#036.ロングトーンって何だろう 1
ロングトーンて何だろう?
さて今回はロングトーンについて書いてまいりますが、皆さんロングトーン、していますか?吹奏楽部に所属している方は基礎合奏と銘打って毎回行っているところもあるかと思います。個人で練習する場合もロングトーンを取り入れている方は多いことでしょう。
ではそもそもロングトーンとは一体何でしょうか。
皆さんは「ロングトーンとは何ですか?」と聞かれたら、どう答えますか?
音を長く伸ばす練習?
いくつもの音階が吹けるようになる練習?
特徴的なことはこのように「ロングトーンとは?」の問いに対してとても広範囲な回答があることです。
それが答えと言っても良いのかもしれません。要するにロングトーンとは様々な目的を持たすことができるいわば「箱」のような存在なのです。
箱の役割
箱の役割とは何かを入れることです。誰かに何かを贈るために箱に入れる、大切に保管するために箱に入れる。箱は入れる中身やその目的によって役割が変わっていくものです。同様にロングトーンもそれだけでは「長く伸ばす音」という意味しかなく、なぜ長い音を伸ばすのか明確な意味を持たせることで初めてロングトーン練習をする意味が生まれます。
では今一度お聞きします。皆さんがいつも行っているロングトーンはどのような内容でしょうか。
例えばメトロノームをカチカチ鳴らし続けて、B dur(変ロ長調)の音階を8拍ずつ伸ばしては上行下行するとか、多少の違いはあれど、多分そういう方法をが多いと思います。
その方法については問題はありませんが、重要なのはその練習にどのような意味、目的、課題を込めているか、という点です。
「毎日やってるからなんとなく(惰性)」
「うちの部活はずっとこれをやってるんです(伝統)」
「先輩からやれと言われているから(受け身)」
部活動でのロングトーン練習は特にこうした残念な要素がこびりついている場合が多いように感じます。
近年部活の活動時間が削減されていく中、いかに効率的に結果に繋げていくかが大変重要な課題になっています。ですから、行うことすべてにきちんとした意味を持たせなければなりません。特にロングトーンはそれだけで時間のかかる練習です。
ロングトーンは何でも入れられる便利な箱
ということで目的を決めましょう。ロングトーンという練習は本当に便利なもので、あらゆる目的を持たせることができます。しかし、その方法も実に無限なバリエーションを組めるので、目的がきちんと達成できる(であろう)内容、方法を考え、決められることが重要です。
毎回同じ課題をすることも大切ですが、そればかりでは発展的ではありませんから、どんどん新しい方法や目標を設定し、チャレンジすることを忘れないようにしてください。
1人のロングトーンか、複数のロングトーンか
1人で行うのか、複数で行うのかでも目的や意味が変わってきます。
1人で行うロングトーン
音楽は本来、聴いて下さる方に演奏を届けることを目的としているので、奏者の基本姿勢は「自分の演奏、作品の素晴らしさ、作曲者の想いをどのように届ければよいか」「どのようにしたらそれが届くのか」を考え、工夫をしていく研究が大切です。しかし1人でのロングトーンの場合は、それより一歩手前の「自分の技術や音楽性と向き合う」時間にすべきです。
その根幹には「音をまっすぐ伸ばす技術」が絶対に必要です。音をまっすぐ伸ばすためには、体内の空気圧が安定していることが最も重要で、その状態を維持できるからこそ、様々な表現が可能になります。まずこれを覚えておきましょう。
そして、自分のイメージした音色が出せているのか、ピッチもそうですが音程感を持ち、美しく演奏できているのか、推進力のある音の持続やフレーズ感のある歌を持って演奏しているか、心を落ち着かせて音楽や楽器演奏に集中して向き合っているのか、セッティングから音を出すまでのルーティンは正しくそして丁寧か。そうした自分の内面にあるものが形となって発揮できているのかをロングトーンで確認します。
複数で行うロングトーン
一方複数で行うロングトーンは、実践的な内容、「アンサンブル」を目的にするのが良いでしょう。ロングトーンであっても、楽曲を演奏している時の同じようにこれからどのような演奏をするのかを具体的に決めてお互いの認識を共有し合い、イメージの方向性を揃えます。したがって複数で行うロングトーンは個人練習(研究・実験)で手に入れた様々なテクニックの引き出しから何をチョイスするのか、その引き出しをスムーズかつ瞬時に見つけて発動できる力を伸ばす時間と思ってください。
一人のロングトーンも複数でのロングトーンも、どちらにも言えることは惰性で行ってはならない、ということです。毎日決まりきったメニューを反射的に行わないようにし、いつも新鮮な気持ちで取り組みましょう。なぜそれを行うのか、何ができるようになりたいのかあらかじめ考えておきましょう。
では実際にどのような練習をすると良いか、一例をいくつか提案してみたいと思いますが、それは次回の記事で紹介します。
まずはその前にご自身で、パートやバンド全員で意味のあるロングトーンにするにはどんな方法で行うべきか。今必要なことは何か、実践していることをより良いものにするために何か変えられることはないか。これまでの方法に疑問はないかなどあらゆる角度から検証してみましょう。
それでは、また次回!
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荻原明(おぎわらあきら)
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