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未電化地域の暮らしに密着!ユーザーニーズを探るため、価値観の理解に没頭した3週間

こんにちは、東芝のUIデザイナー小林Kです。
日本もだんだんと暑くなってきましたが、皆さんこの夏はどこか遠くへ行かれますか?僕は2年前の夏にとあるプロジェクトでバヌアツ共和国という南の島国へ行ってきました!

何をしに行ったかというと・・・「ユーザーリサーチ」です。

「ユーザーリサーチ」とはサービス設計における要件や現状の課題を見つけるために、利用者となり得る人や実際の利用者の行動を観察することです。サービスを利用する過程や、ユーザーの持つ価値観など、サービス設計に必要となる貴重なデータが得られます。

 この記事では日本から遠く離れたオセアニアの島国バヌアツ共和国で、デザイナーが現地のお宅にホームステイをしてユーザーリサーチをおこなってきた体験談を紹介します。ぜひバヌアツの空気感を感じながらお読みください! 


1章:「未電化」という社会課題

 地球上には今もなお、電力を自由に使えない「未電化」な地域が数多くあり、グローバルで解決していくべき大きな課題となっています。
僕が訪れたバヌアツ共和国にも、多くの未電化地域があります。

バヌアツ共和国とは:
・南太平洋に位置する83(!)もの島からなる島嶼国。
・公用語は英語、フランス語、ビスラマ語。
・電力のみならず水道などインフラが未整備な地域が多い。

出典:総務省統計局 世界の統計2023 世界地図

東芝は、このような社会課題に対し「再生可能エネルギー×シェアリングサービス」という切り口で、誰もが自由に電力を使える世界を目指し、新しい事業「スマホアプリを使ったLEDランタンや電気製品のシェアリングサービス」を推進しています。

僕は、この新たな事業の挑戦に事業部メンバーと一緒に参加し、現地のユーザーリサーチ、ニーズや課題の発見、サービスの仮説検証を行うことを目的に、日本から約6,000km、遠く離れたバヌアツ共和国に向けて出発しました!

2章:リサーチ対象の未電化地域の村落へ

まだ見ぬ地に期待と不安を膨らませながら、東京羽田からシドニーを経由し、バヌアツ共和国の首都ポートビラへ。
そこからさらに車やボートでの移動を経て、2日かけてリサーチ対象の村へ移動しました。

その村は、熱帯雨林に覆われた小さな島 にあります。島には電気だけでなく水道やガスなどの生活インフラはありませんが、自然豊かで空気の澄んだ、穏やかな時間が流れる場所で、都会の喧騒の中で生活する僕にとってはとても心地よい安らぎを感じました。

村に到着後、すぐに村の人々から歓迎のセレモニーを受け、まるで映画の世界に入ったような気分でした。ここから3週間、この村で現地のサポートメンバーのお宅にホームステイさせていただき、ユーザーリサーチを行います。

3章:バヌアツの生活スタイルを身をもって体験

村落では、洗濯など生活で使用する水は井戸から汲み上げます。火は薪でおこします。また、漁に出て魚を捕ることも村で暮らす人々の大切な日課です。そうした日々の仕事に僕たちも参加することで、バヌアツの人々の考え方や生活スタイルに対する理解を深めると同時に、これからの事業化に向けて彼らの信頼獲得に努めました。

作業で汗をかいてもシャワーがないため、海にダイブ→井戸水をかぶって終了という生活は、東京で暮らす僕には過酷でしたが、現地の生活スタイルを身をもって体験することで、彼らの文化に対する理解と尊敬が深まりました。

街灯もないので、夜になると外は真っ暗で、移動はランタンの明かりが頼りでした。

食事は、滞在させていただいた家族が毎日用意してくれました。芋や野菜、魚を中心とした食事が多いです。暑い季節だったので、みずみずしいフルーツが身に沁みました!

特に美味しかったのはカトゥーという揚げパンです。淡白な食事が多い中、朝食にこのパンが出されるときはテンションが高かったです笑

4章:村人の価値観やニーズを明らかにするためのワークショップ

現地調査ではいくつかのワークショップを実施しました。今回は国籍や言語、文化が私たち日本人とは異なる人々から意見を引き出すため、ワークショップの流れやそこでのやりとりについてはいつも以上に慎重に検討しました。

特に生活習慣の理解を深めるワークショップでは、性別による発言権の差を考慮して、男性グループと女性グループに分けて行いました。

彼らは早朝から村の教会に行く習慣があり、日中は畑仕事・薪集め・漁など、女性も力仕事をしていて、昼食後の「take a nap(お昼寝や休憩)」が一日の中で最も好きな時間とのことでした。そうした生活習慣から村の歴史や年間のイベントなどについても聞かせていただくことで、村民たちの価値観を明らかにしていきました。

サービスに対するニーズを導出するワークショップでは、LEDランタンや電気製品などのシェアリングアイテムのうち、最も魅力を感じたアイテムに投票してもらうなど、村人たちの生の声から具体的なニーズを拾い上げていきました

LEDランタンはすべての参加者に人気でしたが、中には男女のニーズが大きく分かれたアイテムもありました。

おわりに:全ての人々が豊かな生活を送れる世界を目指して

バヌアツ共和国でのユーザーリサーチを通して、対象ユーザーの生活を身をもって経験することでそこで暮らす人々の価値観に対する理解を深める「参与観察」の可能性や効果を改めて実感し、サービス開発の上流にデザイナーとして参加することのやりがいや意義を見出すことが出来ました。

また、快く受け入れてくれた村の方々をはじめ、世界中に存在するまだ電力を自由に使うことができない人々がより豊かな生活を送れる世の中になってほしいという願いをさらに強く持つようになりました!

今回の現地調査では、サービスの実証実験のためのスマホアプリのプロトタイプも現地の人々に利用してもらいました。村人たちの反応・結果についてはまた別の記事でお話しできればと思います!お楽しみに!

ライター:小林k


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