集局第1編集部)


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