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2021年2月読んだ本まとめ

今月も自分のために読んだ本のまとめをしたい。「究極の利己は利他」誰かが言っていた。自分のために、心行くまで書いた感想が誰かの役に立つ日がくるかもしれない。

エディ・ジョーンズ 『ハードワーク』

色んな人が勧めていたけど全然読めてなかった本。(特に筑波の先輩でトレーナーとしてお世話になった松本さんが勧めていたので手にとった。)

2015年、ラグビー日本代表が南アフリカに勝利し「ブライトンの奇跡」を起こした時の監督エディー・ジョーンズ。スポーツをする上での教科書的な存在といっていいほどのエッセンスが詰まっている。スポーツに携わる人は一度は読んでおいて損はない。

プロとアマチュアは何が違うのか」という見出しがついた文章はいつまでも見返していたい。途中で、論語から「義を見てせざるは、勇なきなり(何をすればいいかわかっているのに、それをしないことは、勇気が無いからだ。)」が引用されており、大学時代から戒めにしていた言葉が出てきて、縁を感じた。最近、大河ドラマ「青天を衝け」を見始めたが、幼少期の渋沢栄一のセリフでも使われている。本質をついている言葉なのだろう。

村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

名前の中に 色 を持ち合わせた登場人物と色を持たない主人公・多崎つくるの物語。読みながら、「自分の色ってどんな色だろう?」とありきたりな思考が浮かんで「無色or透明なのかな〜」と平凡な答えしか出てこない自分に辟易した。

親からの勧めで村上春樹さんの作品はわりかし読んでいる方だが、ポジティブな意味で、っぽく無い作品で読みやすかった。

生きている限り個性は誰にでもある。それが表から見えやすい人と、見えにくい人がいるだけだよ」この言葉は響いた。一般的には、前者が個性があると言われ勝ち。でも後者も同じように個性があって、見えないからといって個性が無いと決めつけられるのは違う。無色も一つの色だよねって、またありきたりな結論に着地させてしまって、再び辛い。

フランツ・カフカ『変身』

人生で一番、自分のアタマが追いつかない小説だった。時代背景とか、カフカ 自身や他の作品・解説を読まないと何を表しているのか理解できないタイプのやつ。勉強不足。次は『絶望名人カフカの人生論』かな。

伊坂幸太郎『逆ソクラテス』

社会や学校生活で強く生きるヒントが詰まった本。小学生・中学生ぐらいで一度読んでみたかったってのが正直な感想。

おれは、そうは、思わない」このセリフが言えたらどれだけ充実した学生生活をおくれていたか。嫌われないように、波風を立てないように、自分の気持ちや意見を押し殺し、自分の信じているものを曲げ、そんな状況で強くこのセリフを言えてたら...

やっぱり最終的には真面目で約束を守る人間が勝つんだよ。」大学である人が言ってた言葉と同じ言葉が出てきた。ヤンキーが更生してまともになってそれに皆が感動するのはそこにギャップがあるから。それなら初めから真面目な奴が一番いいに決まってる。なんでヤンキーの方が凄く見えるんだ、おかしいだろ。僕も同意見だ。

『フランス人は10着しか持たない』

最近「消費」についてヒントを探している。少しづつストックはたまっていてるがなかなかまとめるところまでいっていない。

暮らしの中の小さな楽しみに大きな喜びを見出すという考え方には共感。今は同じような毎日を繰り返しがちだが、その中にどれだけ見出せるか。ある意味チャンスだと思っている。少し前から1日の終わりに今日嬉しかったことを一つ手帳に書き込む作業をしている。そうすると、日中いやでも探そうとするので、頭の中はポジティブな回路になるのでお勧めしたい。人間は見たいようにしか見えない生き物らしく、それなら逆にポジティブに見ようとしてアタマを騙してしまえばいい。

加藤シゲアキ『ピンクとグレー』

加藤さんの『オルタネート』が本屋大賞にノミネートされ、まだ読んでいないが、処女作は読んでおかねばと思い購入。前半はのめり込めなかっただが、後半から終盤にかけてどっぷり世界に入り込むことができた。最後の場面は圧巻の描写だった。

NEWSの加藤さんが小さな頃からジャニーズでどのような立ち位置で活躍してきたかはわからない。でも、前半部分における親友への嫉妬は心当たりのあるものでドキりとさせられた。どの世界でもそうだろうが、友人が有名になっていくときに傍にいる者の気持ちはなんとも言えないものがある。高1の時、最終選考で国体のメンバー選考に落ち、県を代表した選手たちが全国大会準優勝。卒業後、高校の同期がJ1の舞台へ。大学卒業後、先輩後輩が自分より上のカテゴリーで活躍するのをDAZNで観戦する日々。親友が活躍していく中でダメになっていく主人公の心情に共感を覚えた。

そこから主人公の姉の言葉が妙に刺さる。「真吾(主人公)、やれることの全てをなるべくやりなさい。やりたいことじゃないよ、やれること。私は今回それをする。」現状から抜け出すにはここにヒントがあるかもしれない。

梨木香歩『西の魔女が死んだ』

名作はおさえておこうシリーズ。小さい時に映画では観たことがあったが、改めて小説で読みたくなった。思春期の描写が全面に出ていて、なんとも懐かしい気持ちに。両親よりも、祖父母が子どもに与える大きさについて誰かレポートを出して欲しいぐらい、思春期に心を許せる祖父母の有無は今後の生活に影響を当てると思う。

いちばん大切なのは、意志の力。自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力。」西の魔女(主人公の祖母)の言葉であるが、人生の岐路に立たされた時、この力がないと大変なことになる。高校も大学の進路選択も、日々勉強するかどうかも徹底的に自分で決断させられてきた。勉強しなくても困るのは自分自身だし、高卒でも働くことはできる、といったようなことを言われたときは子どもながらに少し焦った記憶がある。今となっては感謝しているが、当時は決められたことをやって、決められた進路に進むのは楽で良いなと感じていた。でも、それだけでは後々絶対に困る。必ず自分で選択しないとダメなときが、また訪れるから。

『ラ・ロシュフコー箴言集』

箴言集(戒めの言葉。教訓の意味をもつ短い言葉。格言。)であるので、印象に残った言葉を記しておきたい。

あまりにも急いで恩返しをしたがるのは、一種の恩知らずである。
基本的にGiveしてもらったことに関してはTake、いつかを御恩を、という気持ちがある。でもこの言葉を聞いて、もらったもの(物質的、精神的に関わらず)に対してすぐに返してしまうと、それ相応のものを返してしまいがちになる。仮に、何かを教えてもらったとして、すぐにお礼するのではなく、教えてもらったことを実践に生かし、自分の身になったところで結果として恩を返す。そのような形の方がかえって大きな恩になるのかも知れない、とふと考えた。

われわれは、どちらかといえば、幸福になるためよりも幸福だと人に思わせるために、四苦八苦しているのである。
なんとも耳が痛い言葉。自分の中で「消費」をテーマとして持っていると言ったが、この消費においても同じようなことが考えられる。自分が幸せになりたいと思ってそれらを買っているのか、それを買う自分を見てもらうことで満足しているのか、よくわからなくなるときがある。振り返ってみれば、自分のために、他者を気にせず購入したものは無かったかも知れない。友だちが持っているから、これを持っていることがステータスだから。そろそろその思考から抜け出したい。

神は、自然の中にいろいろな木を植えたように、人間の中にいろいろな才能を配した。それで一つ一つの才能は木それぞれと同じに、いずれも独自の特性と働きを持つようになっている。だから世界一立派な梨の木も、ごくありふれた林檎を実らせることはできないし、最も傑出した才能も、ほかのごくありふれた才能と同一の結果を生むことはできない。
本質をついていそうだし、何といってもこのような言葉を聞くと、自己肯定感が上がる。でも、それから先が大事。自分に何ができて、何ができないのか、自分のフィールドを見極めつつ、新しいフィールドにも種をまいていきたい。活躍できないフィールドに立って、ようなしにならないためにも。

太宰治『斜陽』

感じたことはあるが、この作品に対して自分の感想を言うのがおこがましい気がしてならない。なので、もう少し本を読めるようになってからもう一回戻ってきたい。

原田マハ『楽園のカンヴァス』

以前から友人のストーリーで気になっていた原田マハさんの作品を初めて読んだ。美術・芸術の知識の無さゆえに敬遠していたが、知識がなくても物語がしっかりと入ってきて、著者の描写に感服。

アートは友だち、美術館は友だちの家」と、アートが身近にあったことの表現として出てきていたが、無理やりサッカーに転用するなら、「サッカーは友だち、スタジアムは友だちの家」となるだろうか。週末にスタジアムに遊びにいく、そんな感覚でサッカーやスタジアムが身近に感じられる日が来るといいな。それぐらいの気軽さが必要なのかも。

本田直之『レバレッジ・リーディング』

著者の本田さんは読書を投資活動としてリターンを得るものとして捉えていて、1500円のビジネス書を読んだら、それが将来15万円分の利益に繋がるといった話があった。100倍までの感覚はなかったが、大学生のときは今読んでいる一冊が将来自分の年収を1万円上げてくれるかも知れない、とモチベーションを保っていた。インプット→アウトプット→アウトカム(成果)、アウトプットで終わらず、その先に結果や成果、行動につながらなければ意味がない。今読んでいる本も、自分にいつか大きな利益をもたらしてくれると信じたい。

宇佐見りん『推し、燃ゆ』

今年の芥川賞受賞作。
内容もさることながら、著者の宇佐見りんさんの年齢に驚かされる。1999年生まれ。個人的に年齢はただの記号だと思ってはいるが、自分より生きている時間が短い人がこんなにも人に刺さる文章を書けることに、嫉妬を通り越して、もはや諦めの気持ちに。芥川賞や直木賞がなんなのかを詳しく理解もしていないんだけども。

現代において、ほとんどの人が「推し」もしくは推しまではいかずとも好きな芸能人や有名人は?と聞かれたら一人は答えられる。それがジャニーズやアイドルであるか、スポーツ選手の場合だってあるだろう。また、自分が好きなものというところまで広げれば、人物ではない対象も入ってくる。そういった対象に転用して考えれば、全ての人にとって「推し」は存在する。

体力やお金や時間、自分の持つものを切り捨てて何かに打ち込む。そのことが、自分自身を浄化するような気がすることがある。つらさと引き換えに何かに注ぎ込み続けるうち、そこに自分の存在価値があるという気がしてくる。

僕にとっての「サッカー」をこの文章に当てはめてみるとしっくりきてしまう。小さな頃から、みんなが遊んでいる時間も、友だちが家族で旅行に行っている期間も、クラスメートが受験勉強に励んでいる間も、ゲームを買うはずだったお金も、ほとんどがサッカーに関わるものに変換されてきた。それだけ犠牲にしてきたからと危なげな自信を抱え、そのチームでサッカーに打ち込むことが自分の存在価値を唯一示してくれる気がしていた。

そして、この物語も含めて「気がする」が重要な要素である気がしてならない。

青山美智子『木曜日にはココアを』

久しぶりに心温まる小説を読みたい!と思っている方にぜひオススメしたい本。それぞれの物語が後半にかけて徐々に繋がっていき、心地良くて、ほっこり。もちろんココアを飲みながら読了。ココアは牛乳でパウダー多め派。

表紙はミニチュアアーティストの田中達也さんが担当。出身は熊本で、現在県内で田中さんの展示会やってるのでそちらもぜひ!

斎藤幸平『人新世の「資本論」』

衝撃度で言えば、『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』的な感覚があった本。
仕事柄、直接的に自分に関係ない事が多いけれど、いつどんな分野の仕事につくかわからない。自分が住んでいる世界がどういった方向に進んでいくのかについては、少しでも関心を寄せて、自分の意見を言える人間ではありたい。3.5%の人々が非暴力的な方法で立ち上がると社会は大きく変わるらしい。その3.5%になれるか。山口周さんの本にもあったけれど、やっぱり大きな流れとしては、芸術だったりスポーツだったり、人間らしさの活動が求められていくと思うんだよな〜

スティーヴン・ガイズ『小さな習慣』

いまだに読書以外の習慣が皆無なため、なんとか三日坊主を卒業する手立てを探したい。新しい習慣作りにかかる期間は平均66日。脳はゆっくりした変化だけを受け入れる。習慣づくりのためには失敗しないほど目標を小さくすることが大事。そこからプラスαとしてのおまけを意識。また2ヶ月後に結果報告しよう。

青山美智子『お探し物は図書室まで』

本屋大賞ノミネート作品。『木曜日にはココアを』の青山先生。
小さな「ぁぃぅぇぉ」の使い方が絶妙。『ぐりとぐら』の絵本が出てきて久しぶりに読みたくなった。途中で「水曜日のネコ」が出てくる。これが何かパッと思い浮かぶ人は気が合うと思う。

お探し物は、本ですか?人生ですか?」帯の言葉にビビっときたら読んでみるのもいいかと。そっと背中を押してくれる言葉が見つかるはず。僕の場合はココかな。

作り手の狙いとは関係のないところで、そこに書かれた幾ばくかの言葉を、読んだ人が自分自身に紐付けてその人だけの何かを得るんです。

町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』

読んでいて「苦しかった」と多くの人が読後述べる理由がわかる。それぐらい町田さんがリアルに近い描写をしているからこその苦しさだと思う。改めて言葉でイメージさせる作家って凄い。


読後はこんな言葉が浮かんだ。
99回のムチと、1つのアメが人生を狂わせる
DNAとか、血の繋がりとか考えさせられた。

原田マハ『ジヴェルニーの食卓』

原田さん2作品目。
昔、美術館で観た、ゴッホ、アンリ・マティス、エドガー・ドガ、メアリー・カサット、ポール・セザンヌ、ピカソたちが小説の中で生活していることに感激。100年以上も前の人たちが描いた絵を目の前で観たときは少し不思議な感覚があった。描いた当時には受け入れられなかったものもあって、それなのに異国の地で描かれたものを、多くの人がお金を払ってみにくる。やっぱり同じものなのに、時代や考え方が変わるだけで作品そのものに対する評価が変わってしまうことはなかなか自分には無い感覚。頭では理解していても不思議な感じになる。

芸術学部にいた大学からの友人は、美術の教員をしながら今も作品を作り続けている。誰がなんと言おうと、自分が「良い」と信じたものを作り続ける姿勢はかっこいい。他人に評価に惑わされず、自分の感性に忠実に生きる芸術家がかっこいいと思う反面、いきづらさも抱えていそうで、まだまだそのカッコよさは手に出来なさそう。

本作では出てこなかったが、美術館で観たエドガー・ドガの「小さな踊り子(ピンクと緑)」は忘れられない。原田さんの言葉を借りれば、「写実的というのではなく、現実的」絵画も平面に描かれているけれど、実際に近くで見ると表面がゴツゴツしている作品もある。同じものを見るにしても、やっぱり生で見るに限る。サッカーもスタジアムで見るのが一番迫力が伝わってくる。

伊与原新『八月の銀の雪』


伊与原さんは、登場人物のバックボーンだったり、見えない部分をすごく大切にしているように感じた。小説なんて言ってしまえば、全部そうなんだけど、他人から見えている外側だけでその人を評価するのではなく、見えない内側の部分を見る、推測する。5つの短編集だったけれど、どの作品も科学の神秘性だったり分かりやすいテーマの裏にそんな想いがあったような…


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