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「くまのぬいぐるみ」(04)

お風呂に入ってすっかりキレイになったくまのぬいぐるみさん。それを見ていたらチャックまとコグマは羨ましくなってしまいました。
「ボクもお風呂したい!」コグマがそういい、湧泉から少し離れた小ぢんまりした清流の溜まり場に飛び込みました。
「朝から働いて汗かいちゃったからね」チャックまもそう言いながら、足の先からそうっと水の中に入りました。

湧泉からあまり距離もないので水は思う以上に冷たいのですが、梅雨の晴れ間の蒸し暑さに火照った身体にはとっても気持ちがいい。二人は身体が冷えすぎない程度に水に浸かると、上がってタオルで充分に水を拭き取りました。
「気持ちよかったね!これもくまさんのおかげだね」コグマはたらいの中で待っていたくまさんの頭をやさしくなでました。

たらいとその中のくまさんを抱えて帰途についた二人。朝ごはんも食べずに出かけたので、家につく頃にはすっかりお腹がペコペコになってしまいました。
「お腹がへったけど、もう一息!くまさんを干してしまおう」

ざっくりしたネットにくまさんを入れ、洗濯バサミで物干し竿に留めました。
山から吹いてくるそよ風に揺られて、まるでくまさんがハンモックに乗っているみたい。気持ちよさそうにしているくまさんを見て、安心して二人はお家に入って朝ごはんを食べることにしました。

さっき清流で捕まえた鮎を塩焼きにしたものと卵焼きを朝ごはんに食べながら、チャックまはくまさんのことを考えていました。

「ねぇコグマ。ボクは踏んづけちゃったっていうのと、雨の中から助けるつもりでくまさんを取りあえず連れて帰ってきたんだよね」
「うんうん」
「それでこうやってきれいにしてあげて…これからあの子をどうしたらいいのかしら」
「ボクたちでくまさんをどうしてあげられるかしら」コグマは言いました。
「一つは一緒に暮らすっていう方法があるよね」
「このおうちに置いておくってこと?」コグマは嬉しくなりました。チャックまが持ち帰ってきたときから、くまさんがかわいいなぁって思っていたんです。
「うん、コグマも気に入ってるみたいだし、ボクもくまさんと一緒にいると楽しいし」
チャックまは窓の向こうの、物干し竿に揺れているくまさんを見ました。

「もう一つはね」チャックまがくまさんを見ながら言いました。
コグマはちょっと聞きたくないような気持ちになりました。

「もう一つは、くまさんを元の持ち主に返してあげるっていうことがあるよね」チャックまは言いました。

予想通りの言葉を聞いて、コグマもくまさんを見ました。かわいいぬいぐるみのくまさん。これから一緒に毎日過ごしたら楽しいだろうなぁ、とコグマは思いました。この午前中だけだってこんなに楽しかったんだもの。これから毎日一緒に過ごせたら…

「ボクは元の持ち主さんに返してあげるべきだと思う」コグマはきっぱりと言いました。
「あんなにかわいいんだもの。きっと落とした人は悲しがってると思うの!それなのにボクたちのものにしちゃうのは、間違ってると思う」

チャックまはにっこりしました。
「そうだね、コグマの言うとおりだね」

05につづく


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