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【治療例3】ASD・ADHD(7歳男児)


食事の改善に熱心な親御さんの助けで、自閉症スペクトラムおよびADHD症状の治療に成功した児童の事例です。

ソース:みぞぐちクリニック(東京)

普段よくお世話になる統合医療(オーソモレキュラー)の先生方の学会とはまた別の研究会に属される方です。

症状

患者:男児、7歳
症状:主としてコミュニケーション・言語、注意欠陥・多動、学習の面で問題を抱える。集団行動ができない。聴覚と体性感覚の過敏。
経歴:生後から運動系の発達が遅く、3歳で自閉症スペクトラムの診断を受けて療育開始。5歳のころ食生活を改善し、高タンパク、低糖質、グルテン・カゼインフリーを行ったところ、多少の改善が見られた。

根本原因

鉄欠乏(潜在性)
ビタミンD欠乏
血糖値スパイク
←いずれ記事を書きます。
(詳細は下記記事を参照)

治療結果

期間:1年4か月
・コミュニケーションにおいての急激な成長を学校の先生から報告される
・集団行動が可能になり、周りへ注意を払うようになる
・知覚過敏の改善

下図は受診9か月時点での改善状況。親御さんの観察や学校の先生の報告によるスコア付けと思われる。

https://mizoclinic.tokyo/case/6848/

鑑別・治療ステップ

血液検査からの不足栄養素の鑑別

https://mizoclinic.tokyo/case/6848/

初診時にフェリチン(潜鉄)ビタミンDの欠乏がありました。

前者はドーパミンやセロトニン・ノルアドレナリンの合成、後者はセロトニンとGABAの合成に必要な栄養素です。

ネットに良い感じの画像があったので拝借

「ビタミン・ミネラルの不足などで発達障害が起こるんですか?」

とよく聞かれますが、遺伝性あるいは疾患性の要因で、通常の食事では補いきれないビタミンを人体が必要とすることはよくあります。
死にはしませんが、心身の健康を害します。

たとえば、カゼを引いただけでビタミンCの消費量ははね上がります。

また、腸内細菌はビタミンB群を生産して人体の健康を保ってくれますが、腸内フローラの状態が悪いと、治療終了までサプリメントで補う必要が出てきます。

話を戻します。

このケースの場合、
フェリチンは鉄分のことですが、一般的な健康診断で鉄欠乏を見極めるヘモグロビンとは違い、細胞の中に貯蔵される鉄の量の指標になります。
ヘモグロビンではなくフェリチンの値が下がることを潜在性鉄欠乏などと言ったりします。

(※ちなみに、鉄欠乏性貧血はヘモグロビンの値が正常値であってもフェリチンの値が下がると発症します。詳しくはこちら

以上より、服薬はサプリメントで足りないビタミン・ミネラルの補充を中心に行ったようです。

食事制限

この子の場合は、親御さんの判断で初診前からグルテン・カゼインフリーの食事制限を行い、それにより症状が多少改善しています。

リーキーガット症候群と腸内フローラの状態を厳密に調べたか、記事からは不明ですが、年齢が若いためそれらによる有害物質の侵入をさほど懸念しなくてよいのも事実です。

食事は最初の6か月はグルテンとカゼインを徹底的に制限して、動物性タンパク質の量を増加しました。
腸(腸壁細胞)に問題があっても短期間で自然修復可能な状態だったのだと思われます。

そして血糖値スパイクですが、これは食後に血糖値が乱高下して強烈な眠気などの症状が出る疾患です。

ヘモグロビンA1Cの値からは鑑別できない血糖障害ですが、最近のスマートウォッチの普及などによって、標準医療の世界でもようやく知られてきた概念です。

そのため、血糖のコントロールが正常化するまで甘い物の禁止、および補食を頻繁に摂るなどの対策をしています。
(いずれ記事を書く予定ですが、血糖値スパイクは他の原因から発症することが多いので、根本治療完了までの対処療法で何とかなるケースが多いです。)


まとめ

発達障害/精神疾患の治療において、最もよくあるパターンが、
リーキーガット症候群と腸内フローラの修復をした上で、脳内に侵入した異物のデトックス
というコースです。

が、この患者は年齢がとても若く、かつ親御さんが食生活を試行錯誤しつつ改善してきたおかげで、脳内の重金属や微生物の排出まで必要がなかったケースです。

また、栄養素の欠乏はサプリメントで簡単に対策できますので、きちんと検査を行い、見落としのないようにしたいですね。


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