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チャックま ものがたり 2「くまのぬいぐるみ」

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雨の日のお散歩でチャックまが出会ったのは…くまのぬいぐるみ!この子をこのままにしちゃいられない。チャックまとコグマの奮闘が始まる。
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「くまのぬいぐるみ」(01)

「くまのぬいぐるみ」(01)

チャックまはお散歩が大好き。梅雨の時期、雨が降っていてもどうしようもない時以外はお散歩に行きます。(まぁ、少しモノグサなので、やや短めになることが多かったですけど。)

その日も朝からシトシトと梅雨の雨が降り続いていました。コグマが「今日は雨の中を歩きたくないなぁ」と言うので、チャックまは仕方なく一人で午後のお散歩に出かけました。窓から手をふる笑顔のコグマに手を振り返して。

空は一面、濃い灰色の

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「くまのぬいぐるみ」(02)

「くまのぬいぐるみ」(02)

チャックまが見つけた時には、そのくまのぬいぐるみは既にずぶ濡れでした。濡れたおかげで体の茶色が一層濃く見えて、余計に泥みたいでした。チャックまは踏まないように、ちょっとよけて道の右側を歩いて通りました。

散歩も『やせ我慢』ながら随分歩いてきました。チャックまは意外と頑固なので、やると決めるとちょっとやり過ぎる時があるんです。天気のいい日ならこのまま歩き続けて、ぐるっと一周して家に帰るルートを歩く

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「くまのぬいぐるみ」(03)

「くまのぬいぐるみ」(03)

くまのぬいぐるみを抱っこしていたせいで、チャックまの体も泥だらけになってしまいました。でもなんだかさっきまでの辛い気持ちがなくなって、ちょっと楽しくなってきたチャックま。
「きっと今日、ひどい天気なのにボクがお散歩に出たのは、このくまさんに会うためだったんだ」
そんな気持ちになったチャックまでした。

お家が見えてきました。すると玄関にコグマがタオルを持って立っていました。
「おかえり、チャックま

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「くまのぬいぐるみ」(04)

「くまのぬいぐるみ」(04)

お風呂に入ってすっかりキレイになったくまのぬいぐるみさん。それを見ていたらチャックまとコグマは羨ましくなってしまいました。
「ボクもお風呂したい!」コグマがそういい、湧泉から少し離れた小ぢんまりした清流の溜まり場に飛び込みました。
「朝から働いて汗かいちゃったからね」チャックまもそう言いながら、足の先からそうっと水の中に入りました。

湧泉からあまり距離もないので水は思う以上に冷たいのですが、梅雨

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「くまのぬいぐるみ」(05)

「くまのぬいぐるみ」(05)

「そうと決まったら、今日のうちにいろいろと準備しておかなきゃ!」
チャックまはそう言いました。
「準備?」コグマは不思議そうです。
「そうだよ、準備!」そう言うチャックまの顔は今日のお空のように晴々としています。

チャックまが冬の間使っていた薪の残りの中から大きめのものを持ってきて、斧で薄めに割って板材を切り出しました。それをノコギリで幅を揃えたり直角を出したり。そして木材用の接着剤、そして金槌

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「くまのぬいぐるみ」(06)

「くまのぬいぐるみ」(06)

落としもの箱を組み立ててニスを塗り、しっかり乾かすのに2日掛かってしまったチャックまたち。その間くまさんはコグマとすっかり仲良くなり、もちろんチャックまもますます好きになっていました。

いよいよ落としもの箱を設置しようという日。その日はまた雨が降る、いつも通りの梅雨の日でした。

「くまさん、いよいよおうちに戻れるかな?持ち主さんが現れなくても心配しないでね。うちにいればいいんだから」
コグマは

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「くまのぬいぐるみ」(07)

「くまのぬいぐるみ」(07)

箱を設置したその日は、ぐるりと散歩道を歩いてお家に帰りました。二人ともくまさんのことが気になって仕方ありませんでしたが、設置してすぐに持ち主が現れるなんていう偶然があるわけないのもわかっていました。

「少しは放っておかないと、見つかるものも見つからないもの」
その日はお互いにそう言い合って、努めてくまさんのことを考えすぎないようにしていました。

暗くなってきて、なんにしてももう箱を見に行ける時

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「くまのぬいぐるみ」(08)

「くまのぬいぐるみ」(08)

その夜は雨がシトシト降る音が聞こえる中、くまさんのことを思いながら二人は床につきました。
チャックまはいつも通りな感じで、ベッドに入ってしばらくするとスースー寝息が聞こえてきました。
コグマは、いつもならチャックまより早いくらい寝入りが良い方なのですが、今日はなかなか寝付けませんでした。
「くまさん大丈夫かなぁ、寂しくないかなぁ、寒くないかなぁ…」
コグマはいつも寝ているマットの上で何度か寝返りを

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「くまのぬいぐるみ」(09)

「くまのぬいぐるみ」(09)

チャックまが起きてくると、コグマと一緒に目を黒く塗りました。チャックまのお腹から出てきた、のっぺらぼうのてるてる坊主たちにもお礼のつもりでそれぞれに顔を書いてあげました。

「それ、ファスニャンに似てるね!」「こっちはボクそっくり!」
そんな風に話しながら二人は楽しく作業をしました。それが終わると、チャックまが家の前の川原に薪を何本か持ちだしました。
「しばらく放っておいたから、しけってなきゃいい

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「くまのぬいぐるみ」(10)

「くまのぬいぐるみ」(10)

手紙の表書きには『ぬいぐるみを拾ってくれた方へ』と書かれています。チャックまとコグマは、おそるおそる手紙を開きました。

「クマを拾ってくれたやさしい方へ
クマ(ぬいぐるみの名前です)を拾って、こんなにきれいにしてくださってありがとうございます。クマは、今4歳の娘が小さい頃からの一番の友だちなんです。

先日、娘が熱を出してしまって病院に行った帰り道、娘を抱っこして家まで歩く途中で落としたようです

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「くまのぬいぐるみ」(11・完)

「くまのぬいぐるみ」(11・完)

落としもの箱と手書きのお手紙を大事にしまって、チャックまたちはお散歩を(今度は羽が生えたように軽やかな足取りで)続け、家に帰ってきました。

「お腹へったね!」もう12時を大きく回っていました。何しろお散歩に出るのも遅くなったし、お散歩の前半もノロノロと歩いていましたから、だいぶ時間がかかりました。
でも後半は打って変わって、嬉しい気持ちで走り回るように余分に体力を使ったお散歩でした。ですからお腹

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