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1000のおむすびを食す男 第1話【漫画原作部門】


第1話 旧国道50号線沿い。81歳のおばあちゃんがたった1人で40年間続けてきた昭和レトロなおむすび


【あらすじ】
主人公は、40代のしがないサラリーマン「飯田結太(めしだゆうた)」

東京新橋にある小さな広告会社の万年課長。会社ではパッとしない存在。
そんな彼が少ないお小遣いの中で見つけた楽しみ。
それは、全国のおむすび屋さんを巡り、おむすびを頬張って幸せな気分になること。

日本のアイデンティティフードであるおむすびを通して、その美味しさだけでなく、そのおむすびをむすぶ人のストーリーを伝えていく。
さらには、食文化の大切さや、人や地域とのつながりを広げていく。

読んだ人が笑顔になっちゃう、ほっこりがたくさん。
人との関係が希薄になりがちなこの時代だからこそ、多くの方に読んでほしい物語。

プロローグ


ある調査によるとサラリーマンのお小遣いの平均は、40代で40000円。
使用用途でいちばん比率が高いのが昼食代で、その平均額は1日604円だという。

お昼休み、東京のオフィス街のコンビニエンスストアには、いつものように長い行列ができている。
最近の物価の値上がりもあって、お弁当にお茶をつけるだけで、サラリーマンの昼食代の平均額を超えてしまう。

以前は、ちょくちょく食べていたカレーやラーメン。
最近では気軽に手が出せなくなった。
テレビの番組を見ると、海外からの観光客が、安い、安いと言って、高級な海鮮丼や特上のうな重を食べている。

こんなに、毎日、頑張っているのに。
なぜ、僕たちは、こんなに報われないんだろう。

明るい未来が描けない。
ランチの時間なのに、後ろ向きな気持ちになってしまいそうになる。

そんな、時代だからこそ・・・
前向きに優しい気持ちになれることが必要なのかもしれない。


第1話本編

広告会社と言えば聞こえがいいが、うちみたいに小さな会社はなんでもやらないと生き残っていけない。
今日は、店頭ポスターの印刷立ち合い。茨城県にある印刷工場へやってきた。
印刷立ち合いは、うまくいかないと何度もやり直しになり1日仕事になる。
ところが、今回はスムーズに進んで予定より早く終わった。

時計を見ると、13時過ぎ。
ちょうどお昼時だ。

お昼ごはん。
サラリーマンにとっては、唯一にして最大の楽しみ。
でも、少ないお小遣いの中ではできる限り節約したいもの。

その中で、自分が見つけた楽しみ方をみなさんに伝えちゃおうと思う。



茨城県の筑西市、旧国道50号線沿いに2本ののぼりが立っていた。そののぼりには「おにぎり」「営業中」と書かれている。

これがこのお店が営業している"しるし"らしい。




味がある。
という表現が合っているかわからないけれど・・
かなり年季の入った店構えのおむすび屋さんが、そこにはあった。

通りに面した窓ガラスには「おおくらや」と書かれていた。
これが、このお店の名前なのだろう。




カラカラカラ~
ごめんくださいー

お店の中は、セピア色という表現がぴったりするような、かなり昭和レトロな雰囲気だ。

「ようこそ。いらっしゃい」

どうやら、おばあちゃんがひとりでお店をやっているみたいだ。


カウンターの上には作りおきのおむすびはなく、注文してから握ってくれるスタイルみたいだ。

厚紙にマジックで具が書いてあった。

しゃけ
たらこ
おかか
うめ
こんぶ
ごま
シーチキン
まぜごはん


いわゆる定番のおむすびの具が並んでいる。
(焼きおにぎりは、やっていないとのこと)


最近のおむすびブームの影響で、トリュフだとかローストビーフだとか高級な具を入れたおむすびなんかも出てきている。
そういうのもたまにはありだと思うけれど、注文するときに緊張してしまう。


そう考えると、定番の具はその名前を見ただけでほっとできるよなあ。

でも、この中から選ぶとなると…

悩むよなあ。
なににしようかな。

うーん。



どの具がオススメなのか、おばあちゃんに聞いてみた。


「そうね。鮭は毎日、焼いているのよ」

それだ!


鮭おむすびは、焼いたり、ほぐしたり、フレークだったりといろいろなタイプがある。梅や昆布など他の具材に比べて手間をかけると美味しいものができる具材でもある。

だから、鮭おむすびが美味しいと、他のおにぎりも美味しいというのが、これまでの経験上あてはまるんだ。



お店の中には、出来立てのおむすびが食べられるイートインスペースもあった。

年季は入っているけれど、清潔感はある。
席に着くと不思議と心が落ち着いた。


「お待たせ」

しばらく待っていたら、大きな三角形のおむすびが運ばれてきた。

熱々でふっくらした感じが、おむすびを持った手からも伝わってくる。


いただきまーす!


がぶっ。

はふはふ。

うわぁ。旨い!

お米がとても甘くて。
米粒ひとつひとつが潰れないように、ふんわりと握られている。


このお米は、おばあちゃんの親戚がこのお店の近くの田んぼで作っているコシヒカリ。お店の裏を流れる小貝川が米づくりに適した土壌にしているらしい。

「米だけは本当に美味しいのよ」

美味しいお米があったから、40年以上前におむすび屋さんを始めたと、おばあちゃんは笑顔で話ししてくれた。


なるほど。

でも、美味しいのはお米のおかげだけではない。

例えば、塩加減。
しっかりとまんべんなく表面に塩がまぶしてあって、それがまたいい感じに利いている。

うんうん、旨い。

そして、中には甘塩の鮭がたっぷり。
これがまたお米と合って美味しいのだ。

この鮭は、毎日おばあちゃんが焼いて、丁寧に丁寧にほぐしているとのこと。

作り手の優しさが伝わってくる。


しかも、これで120円!

開業した43年前が100円だったらしく、それからほとんど価格を変えていないらしい。

今は値上がりの時代だ。
コンビニおにぎりだって200円近くするようになった。

それなのに、この大きさでこの美味しさでこの価格。
これはもう、感服するしかない。

茨城旧国道50号線沿い 。
81歳のおばあちゃんが40年以上ひとりで握ってきた、優しさがいっぱい詰まったおむすび。


ご馳走たまでした!


(2話以降もお楽しみに)


第2話  
茨城 旧国道50号線。81歳のおばあちゃんがたった1人で40年間続けてきた昭和レトロなおむすび②


第3話
埼玉県与野駅 クリーニング屋さんのお母さん方が、自宅を改造してつくった隠れおむすびカフェ


第4話
船橋市場 50年間 市場で働く人々を支えてきたメニューに載っていない"お母さんのおむすび"




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ファンベースデザイナー、地域創生プロデューサーなどしてます。 おむすびnoteを毎日書いてたり、浦和レッズを応援したり… みんなが、好きなこと、応援したいことを素直に言える世の中にしたいなあ。 皆さんと、いろいろなコラボをしたいです! ぜひぜひご連絡ください!