星野源、僕たちの「孤独」と「世界」を繋げ
【星野源/『Same Thing』】
星野源、世界へ。
今、ここから新たなるポップ・ミュージックの変革が始まる。
今回のEP『Same Thing』に収録されている楽曲はたったの4曲だが、このタイミングで「この4曲」がパッケージされ、全世界へ配信されることには、あまりにも深い意義があるのだ。
まず、初めて実現した共作について。
今回、星野源は、Superorganism、PUNPEEを共作のコラボレーターとして指名した。このコライト体制は、海外のポップ・シーンの時流に乗ったものではあるが、この共作により、星野のエッセンスは薄まるどころか、むしろ濃厚になっている。
"Same Thing (feat. Superorganism)"を聴いてまず驚かされるのは、星野が手がけた全編にわたる英語詞だ。
《I've got something to say/To everybody, fuck you/It's been on my mind/You know I meant it with love》
しかしどうだろう、これほどまでに彼らしい表現、一周回って久しぶりではないだろうか。《fuck you》の裏返しとしてしか伝えられない《love》の形。そのもどかしさ、その生々しさ、そしてそこに込められた信頼の証を、僕たちはよく知っているのだ。
Superorganismが編曲を担当した親近感と未知性を同時に放つトラックの威力も相まって、この愛のメッセージは、いつにも増してスムーズに日常に溶け込んでゆくことだろう。
PUNPEEとの共作によって生み出された"さらしもの (feat. PUNPEE)"も同じだ。
言うまでもなく、星野源の楽曲に、これほどまでに大胆にラップが取り込まれるのは初めてであるが、全くの違和感はない。
なぜなら、ずっと星野は「リリック」を綴り、「ライミング」をかましてきたからだ。彼の音楽にはずっと、そうしたマイペースでカジュアルなヴァイブスと、それでいてスリリングなグルーヴが通底していたはずだ。
最も特筆すべきは、トム・ミッシュとの邂逅である。3曲目"Ain't Nobody Know"において、共同プロデューサーとして参加したトムは、星野のアイデンティティを最大限に尊重しながら、その才能を世界へと羽ばたかせるトラックを作り出してみせた。
音数を極限まで絞り、ローを強調したサウンドデザインは、間違いなく、世界のポップ・シーンの最先端で通用するものだ。
そして、4曲目の"私"。
一本のギターで弾き語られるのは、コミュニケーションの本質を鋭く射抜くフラジャイルな言葉たちだ。
《あの人を殺すより/面白いことをしよう/悲しみと棒アイスを食う》
《あの人を殴るより/イチャついて側にいよう/唇が離れぬように抱く》
《この人を抱き寄せて/面白いことをしよう/手のひらが剥がれぬように振る》
星野はずっと、僕たちが抱く「孤独」と、その向こう側でささやかに輝くコミュニケーションの希求を歌にしてきた。この曲は、その最新版にして、真骨頂だ。
これぞ、星野源による全世界へ向けたセルフイントロダクションだろう。この曲が4曲目に位置するからこそ、このEPは完成するのだ。
このタイミングでリリースされる作品として、あまりにも完璧すぎる。
そして、今。
彼が提唱し続けてきた「イエロー・ミュージック」は、3組のコラボレーターの手によって、僕たち日本人のDNAに刻み込まれたダンス・フィールを犯すことなく、鮮やかに世界へ共振していく。
彼がアコギ一本で歌い続けてきた、独りぼっちのあなたが抱える「孤独」は、そのフラジャイルな輪郭を保ったまま、同じ温度で、同じ湿度で、世界へ共鳴されていく。
同じ日本人として、こんなにも誇らしいことはない。
ここから始まる、星野源の華麗なる世界進出に、ポップ・ミュージックの未来を懸けよう。
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