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「くまのぬいぐるみ」(05)

「そうと決まったら、今日のうちにいろいろと準備しておかなきゃ!」
チャックまはそう言いました。
「準備?」コグマは不思議そうです。
「そうだよ、準備!」そう言うチャックまの顔は今日のお空のように晴々としています。

チャックまが冬の間使っていた薪の残りの中から大きめのものを持ってきて、斧で薄めに割って板材を切り出しました。それをノコギリで幅を揃えたり直角を出したり。そして木材用の接着剤、そして金槌を用意してさぁ…
「あ、いいサイズの釘がない」チャックまの眉間にシワが寄りました…

するとお腹のチャックが開いて、中からやたらと釘がバラバラっと出てきました。
「わぁ!…イテテ、コグマは近づいちゃだめだよ」
相変わらずチャックまはお腹を自分でうまく管理できていないようです。必要とはいえ、急に出てきた釘を危うく踏んづけてしまうところでした。危ない、危ない。

気を取り直してチャックまはトンカントンカン、木材を使って何かを作り始めました。
「これが、くまさんを持ち主に返す準備なの?」コグマは不思議そうに訊きました。
「そうだよ」金槌を振っているチャックまは真剣な顔でそう言いました。釘を口に挟んでいるのもあって、ちょっと話辛そうです。コグマはちょっと待つことにしました。

「ふーぅ」一区切りつけてチャックまは大きく息をつきました。それを見て、我慢していたコグマがたまらず一言いいました。
「これで何が出来るの?」
チャックまはにっこり笑って答えました。
「落としもの箱をつくるんだ」

「落とし主さんに返す方法を考えたんだけど、特に名前も入ってないし、落ちていた場所に置いておくしか方法がないと思うんだよね」
コグマが持ってきてくれたお茶を飲みながら一休みしながらチャックまが話し始めました。
「でも梅雨の時期でいつ雨が降るかわからないじゃない?そのままくまさんを道端に置いておくと、せっかくきれいになったのにまた汚れちゃうし、もしかしたらもっと傷んじゃうかもしれない。だから雨除け用に屋根が必要だと思って」
「あぁ、だから箱型なんだね!」コグマが嬉しそうに言いました。
「囲んじゃうと見つけてもらい辛いんじゃないかと思ったけど、たしかに汚れちゃったらかわいそうだもんね」
「でしょう?」チャックまが言いました。
「さぁ、もうひと頑張りして、落としもの箱を完成させてしまおう!」

06に続く


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