「戦時の嘘」に描かれた戦争プロパガンダ⑦~幻の虐殺事件
前回はこちら。
クールベック・ルーの虐殺
「戦時の嘘」では、「ニューヨーク・タイムズ」紙(1922年)に掲載された話として、次の笑い話のようなエピソードも紹介されている。
「磔にされたカナダ兵」
「野蛮なドイツ人」の犠牲になったのは女性や子どもばかりではない。1915年5月10日、「タイムズ」のパリ特派員は次のニュースを伝えた。
同紙は5月15日に続報を出しており、詳細な犯行の様子を描いている。しかし注意深く読めば、記者が自ら現場を見たわけでも、公的な発表にもとづいて記事を書いたわけでもなく、「証人からのまた聞き」に過ぎないことがわかる。この「磔にされたカナダ兵」も世間の話題になり、下院で質問がなされている。
1919年、「ネーション」紙がE.ローダーという兵士の手紙を公開し、「カナダ兵の磔刑」が再び耳目を集めた。その兵士は第二ウェスト・ケント連隊におり、磔にされたカナダ人を見たと述べていた。しかし、同紙は後になって、ロイヤル・ウェスト・ケント連隊にはそのような名前の兵士は名簿に載っておらず、第二連隊は大戦中ずっとインドにいた事実を知らされることになった。
(続く)
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