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回し読み

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ぺけぽん
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#エッセイ

キミの涙が教えてくれたこと

もう私はこんな涙を流さないのだろうか。つぎつぎと溢れ出す滴をぬぐいながら、ぼんやりとそう思った。 長男がお絵描きや絵本作りにハマっている。口癖は「ママ、紙ちょーだい!」。画用紙に、ノートに、チラシの裏に、自分と弟が好きなキャラクターや空想の世界を嬉々と描く。 絵やイラストの才能を早々に諦めた私には、その自由な発想と作風すべてが輝かしい。4歳の手から生み出される宝物。 溢れすぎて収拾つかないし、壁の至るところに貼りまくるし、我が家のリビングはカオスに近付く一方なのだが、それ

言葉への感覚について思うこと

 「ググる」はGoogleで検索するという動作から来た言葉で、ネットで調べること全般を指して使われる。「ツイートする」はTwitter に投稿することを指している。「LINEする」はLINE を使用してメッセージを送信することを指し、「フェイスブック」はFacebook という実名登録が基本になっているネットワークサービスを指す。  わたしはこれらの言葉を小説の中で使わない。  最近、文芸誌に載っている小説などでも、これらのような言葉、ある特定の企業が提供するサービスの固

拝啓 20年前の私へ

「20年前のちーちゃんから30歳の千裕さんに手紙が届きましたよ」 母からの連絡には、フェルトペンで書かれたのであろう拙い子供の書く漢字で私の実家の住所と宛名が記された茶封筒の写真が添付されていた。何をそんなアンジェラ・アキみたいな話……と首を傾げかけたところで、ばちんとその記憶は蘇ってきた。小学4年生、ちょうど20年前、国語の授業で「20年後の自分に宛てて手紙を書く」という時間があったこと。あの時先生は確かに「この手紙は20年間大切に保管されて、必ず20年後に皆さんのもとに

なぜなら、わたしがうれしいから。

車がすきだ。なぜか昔から、ずっと車という存在がすきだった。 だから特別な好意を持っているわけでもない大学の男の子からドライブに誘われたとき、「古いプレリュードに乗れる」、それだけでOKしたことがある(そして首都高で3回転半の事故を起こされ、死にかけた)。 だから母からは、「就職で鹿児島に帰ってきたら好きな車を買ってあげる」と餌にされ、ちょっとだけこころが揺れたこともある(そのときわたしが候補にしたのは、いま乗っているのと同じ車種だ)。 だからいま、世田谷区の中でもかなり

老若男女よ、マジパン畑で愛を叫べ!

バレンタインデーにチョコレートをプレゼントするという習慣は、日本の健全な若者たちがチョコレート会社のマーケティング戦略の罠にまんまとかかってしまった結果だというのは既によく知られている。 それでもこの日、女性から男性にチョコレートを添えて愛を告白し、1ヵ月後のホワイトデーをドキドキしながら待つという一連のイベントは、告白のタイミングがなかなか掴めない女性たちにとってはドンと背中を押してもらえる絶好のチャンスでもある。 おそらく、初恋の彼に告白をしたのはバレンタインデーだっ

己の腐海を覗いた私たちは、ガーデンプレイスを未だ知らない

みなさんは、『耳掃除』をどのくらいの頻度でやっているだろうか。 昨今の風潮では、耳掃除は中までやるなと言われてる。 私もそれに倣って、外側は掃除するものの、中までの掃除はせいぜい2週間に1回程度だ。 さて、なぜそんな私が今、耳掃除の話をしているかと言うと、最近、耳掃除専門店に行ってきたからだ。 きっかけ どうして、耳掃除専門店(以下、イヤーエステ)に行ったかというと、今年の夫への誕生日プレゼントがコレだったからだ。 夫に、「外食いく?」と聞けば、小食の夫は「うーん」と

三鷹の小さな小料理屋にて

東京都、三鷹駅。 20代前半の数年間、わたしはこの街で暮らした。 ずっと赤羽で暮らしていたわたしに、「街によって治安はぜんぜん違うのですよ」と教えてくれたのが三鷹だった。緑豊かで街はきれい。タバコの吸い殻が落ちていないし、ずらりと並んだ自転車のほとんどに、駐輪違反の紙がぶら下がっていることもない。ジブリ美術館が近くにあり、「風の通り道」と名前のついたセンスのいい道がある。 赤羽の「食材はとりあえずひとつの鍋でまとめて煮ておけ!」というようなごっちゃり感も好きだ。けれど、

才能に悩んだら、ぜんぶ物語のせいにしてしまえばいい (#教養のエチュード賞)

「君って心が安定してるよね」 会社の考課面接にしては、ずいぶん曖昧でゆるい言葉だなと苦笑いしていると 「あ、一応、褒めてるんだよ?」 と申し訳程度のフォローをいただいた。 いろんな企業で、やっぱり社員のメンタルヘルスが課題となっているようです。仕事量はそのまま、責任もそのままに部下を働かせられる時間は激減・・・管理職は大変そうだなぁ。できることなら、なりたくない。 「心が安定」しているのが良いことなのかは分からないが「秘訣は?」と聞かれると、コツはやっぱりひとつしかない

みぞおち

「……。」 私は一人、テレビの前で突っ立っていた。 画面の中には、真剣な眼差しの奥に轟々と炎を燃やした男性が真っ直ぐに立って、真っ直ぐに話していた。向けられたマイクにではなく、質問を投げかけてくる記者達にではなく、カメラのレンズの向こうに向けて。画面の向こうのこちらに向けて。 ガタタンッ。 電車が急に揺れて目が覚めた。いつの間にか眠っていたようだ。目を力なく開けたまま。虚ろな夢をみていたようだ。 西日が目にしみて、くっと下を向く。 なんで今頃あの場面を、あの人の眼を思い出

低空飛行のお弁当づくり #ハッピーになるかもしれない朝エッセイ

あまり大きな声で言いにくいご時世だけど、昨日は飲み会だった。 呑むのが好きなんで、次々に、おいしそうな地酒を出されたら、試さずにはいられないじゃないか。 仕事関係の年配の方との会だったんだけど、年配のおじさんは、どうしてあんなにお酌が好きなんだろう。ほんとは、好きにちびちび呑みたい派なんですよ、私。 気が付けば、いつもより飲む量が増えてしまって、ほろ酔いを通り越して、酩酊状態に。 案の定、二日酔いとまではいかないけれど、今朝はちょっとぼーっとしてる。 でも、いつもの時間に布

結婚式のプレイリストだよ

先日、結婚式を挙げました! 前置きはさておきね、私、ほんとにこの式においてはみんなに笑って泣いて食べて、食べて食べて笑って泣いて欲しかったんです。 少し前まで、当たり前のように集って食べて笑って、たまにむせび泣いてたのに、めっきり出来なくなったこの冬からの空気が、ほんとに憎くてたまらなかった。 だから、自分への投資(主に美容)は適当にして、お料理と、そして大好きな音楽に力を注ぎました。 だから、披露宴のBGMプレイリストを惜しげなく、ここにドドーン!と大発表します!!!

書けない時期と苦手なカテゴリーについて

君のドルチェアンドガッバーナのその香水のせいだよ が頭の中で再生し続けているがこのサビの部分しかしらない。ドルチェアンドガッバーナの香水は一度も買ったことがない。ただ香水のせいだよというくらい香りというのは人の記憶に残ることはわかる。私自身は決まった香りを身につけることはないので、香水の香りで私を思い出す人は多分いないと思うが、一緒に食べた食事の香りで私を思い出す人もいるかもしれない。 今日のテーマはそれではない。 正直にいう。今、絶賛書けない時期がきた。 「私は本当

周知連絡:悪質なスパム投稿にごちういください

表題の通り、今日はちょっとした注意喚起をば。 悪質スパムが激増しておる前々からギャンブル予想とかのスパム投稿は結構ハッシュタグとかに乗っかってきていたのだが、最近note利用者が増えたせいか一段と悪質なスパム投稿が増えたようだ。 おれがざっと最近見つけたのは以下のやつ。 ・ランダム文字数でアカウントを生成し、本文に不審なリンクをのせるタイプ ・英語でポルノサイトへの誘導を促すタイプ ・中国語で偽の身分証っぽいのを販売誘導するタイプ 言うまでもなく、どれもろくなものでは

思い出、道路に転がして

小学…何年生の頃だったろうか。 2年…いや、3年生だったかも知れない。 クラスに転校生がやって来た。 先生がにこやかに彼の紹介をし、「じゃあ一言、あいさつを」と振ると、彼は挨拶をする代わりに私達をギリッと睨んだ。 強い黒目が白目の光を引き立たせ、短く濃いまつ毛の線が、眼球を際立たせていた。 ──蛇。 人の目が蛇のそれに見えることがあるのだと、その時、初めて知った。           丨 その後彼は、遅刻したり、途中で消えたりするようになった。教師を蹴ったり、クラス